ガイア(用語)
 地球という天体そのものの意思のこと。星の生命延長の祈りによる抑止力を持ち、それはガイアの怪物と呼ばれる。


ガイアの怪物(用語)
 ガイアから発生する抑止力。地球という天体に危害が及ぶことを阻止しようとする。死徒二十七祖の1位、プライミッツ・マーダーがコレにあたる。
 外的な要因での破滅を回避するために働く。


概念武装(用語)
 歴史を積み上げ、決められた事柄を実行する固定化された魔術品。物理的衝撃ではなく概念、つまり魂魄としての重みで相手を打倒する魂砕き。
 死徒に対しては人間であった頃の自然法則を叩き込んでもとの肉体に洗礼しなおして滅ぼすために、黒鍵程度の簡易的なもの以外あまり使われない。もとから吸血鬼であった真祖に対する切り札。


カクテル(用語)
 複数のドラッグを混合使用すること。単体で使用するよりも強烈な刺激を味わえるが、トリップしたまま戻れなくなったり、場合によっては死亡したりすることもある。アップ系とダウン系の組み合わせも危険。
 メタンフェタミンとヘロイン(作中ではコカインとヘロイン)でスピードボール、覚醒剤とLSDでブルーチア、コカインと幻覚剤でスノーボール、PCPとコカインでファイヤーボール、マリファナと他のドラッグでムードラ等。中でもスピードボールとブルーチアは死亡事故が多い。
 コーヒーと煙草の組み合わせもソフトではあるが立派なドラッグカクテルであり、身体に深刻なダメージを与えることがある。


学人(人名)
 がくと(姓不明)。
 黒桐幹也とは小学校時代からの友人。黒桐幹也と同じ高校に通っていた。肉体派で、高校では柔道部に在籍した。黒桐幹也と同じ大学に通っている。
 冷蔵庫にはビールしか入れていない。


影の魔物(使い魔)
 蒼崎橙子の使い魔。本体であるオレンジの鞄の幻灯機械によって大気に投影されるエーテル体。よって本体の鞄を潰されないかぎりいくらでも蘇る。


過去視(用語・能力)
 過去を視る能力。大体は他人の記憶を視る。個人差があるかは不明だが、幻視同盟の偽志貴は視るというよりも他人の過去を精神感応によって追体験していた。
 過去視にも未来視と同じく予測と測定の二種類が存在するが、未来視と違って過去視の場合は予測と測定の違いはあってないようなもので、ほとんどの場合は本人にも区別がつかない。測定の未来視は未来を固定するものであるが、既に過ぎ去った過去を固定しても意味はない。結果を予測するにしても自分を起点に測定するとしても過去である以上過程は大して変わらず、測定の方が幾分狭く、精度が上がるくらいの違いでしかない。カラボー・フランプトンの過去視は測定、あるいは測定寄りのものである。ただし実際にはカラボーの過去視はレアンドラによって『泡影の魔眼』と名付けられる宝石の位階の魔眼であり、過去の影を現在に浮かび上がらせる特殊な魔眼であった。
 瀬尾晶の未来視は過去視の発展型で、過去の情報から未来を予測するもの。


葛西善蔵(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号7。
 電話番号00-406-0350。
 住所は西音和谷2-6-9。


風間直美(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号9。
 電話番号00-138-5606。
 住所は西観布子9-5-6。


笠森仙(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号8。
 電話番号00-401-0066。
 住所は南観布子4-5-2。


風巻景清(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号10。
 電話番号00-799-2276。
 住所は北七郷3-3-41。


梶川頼照(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号9。
 電話番号00-075-2674。
 住所は新観布子4-13-2。


嘉島(人名)
 1998年度に礼園女学院1年D組に在籍した生徒。瑠璃堂と口論になり、互いにカッターナイフで切りつけあった。


勝川春章(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号11。
 電話番号00-075-0960。
 住所は新観布子5-6-21。


兼定(用語/武装)
 刀工の名。初代兼定(親兼定)、親兼定の子の二代目である和泉守兼定(之定)、之定の子の三代目である兼定(疋定)の三人が特に有名。二代目が之定、三代目が疋定と呼ばれるのはそれぞれ兼定の『定』の字を『之』『疋』と見えるように銘を切ったからである。
 親兼定は主に文明年間(1469〜1487)に活躍し、末古刀上作、大業物。志津一派の流れを汲み、刀と短刀を鍛えた。
 之定は主に永正年間(1504〜1521)に活躍し、末古刀最上作、最上大業物。刀、短刀、菖蒲造の脇差、直造の薙刀を鍛え、名槍『人間無骨』の作者としても有名。
 疋定は主に天文年間(1532〜1555)に活躍し、末古刀中上作。
 両儀式が与えられた九字兼定は二代目の之定の作で、その名の通り九字(蒼崎橙子の台詞では臨兵闘者皆陣“列”在前だが、これは真言宗の『臨兵闘者皆陣烈在前(臨める兵、闘う者、皆陣烈れて前に在り)』と天台宗の『臨兵闘者皆陣列前行(臨める兵、闘う者、皆陣列ねて前を行く)』が混交されたものと思われる)が切ってある。これは蒼崎橙子の結界を切り裂くほどの概念武装となっていたが、小川マンションにおける荒耶宗蓮との戦闘で折れてしまった。折れた兼定は打ち直しができたとしても、培った年月は失われてしまった。
 司馬遼太郎著『燃えよ剣』にて土方歳三の愛刀が之定とされているが、実際に使用したのは十一代目兼定の作刀であった。実際に之定を使用した武将は細川幽斎、細川忠興、森長可が知られている。


上恩町(地名)
 八王子市の地名。


上山(人名)
 小川マンションの四階、409号室に住んでいた。


瓶倉光溜(人名)
 かめくら みつる。
 1998年8月3日の時点で14歳の少年。右目で未来を、左目でその未来に至る手順を視ることができる未来視。倉密メルカの偽名を使う職業的爆弾魔。『倉密メルカ』の由来はあるコミックに登場する悪役の名前。
 彼の未来視は右目のみ。それも五分後や一日後、一月後など視られる未来は一定しない。そしてこれは未来予測ではなく未来を自らの意思で決定させる未来測定である。数値を埋めて未来を視るものであるため、未来を見たい対象物を視認していなければ未来を視ることができない。つまりその現場に居合わせることがこの未来視の条件。
 確定される未来を視る未来視のために未来に対する夢や希望を失い、この能力を最大限に生かす道具として爆薬を用いるようになった。彼は爆弾魔であったが、テロや快楽的な目的ではなく、完全外注の解体屋だった。殺人に見合う高い報酬が無かったということもあるが彼の爆弾は殺人ではなく器物や建物の破壊を目的としている。たとえばテルミット、化学肥料やエンジンオイルを用いた化学爆弾などの派手だが威力がさほど強くないものばかりであった。
 最初は小金欲しさから始まり、1998年には年に三件の割合で爆弾事件を起こしていた。なお金さえ用意すれば爆破予告から実行まで全てを受け持っていた。携帯電話一本で仕事を請け負い、根城も背後組織も持たず、依頼主の素性を知ろうともせず、ただ金だけを目的にしていたために爆弾の仕事だけで食べていける職業的爆弾魔となっていた。爆弾魔としての活動期間は5年ほど。
 そんな彼が唯一仕事抜きで、しかも人間を狙ったのは両儀式のみ。工房・伽藍の堂が設計に関わったホテルの落成記念式典をホテルのワンフロアを倒壊させ、なおかつ死傷者は出さずに台無しにしてほしいという依頼を実行する直前に『そのホテルは危ないぞ』と声をかけられたことが発端。後に落成式の参加者を調べ、右目が視た結果にいなかったことに興味を持ち、正体を知られた可能性や顔を見られたことへの危機回避のためも含め、式を殺せるかどうか確かめるために付け狙う。
 式を狙う方法はむろん爆弾だが、三度目まで(一度目は工事現場での閃光弾じみたもの、二度目はアーネンエルベ前の路上に仕掛けた地雷のような焼夷爆弾、三度目は廃ビルに仕掛けた倒壊を目的にした時限爆弾。いずれも目撃者、死傷者はない)は『確実に死亡するであろう状況』に式を追い込むだけで殺す結果を視なかったために式は無傷で生還し、8月3日の橋の上の爆弾トラックを用いた四度目でようやく最後まで見届けようとした(つまり殺そうとした)。しかしそれでも式が死ぬ未来は視えず、式は橋から飛び降りることで難なく生還した。
 同日、観布子市郊外のデパートの立体駐車場3階で式と戦い敗北するが、倉密メルカが子供であることを見て取った式は彼を殺さず、未来視の右目を殺すにとどめた。以後、爆弾魔倉密メルカが現れることはなかった。
 2010年には興信所兼絵本作家としてもと工房・伽藍の堂だった建物を事務所兼住居としており、蒼崎橙子のコネクションも受け継いでいる。そのため出版社の覚えがよく、25歳の新人ながら何冊か作品が出版されている。漠然と町の営みを眺めるのが唯一の趣味。女性に弱く、両儀未那に振り回されている。
 絵本作家になっているが、子供向けの物語のくせに半分子供を置き去りにした作品を書く。著書は『吸血鬼の涙』『残光ケージ』など。
 2008年にもと工房・伽藍の堂だった貸事務所の家賃や生活費などで借金を重ね、債権者に問い詰められる破目になった。その債権者の元締めというのが暴力団関係の名代で、漁船だろうが海洋油田だろうがとにかく観布子市を離れたくて仕方がなかったところで、光溜の絵本の読者である両儀未那が割って入って仲裁。その後にボス(両儀式か?)が現れ、あれよあれよと彼等の一員となることで一命を取り留めた。
 その際に専属の興信所とされたが、もともとの絵本作家も副業として許可されている。
 荒事、というか極めて厄介な問題を解決する際には眼鏡をかける。眼鏡をかけた瓶倉のことを、未那は『クラミツ』と称する。


茅見浜(地名)
 埋め立て区にできたマンション地帯。小川マンションの所在地。都心では考えられないくらい贅沢に土地を使っている。工房・伽藍の堂から車でも電車でも30分ほどの場所。


「 」(概念)
 仮に読みをつけるとしたら、から。
 受け取り方は人それぞれ。端的に分かりやすく言うなら根源の渦。だが根源の渦には根源の渦という名があるためにやはり「 」とは別物である。


カラオケV(地名:劇場版)
 康平が働いていたカラオケルーム。一つの大きなビルを丸ごとカラオケルームにしている。


伽藍の堂(地名)
 →工房・伽藍の堂。


管理者(用語)
 セカンドオーナー。
 魔術協会から霊地を任された名門魔術師。同じ土地に根を張る魔術師はまず彼らに挨拶に行き、工房建設の許可を得なければならない。


軽井沢ドライビングスクール(組織)
 長野県の田舎にある自動車免許の教習所。黒桐幹也の親戚が経営している。寮制で、生徒を三週間合宿させて課程を手早く済ませるという教習スタイルをとっている。
 親戚の勧めと蒼崎橙子の賛同により、黒桐幹也が1998年10月の終わりからここで教習を受けた。



  


記憶(用語)
 物事を覚えておく、また覚えること。
 銘記、保存、再生、再認の四つのプロセスで構成され、そのうちの一つでも出来なければ記憶障害となる。


菊地にゃにゃにゃ(人名)
 おそらく作家の菊地秀行のこと。AATMで両儀式が月姫を語った際に引き合いに出した。


起源(用語)
 始まりの因で発生した物事の方向性。aという存在をaたらしめる核となる絶対命令のこと。根源衝動。例えば“禁忌”という起源を持つモノは人に生まれようと獣に生まれようと植物になり代わろうと、群における道徳から外れた存在になる。輪廻転生があろうがなかろうが、人間は発生した時の方向性に従って肉をつけ知恵をつけ、以前とは少しだけ違った人格になるという考え。
 起源を覚醒したモノは起源に飲み込まれる。たかだか百年程度の“人格”など、原初の始まりより生じた方向性に塗りつぶされるだけだからだ。反面、起源に塗りつぶされた人間(肉体)は強大な力を手に入れることになる。
 人間のルーツを探る荒耶宗蓮は、その過程で起源を覚醒させる術を学んだ。起源の覚醒は互いの同意なしには成り立たない。
 魔術においては属性の意もあるようだ。


偽神の書(用語/俗称)
 ゴドーワード。
 →玄霧皐月。


北七郷(地名:劇場版)
 観布子市の地名。


北畠八穂(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号12。
 電話番号00-950-2685。
 住所は観布子坂下2-7-9。


北林透馬(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号13。
 電話番号00-216-5334。
 住所は観布子7-8-11。


北原鉄雄(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号10。
 電話番号00-542-3394。
 住所は観布子本町8-8-6。


機動隊(組織)
 警察において警備実施の中核部隊として治安警備や災害警備に当たる組織。任務は治安警備、災害警備、雑踏警備、警衛警護、集団警ら及び各種一斉取締りである。
 機動隊の種類には機動隊、第二機動隊(方面機動隊・特別機動隊)、管区機動隊(北海道警の場合は北海道警察警備隊)がある。
 機動隊は有事即応体制を保持する常設の基幹部隊で専任の隊員で構成され、各都道府県警察に置かれている。警視庁警備部では第一機動隊から第九機動隊および特科車両隊の合計10隊が置かれている。また、大阪府警と千葉県警に各3隊、神奈川県警と福岡県警に各2隊、その他の道府県警には各1隊が編制されている。
 基本訓練を終えた隊員は各専門部隊の指定隊員として訓練を受けて部隊を編成しており、これら専門部隊は機能別部隊と呼ばれている。爆発物処理班や化学防護隊なども機能別部隊として機動隊に属している。
 第二機動隊は常設の第二機動隊を保有する都府県警を除く各道府県警察に置かれる予備的部隊。隊員は警察署員と兼任で、平時は通常の警察署員と同様の勤務を行っており、非常時のみ招集される。
 管区機動隊は府県警察本部長が当該府県警察に所属する警察官をもって編成し、各府県警察に置かれる。隊員は地域警察の警ら隊等と兼務。
 北海道には管区機動隊がなく、一個大隊編成の北海道警察警備隊が置かれている。
 編成は連隊、大隊、中隊、小隊、分隊、伝令。
 連隊は概ね警視正の連隊長が率い、三個大隊から成る。大隊は概ね軽視の大隊長が率い、三個中隊から成る。中隊は警部の中隊長が率い、三個小隊から成る。小隊は警部補の小隊長が率い、三個分隊から成る。分隊は巡査部長の分隊長が率い、巡査・巡査長4名の合計五名から成る。伝令は警部補の伝令長以下伝令から成り、小隊までの各隊長に随従する。
 なお編成は各都道府県警により異なることがある。
 作中において『機動隊』に『SAT』とルビが振られていたが、SAT(特殊急襲部隊)は警視庁、大阪府警、北海道警、千葉県警、神奈川県警、愛知県警、福岡県警、沖縄県警の機動隊の機能別部隊として編成されているものである。ただし警視庁と大阪府警のSATは編成上機動隊から独立した組織となっている。


吸血鬼の涙(用語)
 短編絵本。瓶倉光溜のデビュー作。
 空想的な江戸で蘭学博士オリガの手から逃れたロボットが人々に混じって生活する話。主人公のロボットはお祭りのときに人ごみに押され、唯一の弱点である水に落ちてしまう。それによって人間の偽装がはがれ、機能停止に陥るが、その直前にどうしても手に入らなかった涙を流す、というのが結末。
 特に評価はされなかったが、両儀未那は名作と評している。


教授(人名)
 詳細不明。
 蒼崎橙子の師。白衣の似合う初老の人物で、笑顔が爬虫類じみている。超能力に詳しく、蒼崎橙子の紹介で黒桐幹也に超能力についての簡単な講義をした。


桐生由江(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号11。
 電話番号00-542-3172。
 住所は観布子本町9-5-7。



  


空間遮断(魔術)
 魔法の域に達した結界。荒耶宗蓮は閉じられた輪(メビウス・リング)に両儀式を閉じこめたが、その『無限』を無限たらしめている『有限』を見つけ出されて脱出された。


空間転移(魔術)
 高次元を経由して一瞬のうちに移動する魔術。アーチャー曰く魔法の真似事らしい。
 荒耶宗蓮は自らの体内と等しい小川マンションの中でのみ可能となる。
 純粋な空間転移は魔法とされる。


久遠寺(家名:魔法使いの夜)
 もともと魔術師の家系ではない。魔術師の血を持っていたのは久遠寺有珠の母である。
 資産家である久遠寺の長男は留学先で一人の魔女と出会い、彼女を愛した。彼女もその求愛を戸惑いながらも受け入れていたが、同時に恐れもあった。どんなに祝福されようとも生まれてくる娘は魔女であるからである。彼女がそうであったように、魔女の子供は例外なく一族の血と歴史を受け継ぐ宿命を持っている。
 魔女にとって父となる男性は情を移してはならないものであり、互いを愛すれば愛するほど結末は不幸になる。それを承知の上で久遠寺の長男は彼女を娶り、日本に戻って幸せな家系を築いた。だが有珠の出産後に母は役目を終えたように死去。父は周囲の反対に耐えながら娘を深く愛し、数年後に他界。一人になった有珠は両親と暮らした洋館だけを相続し、母と同じように魔女として生きる道を選んだ。
 蒼崎とは母親が日本に帰化する際に関係を持った。有珠と蒼崎橙子は十年以上の付き合いだが、青子とはまだ一年だけの共同生活に過ぎない。


久遠寺有珠(人名/魔術師:魔法使いの夜)
 現代に隠れ住む魔術師。魔女。永遠の令嬢。孤独で束縛され、頑なに誇りを守る、時代に取り残された少女。歳を取ることができない。割と病んデレで自傷系。
 生まれる前から魔女であることを義務付けられていたため、十六歳にして魔術師として完成している。童話をモチーフにした呪術、薬学を得意とするワンダーランド系の魔女。蒼崎青子と同じ現代の魔術師に見えるが、実際は真逆の位置付けの存在。
 人間的な感情が乏しく、魔術師としての生き方を絶対としている。日常生活はあくまで『正体を隠して魔術を行う』のが魔女としてのあり方だから続けているに過ぎない。古より伝わりし魔女としての教えと誇りが彼女にとっての絶対不可侵のルールであるため人間らしさを臭わせる道徳や感情は不要としている。しかしその時代の社会にそれなりに適応するのが魔女のスタンスと教えられているので、魔法使いの夜の時代(1980年代後半)では歳相応に学校に通っていた。人間的にも性能的にも達観者なので一番強いが、在り方としては一番弱い。
 蒼崎青子の友人にして共犯者、魔術における先生にして相棒。この関係は有珠の側からも同じようなもの。基本的に人間嫌いで、青子とは立場上仕方なく関わりを持ったに過ぎないが、いつの間にか青子の唯一の友人になっていた。
 街に棲む魔術師として青子とともに外敵を撃退するが、極力父の形見である久遠寺の別荘に執着して閉じこもり、あまり外に出たがらない。
 平均的な高校に通っていた青子とは違い、お嬢様学校に通っている。なお三人目の同居人は青子と同じ学校に通っており、それについては本人もよくわからない感情があるらしい。なおその三人目は徹底的に無視し、一日でも早く出て行ってもらおうとしていた。
 蒼崎橙子とは十年以上の付き合いだが、青子とはまだ一年だけの共同生活に過ぎない。有珠にとって橙子はよき理解者、青子は友人といったところ。どちらとも仲がよいが、蒼崎姉妹の殺し合いのような姉妹喧嘩を止める気はないようだ。


楠木正儀(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号12。
 電話番号00-401-1688。
 住所は南観布子6-4-12。


楠山正雄(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号14。
 電話番号00-075-7792。
 住所は新観布子3-22-10。


倉密メルカ(人名)
 →瓶倉光溜


グレートキャッツビレッジ(地名)
 通称GCV。ネコたちの仮初めの楽園。不思議な不気味な猫の王国。この世のどこにでもあり、どこにもない地底王国。この世は偉大なネコが見ている夢であるという教えのもと、人間社会と寄り添って存在している。名所に地獄が腹がある。
 ネコアルクたちは悪の都パンゲアのモデルなのでは、と噂している。ある偉大な猫が見た夢なのでは、ともいわれる。
 メルティブラッドでは登場するたびにランクが下がっていくが、正式にはビレッジである。(キングダム→ビレッジ→コテージ→カンパニー)
 路地裏に入り口があり、メルヘンハートを持つダメ人間のみがその入り口を開くという。
 AATMでアルクェイド・ブリュンスタッド、セイバー、両儀式、遠野秋葉らにより掃討された。


玄霧皐月(人名/魔術師)
 くろぎり さつき。統一言語師(マスターオブバベル)・偽神の書(ゴドーワード)メイデイと呼ばれる、最も魔法使いに近い魔術師。起源は『望郷』。礼園女学園の英語教師をしている。二十代半ばの男性。憶えやすいのに憶えにくい印象。
 イギリスのウェールズ出身。語学の天才でドイツ語とフランス語の教員資格を持っており、中国語もいくつかマスター、南米の一部族の言語も知っているという。外見は幹也に似ているが、自分がないため極端に受動的。玄霧皐月という名前は養子に出された先で新たに付けられたもの。皐月とはメイデイにちなんだものである。
 魔術の才能がまったくない変異的な遺伝体質者で、言語を操ることに特化している。アトラス学院に所属していたが錬金術師でも魔術師でもない(形式的に魔術師と呼ばれている)。15歳でマスタークラスになった。黄路美沙夜ほどの分割思考はできない(あるいは分割思考そのものができないのか)。封印指定を受けて魔術協会から失踪した。蒼崎橙子が到達することは不可能と言い、荒耶宗蓮も到達し得なかった根源の渦にあっさりと到達した。
 幼い頃には神童といわれていたが10歳のときの5月1日(メイデイ)に妖精に攫われ、3日間行方不明になった。彼は無意識のうちにその妖精たちを皆殺しにしてしまい、それを気味悪がった両親に養子に出された。それ以来記憶の『再認』ができなくなった。統一言語は妖精に拐かされていた時に修得した。
 つまり、10歳のときから彼の世界が映像ではなく言葉にすげ替えられた情報になってしまった。それは人間の場合は身長・体重・骨格・肌の色・髪型・言動・年齢で、それらのうち一つでも変われば相手を見間違える。また、人物Aの条件により適合する第三者Bが新たに現れれば、その人物Aは彼にとって新たに現れた第三者Bになり、人物Aは記憶にない他人として認識される。
 記憶を取り戻すために魔術を習い、根源にあっさりと辿り着いた。だが観測者である自分自身を観測するのは不可能なので、他人の中の自分をアカシック・レコードを通して採り出そうとして忘却の採集を始めた。しかしいつしか根源に沈殿した忘却を掃除するためにそれを形にして本人に返し始めた。
 自分の記憶が盗まれたのではなく破損したものだと気付いてからはもとの神童に戻り、14歳で大学に入学。言語学の博士号を取得した。
 荒耶宗蓮に呼ばれ、葉山英雄が学院から消えてから1年D組の担任になった。
 橘佳織を追い詰め、葉山英雄を行方不明にし、黄路美沙夜に魔術を与えた。これらは玄霧の意思ではなく、彼女らから相談を受けた玄霧が本人にしか考え付かない方法を提示したまでのことであり、つまり彼女ら自身の意思である。
 1999年1月6日に両儀式と戦った際に左腕を殺されながらも両儀式の失われた記憶を呼び起こした。その後1月11日に黄路美沙夜に刺され、出血多量により死亡。黄路美沙夜が本当に彼の妹であるかは不明。
 劇場版では両儀式との戦闘で右腕を殺されるが、その後黄路美沙夜に刺殺されるかは不明。
 劇場版での彼の能力は原作と同じ統一言語ではないらしく、聴覚をイヤフォンで封鎖するだけで無効化できる。



  


結界(魔術)
 内と外を分けるもの。魔術的には内と外を区切った上でその内側及び境界線上に作用する効果を意味する。結界の定義とは『一つの閉じられた世界』。方法はどうあれ、閉じたい場所を外界から遮断した状況を結界と呼ぶ。いわば地形魔術であって、基本的に設置するものなので動かすことは不可能だが、荒耶宗蓮は七つもの静止の結界を『連れて』いた。
 本来は聖域を守る境界線だが、効果があるのが境界線のものと結界内のものがある。結界内での効果は千差万別だが、ここ数百年は主に術者や財貨を守るモノとして定着している。もっとも攻撃的な効果は結界内における生命活動の圧迫。結界内の人間を攻撃するものであっても個人に対する魔力干渉は間接的なものになるため、魔力で自身を守っている魔術師には効きにくい。
 結界の手法には土地、建物などのもとからある内外の境界に手を加えるものと、魔術師自身が魔力で編んだ網を土地に張って後から空間を区切り、その内部に手を加えるものの二種類がある。前者には防犯や他の魔術師に対する防衛策として魔術師の屋敷や土地を使って張るものを含む。後者には魔力を溶かした髪を編みこんだ縄で土地を囲む、魔法陣を描くなどの手法がある。
 結界の種類は様々で、その区間を物理的に壁で囲むものから、区間内の様子を霧や鏡、森などで視覚的に隠すものまで多岐にわたる。しかしこれらの結界は結界内の様子を外部から知られることはないが、そこに異常(=結界)があることは隠しようがない。典型的な結界は茨の壁。これは予め生やしておいた茨を魔力で急速に成長・強化して作る。
 真に優れた(人避けの)結界とは、そこに異常があることを感知されず、同時に外部から干渉されないことを両立する必要がある。つまり、隠したい領域の周囲に意識を改竄する結界を張り、例えその領域内に用があるとしても『今は用がない』と思い込ませるものである。これは久遠寺有珠が三咲中央公園に張ったものや、蒼崎橙子が観布子市の工房・伽藍の堂に張ったものが該当する。
 それ自体で完結した結界を作るにはまず自身を完成させなくてはならない。


幻想種(用語)
 神話・伝承などに見られる特異な生物。幻想の中にのみ生存するモノ。在り方そのものが神秘であるモノ。
 外的要因により生態系が変化したモノ、人の想念より誕生したモノ、長寿により上の段階に上がったモノとがいる。
 種類としては妖精や巨人といわれる亜人、鬼や竜といわれる魔獣などがあり、中でも竜種は幻想種の最高位にある。竜を模したモノは分類に関係なく最優種とされる。竜種は三類の属性を備えているため、人と交わることも多かったようである。天馬はそう強力ではなく、成長しても魔獣クラス。
 野獣→魔獣→幻獣→聖獣の順に高位になり、使い魔として使役できるのは魔獣までとされている。
 長く生きた幻想種ほどこの世界から遠ざかるものなので、現在世界に留まっている幻想種は百年単位のモノ。千年クラスの幻獣・聖獣の類には魔術程度の神秘では太刀打ちできず、その神秘性から存在そのものが魔法と同格とされている。



  


高級ホテル(地名)
 詳細不明。
 東京都から二県ほど離れた都市にあるホテルで、蒼崎橙子が観布子市に落ち着く前に片手間に設計の仕事を受けていた。蒼崎橙子には珍しく成功報酬で仕事を請けており、1998年7月末に入金があった。この入金により、工房・伽藍の堂の給与不払いという大問題は早々に撤回された。
 同年8月初頭に落成記念式典が行われたが、その際に倉密メルカによって(おそらく屋上付近のワンフロアが)爆破された。


高校(地名)
 両儀式、黒桐幹也らが通っていた学校。有名な私立進学校で、私服校。登校時には校章の着用が義務付けられている。
 進学校でありながら就職率はいい。


康平(人名)
 湊啓太の友人。カラオケVで働いていた。1998年7月22日に浅上藤乃に殺された、6人目の犠牲者。


工房(用語)
 
魔術師の研究室。魔力を隠す機能は初歩の初歩。建物自体からも魔力がもれるらしい。魔力の遮断は当然で、周囲に異常を悟らせないことが基本。防御のためではなく攻撃のため、つまりやってくる外敵を確実に処刑するためのもの。
 これを建設するにはその地を管理している管理者に許可をもらわねばならない。


工房・伽藍の堂(地名)
 蒼崎橙子がオーナーを務めるアトリエにしてよろず請け負い制作会社。正式な社名はない。勿論、魔術師の工房である。一応は人形作りがメインだが、橙子にとって面白ければなんでも安請け合いする。アニメや建築デザインも手がける。
 ビルの敷地は高いコンクリートの壁で囲われているが、侵入するのは容易。ここに用がない人間は無意識に避けて通るという人除けの結界が張られているため、滅多に人はやってこない。ただし会社としてきちんと存在している以上郵便や水道・電気のメーター確認などは出来る。隣は製鉄工場。
 建物は1992年に着工されたが、建築主の資金繰りが悪化したために翌1993年に未完成のまま放棄された。住宅地とも工場地帯とも取れる場所に建っている。六階建てになる予定だったが四階までしかできておらず、五階床スラブが屋根代わりになっている。内装は窓とドアのほかは皆無。水道には3つの蛇口があるが、うち2つは針金で縛られている。
 一階はただの廃墟、二階と三階は橙子の仕事場、四階がオフィスと橙子の自室になっている。よって黒桐幹也と両儀式が出入りしているのは四階だけ。
 待遇は基本給18万円。交通費支給。福利厚生なにそれ。他に技術手当、今月がんばったわね手当、面白いコト言ったわね手当で給与額がランダムに変動。アベレージなどという心温まるものはない。
 建物自体は蒼崎橙子が姿を消した後、貸事務所として運用されており、遅くとも2008年には瓶倉光溜が事務所兼住居として使用していた。


抗魔術(用語)
 物体に付与する付加効果。魔術回路の働きを乱して魔力を生成できなくし、魔術を使えなくするもの。


抗魔力(用語)
 魔術師に備わる催眠、呪縛、強制などという術者の行動を抑制する魔術を弾き返す力。これは魔術回路の外部からの魔力を弾く特性からなるもので、魔術の式が完成する前に乱されてしまうため数ランク下の魔術師ですら操るのは難しい。
 魔術師でなくとも魔術回路がある者ならば無意識に弾かれてしまうこともある。だが無効化できるのは魔力であり、完成した魔術はキャスター並みの膨大な魔力を持っていないと無効化できない。


黒桐鮮花(人名/魔術使い)
 こくとう あざか。
 黒桐幹也の妹。蒼崎橙子に弟子入り中の魔術使いのたまごだが、霊体を視るなどの魔眼はない。礼園女学園高等部1年A組。7歳当時の身長は121cm。起源は『禁忌』。
 実の兄である幹也に恋愛感情を抱いているため、身体が弱いと偽って幹也から離れて成長してから礼園女学園に入学し、幹也に異性として見てもらおうとする。幹也はずっと一人なのだろうからと油断していたら両儀式に幹也を持っていかれた。そのため式に敵対心を持つ。もともと正月という行事は好きだったが、1996年1月1日から嫌いになった。というのも、その日に黒桐幹也が家に両儀式を連れてきたからである。
 完璧な優等生で、幹也に対する感情を隠して『よくできた妹』を演じているが、式や橙子には筒抜け。
 狙った獲物は逃がさない、羊の皮を被った狼を地で行く少女。彼女の一途で可憐で少しばかり歪んだ愛情はちょっとやそっとでは消え去らないだろう。
 遺伝的突然変異のため魔術回路はなく、先天属性として発火しかできないが、それについては素晴らしい才能を持つ。いまだ魔術の組み立てが未熟なため、発火能力を強化・制御するために橙子から譲り受けた火蜥蜴の革手袋を着用する。彼女が詠唱する呪文は極限まで短縮されていて、『AzoLto』『FoLLte』『MezoFoLLte』などがある。詠唱が単一かつ音楽記号なのは彼女が魔術と戦闘を楽曲と捉えている為。
 爆弾の知識は一通り橙子から教わっている。
 10歳のときに実家から田舎の叔父の家に預けられ、その後叔父の養女となる。もとはN県にいたが、1998年の6月末に礼園女学院に編入。以後は夏休みまで寮長の部屋に住んでいたが、夏休み明けから瀬尾静音と同室となる。また早くとも夏休みまでは別のクラスにいたようだが、その後1年A組に編入。学院内では常に首席で、全国模試でも十位以内に入る。いずれ礼園女学院の頂点に立つ。
 蒼崎橙子との出会いは1997年で、橙子が旅先(鮮花の叔父の家)でおかしな猟奇事件に巻き込まれた際に正体を知り、橙子が事件を解決するのに巻き込まれつつも協力した。もっともその時点では橙子に弟子入りするとは思っていなかった。
 橙子に弟子入りしたのは1998年の6月から7月頃。熱の探知と加速ならば1999年の時点ですでに一人前になっている。そのため両儀式が適当に教えた『周囲よりも温度の高いところ』を探せという妖精の探知法でも、離れた場所にいる妖精の数まで探知できた。
 蒼崎橙子が姿を消した後も、橙子からペーパーの課題が出されたりその気があるならと兄弟子が派遣されたりする。ただし、幹也が式と完全にくっついたため魔術を習う動機はなくなっている。
 両儀式が大嫌いだが、幹也のことを抜きにすれば鮮花も式のことが好き。浅上藤乃とはともに高校から礼園女学院に編入したということがきっかけで仲良くなった。
 TYPE-MOON Fes.には本来参加しないはずであったが、橙子の指示により両儀式の代理という形で調査のため参加する。会場内で出番が終わって手伝いをしていた衛宮士郎に協力を依頼した。楽屋のモニタで吊るされている士郎を発見して駆け付け、ロスト・ロビン・ロンドによって爆弾を仕掛けられていることを知り解決に奔走する。事件解決後は幹也が運転する車で帰っていった。


黒桐幹也(人名)
 こくとう みきや。
 黒桐鮮花の兄。劇場版の免許証に記載されている生年月日は昭和54年4月19日だが、DVDのブックレットに記載されている誕生日は12月20日。
 高校時代は式の同級生。高校一年の時は1年C組に在籍した。高校一年生の頃の出席番号は13。実家の電話番号は00-075-5554。実家の住所は新観布子5-9-10。10歳当時の身長は138cm。本籍は東京都観布子市観布子北 6-8。住所は東京都観布子市観布子南 12-7-202。
 運転免許は平成10年11月6日に交付を受ける。免許の条件等は眼鏡等。免許証番号は309800213210号。使用する自動車のナンバーは観布55 わ 82-39。
 顔立ちはわりと整っており、少し着飾ればかなり目立つだろうが身繕いは地味に黒一色でまとめている。我慢強さと自制心が半端ではない。女殺しになるのは20歳から。
 学生時代の成績はいたって平均的だった。1998年に大学に入学するが、展覧会で見た橙子の活人形にほれ込み、その5月に退学し蒼崎橙子の工房・伽藍の堂に就職した。出社してまずやることがコーヒーを淹れること。式と一緒に大学に行く約束をしていたために、そこを式に指摘されると弱い。
 温和で面倒見がよく、大抵の人に好かれる好青年。だがまるで逆の両儀式と出会い、以後は式と末永くやっていく。1995年9月の式(人格は織)とのデートの前日は緊張のあまりおそらく寝ていない。
 1998年の夏に巫条霧絵により三週間昏睡状態となる。普通ならば三日程度で死亡していただろうが、蒼崎橙子が肉体の管理をしていたために何の問題もなく、本人にとっては普通の眠りと同じ感覚で目覚めた。
 式の部屋には好き勝手上がりこむが、式には電話番号しか教えていない。だが1998年11月に合鍵を渡した。式の部屋に泊まるときには主に文庫本を読んだりしてくつろいでいるが、式が構って欲しいときは空気を読んで雑談したり外に連れ出したりする。美人に囲まれた生活をしているが聖人君子もかくやという自制心と我慢強さによって手を出すことはない。だが両儀式とベタベタするときはもう甘々なくらいベタベタする。
 1998年8月3日、アーネンエルベの前で瀬尾静音と男性の口論を仲裁。その後、勘といって誤魔化した根拠ではなく瀬尾の必死さを信じて男を追い、すんでのところで男を事故から救った。
 コルネリウス・アルバにつけられた脚の傷は歩くことも走ることもできるくらいに回復しているが、完治後もできるだけ走ることは避けるよう医者に言われていた。そのうえ1999年2月11日に両膝の裏を切られたが、歩くことはできる。
 連続殺人の犯人を白純里緒だと推理し、1999年2月10日に白純と接触。翌11日に白純に拘束され、縛り上げる代わりに左腕を折られ、両膝の裏を切られる。その後大量に投薬された上でブラッドチップを服用することを強要されたが拒否。逆上した白純に左目を潰された。白純里緒に致死量の麻薬を投与され、そのリハビリには三ヶ月以上を要した。
 一方的に常軌を逸した親愛の情を寄せてくる白純里緒だが、実際には彼と幹也は先輩後輩の仲でしかない。
 肉体的には相当なダメージを負っているが、橙子による処置は一切施されていない。戦闘力としてはおそらく一番弱いが、心は一番強い。顔が広く、探し物と調べ物に類まれな才能がある。ただしAMURAD工法についての知識には誤解が含まれていた。
 ネコアルクとは知り合いで、池袋のワンニャンランドでお茶をするほどの仲。
 劇場版で明らかになった蜜柑を剥いては皮を並べていく癖は秋巳大輔と同じで、祖父もよくやっていた。
 TYPE-MOON Fes.には登場しないが、橙子の車を借りてロスト・ロビン・ロンドによる爆弾騒ぎを解決した鮮花の迎えに行った。


黒桐幹也の叔父(人名)
 詳細不明。名の通った画家。黒桐鮮花を養女にした。


黒桐幹也の自動車(用語:劇場版)
 ナンバーは観布55 わ 82-39。


コクトー(俗称)
 フランスの詩人、ジャン・コクトーのこと、ではない。
 黒桐幹也の呼び方の一つであるが、両儀織がこう呼んでいたためか昏睡から目覚めたあとの式はこの呼び方が好きではない。


後藤芽生(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号15。
 電話番号00-799-5013。
 住所は北七郷6-20-8。


ゴドーワード(用語/俗称)
 偽神の書。
 →玄霧皐月


駒野宮交番前(地名:劇場版)
 観布子市あるいはその近くにある地名。


固有結界(用語/魔術・能力)
 リアリティ・マーブル。空想具現化の亜種。魔術理論・世界卵による心象世界の具現、魂に刻まれた『世界図』をめくり返すもの。自己の心象世界を現実に侵食させ、現実を現実ならざるものに変化させる能力。
 元は悪魔が持つ能力だったが、長い年月を経て多くのモノが実現可能になった。最も魔法に近い魔術。禁忌の中の禁忌、奥義の中の奥義。魔術師にとっての到達点の一つ。
 術者の心象世界を投影してもとの世界を侵食するのでカタチは一定であるが、自然から独立したものも変化させられる。だが、自然(世界)以外のものが異界を発生させるために世界からの修正を受けるために固有結界維持のためのエネルギーは莫大となり、継続時間は一個人の固有結界は数分程度、死徒二十七祖でも数時間から一晩が限度。ネロ・カオスは自分の体内に発生させていたので修正を受けなかった。
 一部の上級魔術師は個人の心象世界を形作る魔術でこれを展開するが、死徒二十七祖クラスの死徒は能力として展開する。(ただしグランスルグ・ブラックモアの固有結界ネバーモアは魔術でもある)


コルネリウス・アルバ(人名/魔術師)
 ロンドンの魔術協会での橙子と荒耶の学友。金髪碧眼、赤いコートを着たドイツ人。起源は『反証』。
 見た目は二十代の青年だが、実年齢は五十歳を超えている。お喋りな好青年風の外見とは裏腹に、かなり残酷な性格。
 ルネサンス期ドイツの学者にして魔術師のコルネリウス・アグリッパ・フォン・ネッテスハイムの直系。時計塔に組する中部組織シュポンハイム修道院の次期院長と噂される。荒耶宗蓮が小川マンションで行っていた実験における『人形の体を用意して脳だけを生かし続ける技術』は彼のもの。
 魔術師としては超一流で、二秒に満たない詠唱で摂氏千度を超える炎を出現させるほど。また人形師でもある。使い魔は黒い猟犬。簡単に人を愛せない彼は、簡単に愛することができる生き物が大好き。クリーム色のエーテル塊を具現化する。魔術協会ではルーンを専攻していたが、橙子にお株を奪われた。
 単純な攻撃力で言うなら、ケイネス・アーチボルト・エルメロイとは相性が悪いもののTYPE-MOON伝奇に登場する魔術師達の中でも上位に入る。魔術師としての力量は第五次聖杯戦争当時の遠坂凛を20〜30とすると100で、特殊魔術礼装を抜きにしたケイネス・エルメロイ・アーチボルトと同等。格闘ゲームで例えると、超必殺技打ち放題みたいな性能。
 好物はその昔、蒼崎橙子が軽い気持ちで作った蒼崎姉妹流家庭料理、その名もピザ煎餅。橙子曰く、アルバに作ってやったのは一生の不覚。蒼崎橙子に気があった、というか認めてほしかったらしく、ロンドン時代には頻繁に橙子の研究室に足を運んで与太話や自慢話をしていた。
 根源の渦に至ることに興味はなく、蒼崎橙子を殺すことだけを目的に来日した。最期は橙子(の首)に『傷んだ赤色』と言ってしまい、橙子の匣の使い魔に食い殺された。
 学院で荒耶宗蓮と蒼崎橙子とともに学んでいた頃、起業しようと思い立ち親戚筋から会社を買い取った。しかし一般常識に欠けるようで、翌日までに工場を稼動させなければ不渡りを出すという状況でその日の朝一で従業員を募集をするも一人として面接に訪れる者はなく、荒耶と橙子から人形を100体ほど借り受けて労働力に充てようとした。荒耶は事情を考えて人形を貸そうとしたが、橙子は貸してもいいがトイチで、という条件をつけた。なおアルバが開いた工場というのは、世界規模のチョコレーぶべら(おそらくチョコレート工場)。女性向けの仕事をしてみようと思い立ったためらしい。


昏月(地名)
 こんげつ。
 工房・伽藍の堂の近くにある飲食店。明らかになっているメニューは月見うどんと月見そば。
 1988年には既にあった。


根源衝動(用語)
 始まりの因で発生した物事の方向性。aという存在をaたらしめる核となる絶対命令のこと。起源。
 例えば“禁忌”という起源を持つモノは人に生まれようと獣に生まれようと植物になり代わろうと、群における道徳から外れた存在になる。
 輪廻転生があろうがなかろうが、人間は発生した時の方向性に従って肉をつけ知恵をつけ、以前とは少しだけ違った人格になるという考え。
 起源を覚醒したモノは起源に飲み込まれる。たかだか百年程度の“人格”など、原初の始まりより生じた方向性に塗りつぶされるだけだからだ。反面、起源に塗りつぶされた人間(肉体)は強大な力を手に入れることになる。
 人間のルーツを探る荒耶宗蓮は、その過程で起源を覚醒させる術を学んだ。


根源の渦(用語)
 あらゆる出来事の発端となる座標。万物の始まりにして終焉、この世の全てを記録し、この世の全てを作れるという神の座。世界の外側にあるとされる、次元論の頂点に在るという“力”。
 根源の渦という名があるために「 」とは微妙に違う。
 根源の渦に至るという願いは魔術師に特有のものであり、これは世界の外側への逸脱である。これによって世界の内側にもたらされるものはなく、世界の内側にしか視野を持たない聖堂教会にとっては全く意味のない企てとしか思われない。
 魔術協会にとって、根源に達する儀式は協会の監視下で行われるべきものである。


紺野重造(人名:終末録音)
 紺野文雄の父親。夏巳館の元の主人。劇中の時点で既に故人。瀬尾静音が体験した事実を基に脚色を加えて執筆された『終末録音』で言及された人物であり、実在するかは不明。
 多額の寄付を条件に石杖カナタを引き取って養女とし、サナトリウムとして建てた夏巳館の0号室に幽閉した。


紺野文緒(人名)
 礼園女学園1年D組のクラス委員長。身長176cm。短髪。大人びた顔立ちをしており、大学生と言っても通用しそうな雰囲気を纏っている。竹を割ったような性格。
 中堅企業の会長の一人娘。中学時代は名の通ったバスケットボールの選手で、礼園には本人の意思に反して入学させられた。



  


再生(用語)
 記憶のシステムの一つ。保存した情報を呼び出す、つまり思い出す事。


再認(用語)
 記憶のシステムの一つ。再生した情報が以前のものと同一かどうかを確認する事。


佐紀川(地名)
 諏訪鐘市の地名。


佐紀川第二小学校(地名)
 長野県諏訪鐘市立佐紀川第二小学校。浅上藤乃の母校。
 住所は長野県諏訪鐘市佐紀川2-11-8。


さくや(人名:劇場版)
 詳細不明。港啓太の友人。


笹谷(人名)
 小川マンションの四階、403号室に住んでいたと記録されているが、架空の人物。


殺人鬼(用語)
 無闇に人を殺す者。また、強烈な殺人衝動を持つ者を指すこともある。
 その天性は殺人を愉しむのでも怖れるのでもなく、ただ行為として没頭できる事。
 両儀式の祖父の教えによれば、人は一生に一人しか人を殺すことができない。大抵はその一人とは自分のことだが、それを超えて殺した場合はもはや意味のない殺戮であり、それを為す者はまさに人を殺す鬼である。式の祖父の教えでは誰か他者を殺した場合、永遠に自分を殺すことができず、人間として死ねない、とされる。


SAT(組織)
 特殊急襲部隊(Special Assault Team)の通称。日本警察の特殊部隊であり、主に国内のハイジャック事件、テロ事件、強力な銃器を用いた事件に出動し、急襲して犯人を制圧することを目的として編成されている。テロ対策を主要な任務としているため、装備や活動の詳細については公表されていない。
 各都道府県警察に所属する形となっているが、費用はほとんどが国費で賄われ、所轄に関係なく全国展開できる体制が整えられている。
 なお警察組織上は(都道府県警察名)特殊部隊と呼ばれる。
 部隊の主な任務がハイジャック、テロ対策、凶悪犯罪対策であるため、第一種空港がある地域、国際線が数多く就航している第二種A空港がある一部の地域、米軍関連施設が集中している地域に部隊が配備されている。
 部隊は警視庁に3個班、大阪府警察に2個班、北海道警察、千葉県警察、神奈川県警察、愛知県警察、福岡県警察、沖縄県警察に各1個班の合計11個班が編成されている。
 突入を担当する制圧班、狙撃や偵察を担当する狙撃支援班、偵察用機材の設置や突入時に装備資機材を使用しての突入支援を行う技術支援班、現場で統括指揮を行う指揮班に分かれている。
 隊員は主に機動隊員から希望者を募り、選抜試験を経て入隊する。SAT隊員となる条件が『25歳以下の独身警察官』であるという情報があるが、2006年に訓練中に負傷した大阪府警SATの隊員は事故当時28歳であったこと、2007年の『愛知立てこもり事件』において死亡した愛知県警SATの隊員は妻と子供がいたことが判明しているため、絶対条件ではないようだ。
 在隊期間は概ね5年とされ、昇任した後SATに再入隊することもある。また隊員は徹底した守秘義務を負い、愛知立てこもり事件において死亡したSAT隊員の両親は息子がSAT隊員であったことを知らなかったと話している。
 SAT隊員は個人の特定をできないようにするため、報道関係者の前では素顔を隠している。だがSAT隊長は狙撃や突入を実行しない責任者であるため、素顔を公表している。
 SATが出動した際は警視総監(道府県警は本部長)、警備部長がSATの指揮を行い、SAT隊長は現場指揮官として命令を受け任務にあたる。原則としてSAT隊長は突入を独断では行えず、警視総監(本部長)、警備部長の許可が必要と言われている。
 武器の使用は警察官職務執行法第7条に基づいて行われ、突入の際には短機関銃や自動式拳銃などを使用する。
 SATは『犯人の身柄拘束よりも、現場の危機的状況を狙撃などで排除する』方針であり、一方SITは『説得を中心に最後まで投降を促し、犯人の逮捕を目指す』方針であるとされている。アメリカの各警察機関に所属するSWATも行動方針はSITに近く、可能な限り犯人の逮捕を優先する。
 訓練施設は北海道、東京、愛知、大阪、福岡にSAT専用のものが設置されている。訓練は危険を伴い、訓練中に重傷を負った隊員や殉職した隊員もいる。
 専用の訓練施設以外では陸上自衛隊の駐屯地で訓練を行うほか、外国の同様の部隊との合同訓練を行うこともあるとされている。
 作中では『機動隊』に『SAT』とルビが振られていたが、SAT機動隊の機能別部隊として編成されているものである。ただし警視庁と大阪府警のSATは編成上機動隊から独立した組織となっている。


佐藤緑葉(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号16。
 電話番号00-950-1734。
 住所は観布子坂下2-21-12。


佐藤流葉(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号14。
 電話番号00-367-6792。
 住所は観布子台3-23-1。


里見義実(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号15。
 電話番号00-401-1688。
 住所は南観布子1-45-9。


残光ケージ(用語)
 絵本。瓶倉光溜の二冊目の著書。
 両儀未那は資源の無駄レベルと評した。



  


(概念)
 直死により黒い『線』とそれを束ねるように存在する『点』で視覚化される概念。直死で視覚化されるものは『物質が発生した瞬間に定められた存在限界』であり、死とはやがて訪れるものではなく既に内包しているものである。


Cマーケット(組織:劇場版)
 詳細不明。
 1998年の時点で臙条楓がここでパートタイム労働をしていた。


死の線(用語)
 直死の魔眼によって捉えられる、常に流動する落書きのような黒い線。
 これはありとあらゆる物にあり、刃物で切りつける事で線が走っていた物体を『殺す』ことができる。線に強度はないので、どんな物だろうと平等に殺すことが可能である。直死によって可視化されるこれは存在に内包された寿命、死期という概念がカタチになったもの。
 遠野志貴が視るものはアルクェイド・ブリュンスタッドによれば『モノの死にやすい線』で、これが結ぶ点こそが『死』そのものである。両儀式が視る線は志貴が視るそれと同じものかは不明だが、同様に『存在の寿命という概念がカタチになったもの』である。また式は点を視ることができない。
 これを切るのは線をなぞって解体するのではなく、寿命を切って存在を殺した結果、物が切れるということ。物質的破壊ではなく存在的な消去。
 生物の線を切った場合、それが生命維持に支障のない部位ならば死亡することはない。だがその部位は二度とくっつくことはなく、物質的には切れていない場合においても二度と機能を果たすことはない。つまりその部位が死んでいるのである。
 遠野志貴も両儀式も生物なので、生物の死が視やすい。これは同じ生物として『生物の死』が容易に想像できるためである。鉱物、概念の死を視るには自身が対象と同じになるか、脳をフル回転させて『想像』する、もしくは生物のチャンネルに合っている脳を対象のチャンネルに合わせることが必要。
 要は人間に理解できない存在の終わりは視えないという事。


下村千秋(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号18。
 電話番号00-075-7656。
 住所は新観布子2-13-11。


終末録音(用語:終末録音)
 瀬尾静音が執筆した連作短編小説。このシリーズは各学年・各部活に噂話として伝わる七不思議を題材として不定期掲載されていたが、瀬尾静音が高等部三年生の時には瀬尾とその友人たちが体験したことを題材に脚色した三編が別冊として単独刊行された。


シュポンハイム修道院(地名)
 時計塔に組する中部組織。


呪文(用語)
 魔術を発動させるために必要となるもの。世界ではなく自身に訴えるもの。自己の身体に刻み込んだ魔術を発現させるためのもの。
 一流派として安定した魔術を使用する際は定められた形式通りに手順を踏まねばならず、その一端が呪文である。手続きで言うなら申請、受理、審査、発行のうち申請にあたる。
 大きな基盤を持つ魔術行使に関しては約束事でしかないが、自己流の魔術行使の場合は自己暗示としての効力のほうが大きい。魔術回路を効率よく起動・作動させるための方法の一つとして、自己を作り変える『決まり文句』である呪文が作られた。
 その魔術の発現に必要な意味合いとキーワードさえ含まれていれば細部は各魔術師の好みによる。いわば自己暗示なので、長く意味付けするほうが自己から引き出す魔術の威力は増大する。
 自身ではなく世界に訴えかける呪文は大呪文、大儀式の類であり、一個人での使用は不可能とされる。


淨眼(用語/能力)
 上人が持つとされる眼で、使用しているときは瞳が蒼くなる。親の精神性や修練の答が宿命的に子供に受け継がれる、宿命的な遺伝。高い精神性を持った『人間』にのみ受け継がれる。
 あるいは七夜の眼に多かった、もしくは期待されていたものと思われる。七夜の眼は『本来見えてはならないものを視る』という以外、何が視えるか一定しない。七夜黄理は『人の思念』が靄のように視えたが、時南宗玄によるとそれは淨眼と呼べないほど弱いものであったらしい。
 遠野志貴と両儀式の直死の魔眼はともにこの淨眼が死に触れて『死』を視るように発展したハイブリッドである。そのため直死の魔眼フル活動時には蒼い淨眼になる。


ジョージ(人名)
 アーネンエルベの店長。イタリア料理の達人。
 AATMでは遠野志貴に殺害されたが、そのときはまったく手ごたえがなかった。それもそのはず、志貴が殺したのは彼に取り憑いていた黒いゲル状の『ネロ・カオスの悪性』だけであった。


白純(人名)
 小川マンションの五階、505号室に住んでいたと記録されているが、架空の人物。おそらくは白純里緒の名を流用したものと思われる。


白純里緒(人名/起源覚醒者)
 しらずみ りお。
 薬剤師の息子。黒桐幹也と両儀式の高校時代の先輩。起源は『食べる』。
 17歳になるまで喧嘩一つしたことがなかった。1995年8月に想いを寄せていた両儀式に告白をしたが「弱い人は嫌いです」と言ってふられたため、とりあえず下級生を木材で撲殺。死体の処分に困り、それを食べることを思いつく。居合わせた荒耶宗蓮が見守る中、一時間で人間一人を骨も残さず完食した。それがきっかけで荒耶宗蓮に起源を覚醒され、その後退学。
 1995年から1996年にかけての連続殺人及び1999年2月の連続殺人の犯人。前者の殺人は式を揺さぶるためのものだった。後者では顔と服装を式に似せて殺人を繰り返していた。その時でも髪が金なのは獅子をイメージしてのこと。このアニマ嗜好は天性のもの。或いは自覚していない性同一性障害だったのかもしれない。だとしたら惹かれたのは式ではなく織だったのかも。
 1999年2月に連続殺人の犯人を捜していた両儀式によって左腕を殺されている。その頃には目が赤くなっており、蜘蛛のような立体的な動きが出来た。
 起源を覚醒されて3年が経過しているために人間としての理性はすでになく、起源がもたらす衝動に従う文字通りの怪物に成り果てていた。荒耶からもらった体内で分解されない大麻を栽培してタダ同然でばら撒き、見込みがあるものには自身の血液を利用したブラッドチップを服用させて起源覚醒者にしようとしていた。
 ブロードブリッジ付近の廃墟と言っていい築30年を超えるアパートに住んでおり、部屋には大量の両儀式コレクションがある。そのアパートは1995年まで荒耶宗蓮の持ち物であり、1999年の時点ではそっくり白純の持ち物になっている。なおそのアパートには6部屋しかなく、白純は二階の隅の部屋に住んでいた。間取りは玄関と台所が一つになった部屋の奥に六畳一間という簡素なもの。
 2月11日に両儀式に殺されたが、表向きは薬物による中毒死として処理され、遺体は警察が回収した。
 もともと人間嫌いで男も女も嫌いな潔癖症。式が例外だったのは、式がどっちでもなかったから。黒桐幹也とは単純に先輩後輩の仲だったが、白純は一方的に目を疑うぐらいの友情を感じていた。彼の基準に照らすと友人と呼べる人は幹也だけ。


白玉ぜんざい(用語:AATM)
 両儀式が店長になった際のアーネンエルベのメニュー。


白玉ぜんざい両儀スペシャル(用語:AATM)
 両儀式が店長になった際のアーネンエルベのメニュー。


白鳥庫吉(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号16。
 電話番号00-684-9304。
 住所は音和谷本町3-41-5。


新谷(人名)
 小川マンションの四階、405号室に住んでいたと記録されているが、架空の人物。


新碧緑荘(地名)
 礼園女学院の寄宿舎。108号室に浅上藤乃が入居している。
 寄宿舎の起床時間は午前五時。午後六時以降は寄宿舎内の行き来でさえ禁止され、トイレと一階の学習室を利用するときのみ部屋から出ることを許される。寄宿舎内で(自室を除き)生徒間の私語が許されているのは談話室のみ。ただしそれも入り口にシスターが立っているので完全に自由というわけではない。
 寄宿舎のロビーに電話があるがそれにダイヤルはなく、シスター達が詰める寮監室にかかってくる電話をそれに繋ぐ方法で通話する。なお電話は生徒に関わりのある親族からのもの以外は切られてしまううえ、一日に一度しか取り次いでもらえない。一応通話のプライバシーは守られるらしい。
 1998年11月に一年生と二年生が入居する東館が葉山英雄に放火されてC・D組の宿舎が焼けたが、学院がもみ消したため外部には知られていない。


新観布子(地名:劇場版)
 観布子市の地名。



  


鈴木一平(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号17。
 電話番号00-138-9841。
 住所は西音和谷5-6-14。


硯木秋隆(人名)
 すずりぎ あきたか。
 三十代前半の男性。両儀家の家令で、両儀式の父の秘書。亡霊のように暗い。寄り添う影のイメージ。(元)ヤクザ。
 式の教育係として両儀家に引き取られた。影に日向に式をフォローする執事の鑑。返り血の付いた式の着物を洗うのも秋隆。式の我侭と世間知らずに振り回される仲間として、黒桐幹也とは仲がよい。
 礼園女学院の妖精事件が解決したあと、不要となった礼園女学院の制服をしっかり保管している。そして数年後に気を利かせてこっそり黒桐幹也に渡す。
 2010年には両儀未那の教育係となっている。
 ちなみに私服はすべて黒のスーツ。


スタジオ玲瓏館(用語:終末録音)
 詳細不明。
 映写機が作り出した同人誌制作の話に登場する、黄路美沙夜が主宰するスタジオ。漫画制作スタジオ、または同人サークルと思われる。浅上藤乃がここの秘書を務めている。


ストロベリーアイス(食品)
 両儀式の数少ない嗜好の一つにして苦手なもの。冷たい食べ物は嫌いなのに、コンビニエンスストアに寄ると必ず買ってくる。
 これに関して黒桐幹也は『弱点を克服するつもりなのだろうか』などと素晴らしい鈍感ぶりを発揮している。


須拝檸檬(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号19。
 電話番号00-367-7010。
 住所は観布子台8-7-8。
 すっぱいレモン?


諏訪鐘市(地名)
 長野県の地名。



  


制服戦争(用語)
 礼園女学院の至上の制服を決める戦い。かつてシスター・リーズバイフェが自分の意志とは関係なく巻き込まれ、色々あって現在の制服に落ち着いた。
 ツメが甘い家系のジョンブル魔術師とメイドサーヴァントが優勝候補と目されていた。


精霊(用語)
 自然霊・動物霊・それらを意識的かつ人為的に加工した守護精霊がある。よって人間の形をとらない。存在に人間の信仰は不要だが、人々のイメージという筐をまとって具現化する『力』である。
 精霊は人間に知覚できるほどの規模になった妖精で、精霊級の霊体は受肉が可能。
 また妖精・精霊もその基盤は魔術ではなしえない神秘。


瀬尾(家名)
 瀬尾静音の家。
 北陸ではそれなりに有名な200年以上の歴史を持つ酒蔵で、家柄や資産運用ではなく、単に趣味を突き詰めていったらいつの間にか金持ちになった家。当然使える者は誰でも使うため、静音は幼少期から酒に親しみ、利き酒を得意とするまでになっている。


瀬尾静音(人名)
 中等部からの礼園女学院の生徒。1998年には高等部1年A組。黒桐鮮花のルームメイト。小説書きの同人少女。夏は水着や砂浜や焼きそばとは全く縁のない、海辺の一大決戦を楽しみにしている。映像よりも音声に前世の因縁的な拘りを持っている。寄宿舎内でアキラという犬を飼っている。
 幼少期から実家の酒屋を手伝わされていたため、利き酒が得意。また同様の理由により実家では自由時間が一切なく、監獄のような礼園女学院に入学してようやく自由時間を手に入れた。親が送ってくれないため制服以外の服は持っていない。タイトルだけでシスターが貧血を起こしそうな海外バンドを好む。
 1998年の夏休みまでは基本的に二人一部屋の寄宿舎に一人で入居していたが、夏休み明けからは黒桐鮮花と同室となる。未来視もあり、この少し前までは学年トップの成績を誇っていた。
 現在の情報から未来を推測し、視覚的に視る未来視。よってその未来は行動次第で変えることができる。だが1998年8月3日に黒桐幹也と出会うまではそのことをはっきりと理解しておらず、事故死する人間を助けようと躍起になってみたり、かと思えば自分が実家に帰省する未来に心底厭だと思っていながらも『大筋は変えられない』と諦めて従ったりしていた。また未来を視れることから、自分は世界という絵巻の登場人物ではなく読み手なのだという疎外感を感じていた。
 瀬尾静音の未来視は大抵一日後のことが視える。だが風景としてなら三日後くらいまで視え、風景というよりもイメージがざっと流れる程度のものなら一月後や一年後くらいまで視える。頻度は三日先までの風景なら日に2、3回ほどで、断片的なものは極稀。未来が視えるときは前触れがなく、眩暈のあとに風景が切り替わり、未来が客観的に視える。このときは例えばバックミラーに映った風景をバックミラーに映った自分が視ている様な不自然な感覚となる。また未来を視ている時間は、感覚的には10分などまちまちだが概してゆったりと感じるものの、実時間では2秒程度。
 未来視のための情報収集ゆえか、時折突拍子もない質問をする癖がある。おどおどしていて引っ込み思案。
 1998年8月3日に帰省のため街に出たところ、見知らぬ男性が事故死する未来を視てしまい、アーネンエルベの前でバッグが原因で死ぬことになると声をかけたが、当然のようにけちを付けられたと感じた男性と口論になる。それを仲裁し、『なんとなく』というあやふやな根拠を信じて男も助けた黒桐幹也に恋愛感情に近い憧れと尊敬の念(本人曰く刹那的な恋慕)を抱く。
 幹也が男を助けた後、幹也とアーネンエルベで対話して未来視の認識を新たにし、以後は極力思い悩むことをしないようにする。なおこの騒動のせいで乗るはずだった特急を乗り過ごした。
 幹也はその時に彼女から『今のままだと、近いうちに死んじゃうかもしれません』と忠告されている。
 1999年1月頃に起きた妖精事件では、休み中に事件が解決する程度の未来を視ていた。なおその年末年始の休暇のときは家族で海外旅行に出ていた。
 幹也と出会った後、あわよくば再会できないかと思ってアーネンエルベを訪れる。その際に桂木千鍵と日比乃ひびきに瀬尾晶に間違われた。


世界(用語)
 この世界。地球という星、と言い換えてもいい。感情はなく、何よりも矛盾を嫌い、美しくあろうとする。
 矛盾を嫌うために異界を修正するなどの干渉を行い、美しくあろうとするために自己を脅かすものを粛清する。
 触覚として精霊、真祖を、抑止力としてガイアの怪物、プライミッツ・マーダーを持つ。



  


総合体育祭(用語)
 観布子市の中学校6校くらいが共同で行う大会。陸上競技がメイン。
 全員参加というわけではなく、選手として選ばれるほど運動能力が高くなかった黒桐幹也は保健の係で運営に参加していた。ここで幹也と浅上藤乃が出会った。


属性(用語/魔術)
 魔術特性、起源とも。魔術師と相性がいいもの。
 普通は地水火風空、木火土金水などの世界を構成する一元素を背負うが、中にはさらに分化したものを背負うものもいる。後者の場合は中央には入れず、突出した専門家になる。
 遠坂凛の五大元素(全元素)、ならびに間桐桜の架空元素(虚数)というのはそれぞれ奇跡に等しい資質で、もはや天賦の才というよりも呪いに近い。
 魔術協会では火はノーマル、風はノーブルと言われている。五大元素使いをアベレージ・ワンと称する。


蘇生(用語)
 魔法使いの領域。


園田(人名)
 小川マンションの三階、301号室に住んでいたと記録されているが、架空の人物。


存在不適合者(用語)
 人間に共通のチャンネル(常識)を持っていない超能力者。そのために普通の人間から見ると狂人にしか見えない。




BEFORENEXT

inserted by FC2 system