アーネンエルベ(地名)
 ドイツ語で『遺産』を意味する喫茶店。映画館の横にあり、なぜか出入口が二つある。
 都会の隠れ家をイメージしてひっそりとオープンした。マスターのジョージはイタリア料理の達人。他にアルバイト店員の桂木千鍵と日比乃ひびき、ランサーが働いている。
 偽志貴によるとストロベリーパイが逸品らしい。ラズベリー系がおいしい。自慢のメニューはブルーベリーパイ。基本的にジョージが趣味で焼いているシェフの気まぐれパイにハズレはない。
 年中無休で、営業時間は平日が午前9時から午後7時、日曜・祝日が午前10時から午後6時。猫の持ち込みは禁止。テーブル単位での貸切が可能で、貸切料金は半日単位で変わる。支払いにはカードの使用が可能。夏場は海の家、秋口には祭の露店を出している。男性の制服はギャルソン服一式だが、ウェイトレスの制服は半袖ブラウスに膝上丈のスカートとエプロンという冬でも半袖のものしかない。セイバーたちが着用した様々な色のエプロンが保管されており、後に黛まゆ子と栗枝クララが着用した。茶色のエプロンは結城姉妹のための特注品。
 店内は壁や床もドイツを思わせる内装で、照明は薄暗く電灯を極力廃したものだが、アンティークで飾られていて雰囲気は悪くない。混雑していない時なら店内での勉強が可能。ひびきと千鍵は店内でよく宿題をしている。裏に焼却炉がある。
 基本的に客が少ない。桂木千鍵に会うために通う客がいるが、その客は千鍵をツンデレと称する類。ひびきと千鍵はレンにケーキを与えているが、その代金は志貴に払わせている。
 厨房の扉は防音らしい。厨房は一辺が最大3メートル。AATMでは厨房に黒い扉があり、それはグレートキャッツビレッジに通じていたが、GCVごと吹っ飛ばされて残ったのはドアノブだけ。そこのネコ精霊を倒せば倒すほどより強く店に縛り付けられるが、次の店長が来るか閉店時間になれば解放される。
 地下倉庫には店で使うものやジョージ店長が趣味で集めている変なものが納められており、千鍵たちは滅多に入らない。また何部屋もあるらしく、そのうちの一つは地下洞窟に通じている。その地下洞窟の最下層には妄想具現化装置ファーブル・マンタズムが納められており、間桐慎二がそれを使用した後、洞窟はおそらく第七聖典と『約束された勝利の剣』の使用によって崩壊し、入口も開かなくなってしまった。
 AATMでネコアルクらに乗っ取られていたときに出されたメニューには『にゃんこ雑炊』『鮭フレーク』『にぼしステーキドライ風味』『骨の味おせんべい』『にぼしフレーク北海道ミルクづくし』『かつおぶしに似たブラックハーブティー』などといった、明らかに改竄されたものだった。
 後に両儀式が店長になった際には『白玉ぜんざい』『白玉ぜんざい両儀スペシャル』といったごく真っ当なものが出された。
 メニューはコーヒー、紅茶などのドリンクからデザート類、軽食まで取り揃えており、店主こだわりの手作りパイが常連客に好評。一応メニューはあるのだが、作れるものなら何でも作るというスタイル。そのため『韃靼蕎麦茶』『オータムナルダージリンヴィンテージ』、果ては『大ブタチャーシュー追加ヤサイニンニクアブラチョモランマでカラメでほうれん草と生卵つき』というおよそ喫茶店とはかけ離れたメニューも作る。
 明らかになっている普通に注文できるメニューはストロベリーパイ、ブルーベリーのパイ、オレンジのパイ、オレンジとヒマワリのミックスパイ、ミートパイ、ラズベリーのトルテ、特製チーズケーキ、アップルシュトロイゼルクーヘン、クラブサンド、カレー(ポークカレー)、イカリング(カレーのトッピング)、夏野菜サラダ、きのこのパスタ、フィッシュアンドチップス、セットメニュー(Bセット)、3ポンドステーキセット(ランチセット、Fate/zeroフェア限定か?)、キャロットサラダ、津軽ドカ盛りカレーセット(通称シエルスペシャル)、グレープフルーツ、バレンシアオレンジ、ジンジャーエール、オレンジジュース、珈琲、カフェラテ、アイスココア、アイスティー、ユーカリティー、ミルクティー、レモンティー、アールグレイ、煎茶、赤ワイン。コーヒーは普通より熱い。カレーライスは大盛りやトッピングを選択でき、サラダがセットで付属する模様。言峰綺礼によれば麻婆豆腐を含む中華セットがあるらしいが、千鍵はその存在を知らない。一番安いメニューは砂糖水、らしい。
 カレーライスはじっくり煮込んだポークカレーで、かなり人気がある。毎晩ジョージが大鍋一杯に仕込んでいるが、ひびきや千鍵が出勤する頃にはほとんどなくなっている。シエルが称して曰く、カレーを愛する者たちが密かに集う隠れ里、月光華麗村。このカレーは本来一日寝かせて完成するものなのだが、最近は仕込みが追いつかないうえ『最近味落ちたんじゃないですか?』と小言を言われるのでジョージ店長は密かに嘆いているらしい。
 狙われたアーネンエルベでは向かいにできたアーネンエノレベに客を奪われて危機に陥るが、ひびきと千鍵、スナオがメイド服で客寄せや接客をやったことに加えアーネンエノレベが接客担当も厨房担当も誰もいなくなっていたためそちらの客が退去して押し寄せた。その後カレン・オルテンシアとジャイアントアンリによって崩壊の危機に瀕するが、カレイドオレンジとカレイドグリーンの活躍により事なきを得る。
 普段出会えない人間に出会えるという噂がある。また一度入ると店内のものを自由に使うことができるが新たな客が入店しない限り出られないという噂もある。後者の噂についてはシエルが調査に訪れた。
 月姫世界と空の境界世界の接点であり境界。遠野志貴と両儀式、アルクェイド・ブリュンスタッドと蒼崎橙子など、どちらかの世界に深く関わっている人物同士が顔をあわせると矛盾が生じるため、正式な時間軸上の物語では入ることができない。なお複数の作品の登場人物が顔をあわせるときには作中時間のずれなどは解消され、登場した当時の年齢のままである。平行世界が交差する場所として、また眼鏡の男が女の子を連れ込む店として重宝されている。
 複数の場所に出現したり消えたりし、冬木市の場合は冬木大橋の近くに現れる。カレン・オルテンシアは、アーネンエルベはキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが建てさせた『魔法使いの箱』の一つではないかと考えている。そうだとすれば、この店で起こる不思議な現象にも説明が付く。


相川(人名)
 臙条巴の元クラスメイトの少年。


相川春菜(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号1。
 電話番号00-950-7871。


相沢三郎(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号2。


相沢茂明(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号1。
 電話番号00-138-8215。
 住所は西観布子1-12-34。


アインバッハ(人名)
 シスター・アインバッハ。礼園女学院の鬼の寮監。


青木勝(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号2。
 電話番号00-401-0787。
 住所は南観布子2-52-4。


蒼崎(家名)
 日本屈指の歪芯霊脈を管理する魔術師の一族。魔術師の世界における厄介ごとの代名詞。属性は風。復元が得意分野。魔術協会からは異端とされてきた。名門であるという記述と名門ではないという記述がある。
 蒼崎の実家は久遠寺邸から4駅分下った、三咲市の端の山奥にある。最寄駅は秋古城。財力は一般家庭と同程度で、住宅も一般的な一戸建て。
 古い家系であり、今代で6代目。3代目が大天才で『道』を掘り当て、そのために蒼崎の当主は高い確率で『魔法使い』を継承する。今代の後継者は不吉とされる姉妹で後継者争いの結果妹が魔法使いを継承し、姉は魔術協会に加入するも封印指定を受けて脱退した。妹も現在は脱退してフリーランス。
 なおその三代目、青子と橙子の祖父は怪物と称されるほどだったが、青子からは『偏屈で長生きしてるダメじじい』くらいにしか思われていなかった。三代目は出入りしていた文柄詠梨に殺されたのだが、魔法使いの夜の発表前は蒼崎の遺産を青子に譲ったために橙子に殺されたとされていた。
 偉大な三代目も子供や弟子には恵まれず、蒼崎の人間は年々魔術回路が失われており、青子の両親に至ってはほぼ無しだった。そこで名門・蒼崎の歴史は終わるかと思われたが、その両親は魔術回路を20ほど持った神童を授かった。蒼崎橙子である。
 橙子は魔術師として山奥にある祖父の工房で、青子は両親の家で育てられた。だが青子の16歳の誕生日、つまり橙子が18歳(魔法使いの夜発表前は橙子は青子の2歳年上とされていた)のときに突如後継者が青子に変更された。この記述も魔法使いの夜で微妙に改められ、家と祖父の工房が隣接していると明かされて姉妹は二人とも実家で育ったことになっている。また後継者が変更されたタイミングも青子の16歳の誕生日から青子が中学を卒業した日に改められている。
 第五回聖杯戦争が行われている2004年には姉は行方をくらましている最中、妹は全国行脚の最中だった。
 妹は壊すことしか能がないが、姉は何かと芸達者。


蒼崎青子(人名/魔法使い・魔術師)
 7月7日生まれ。A型。身長160p。体重50s。B88 W56 H84。1988年当時は身長163cm、体重51kg(この身長の差異は変化したのではなく、魔法使いの夜に合わせて設定が変更されたもの)。
 現存する五人の魔法使いの一人。第五魔法の使い手で第四の魔法使い。消費/消滅の理を担う最新の魔法使い。ただしトラウマによって魔法の行使をしたがらない。第五法の到達者。『相続遺産・蒼崎家の魔術刻印』を所持している。終末に立ち会うことのない放浪者。フリーランスの魔術師。誤差を改竄する者。ロンドンの問題児。蒼崎橙子の4歳下(魔法使いの夜の発表前までは2歳下だった)の妹。魔法使いの夜以前の絵では赤髪だが、実際は黒髪。
 大それたことはしていないが、『可能である』ことが既に脅威なので煙たがられている。霊長の守護のため、際限のない生存を望む。極度の放任主義。格闘技好き。魔法使いであるのは『辿り着いてしまった』からだが、辿り着いた青子自身、そこが何処なのか、何なのかわからなかった。魔術協会から『青』の称号を与えられている。戦闘においては魔術の他にカカト落しやボディブローなどの体術も使う。魔術協会ではマジックガンナー、ミスブルーと呼ばれている。
 オシリスの砂によるタタリの再演のような、タイムスリップもどきのトリックは効かない。ミハイル・ロア・バルダムヨォンに対して「貴方がこの先も生き続けるならいつかどこかで出会っているかもしれない」と言った事から、時間を超越していると思われる(魔法使い全般についてだろう)。
 極めて自己中心的ながら、務めて公正であろうとする気質の持ち主。怒りであれ喜びであれ、感情が昂ぶると口調が可愛らしくなる。人の好き嫌いは人並みにあるが、それと敵と見なすかは別で、嫌いな人でも敵と見なさなかったり、好きな人を敵と見なしたりということがある。敵と見なす基準は『自分の感情を乱す者』である。周瀬唯架とは非常に仲が悪い。
 遠野志貴に接するときは気さくなお姉さんだが、基本的には他人と深くかかわらないスタンスをとっている。賢者としての青子、暴れん坊としての青子。そのどちらも本当の青子で、普段はこの中間の人となりをしている。冷めた感じで強きを認め弱きに呆れながらも無視しきれない正義感を持つ。天然であり自覚はない。本当はひどいひと。
 高校時代は活発でリーダーシップに溢れていたが、中学時代は淑やかな大和撫子だった。これについて青子自身は『高校から人生仕切り直したようなもの』と言っている。中学時代の制服はセーラー服だった。
 学生時代は恋愛関係には非常にドライで、少なくとも1989年3月までは男女交際をしたことはなかった。その後も恋愛観は極めてクールで、所詮他人と自分は別物なのだから自分の感情が確かなら相手の感情など知る必要がない、とまで悟りきっている。のだが、根はロマンチストなので少しだけ愛し愛される関係に憧れているらしい。家庭には振り返らない人間と思われがちだが、これで案外子煩悩とか。
 久遠寺有珠とは同居人で相棒だったが、これはあくまで利害が一致しているため。本来の関係は家柄によるものであるが、味方というよりは敵に近い。
 青子という名前にコンプレックスを持っている(アオアオと続く名前が嫌い)でフルネームを呼ぶと怒るらしいが、青いものが好き。地下鉄の通過音に安らぎを感じる。忠犬が好きであり嫌い。出前が好き。久遠寺邸で食事を作るときは材料を買ってきて煮るだけの鍋物が多い。食費のことを考えずに食事を作るため、月末になると食費が底を尽いて昼食を槻司鳶丸にたかることがあった。姉ともども焼肉大帝都での大食い記録保持者。
 どうやら蒼崎橙子が一人だけイメチェン(劇場版に合わせたキャラクターデザインの変更)したことが気に入らない様子。
 魔術系統は数秘紋による魔力加工、変換、出力と魔法・青。魔術回路の質はC、量はE。魔術回路の編成は正常で極めてシンプル。魔術回路の規模は有珠よりも小さいが、回路の回転の速さ、耐久構造、魔力の質、燃費の良さが並はずれている。ノタリコンを基本とした魔術行使、無限回転と恐れられる高速詠唱を得意とする。彼女の魔術行使は強いのではなく恐ろしく速いもので、蒼崎家に生まれなければ天才的な射撃手として名を馳せただろうと有珠は認めている。最大射程はよくて600メートルほど。回転を速めることが専門だが止めることは専門外。
 魔術師としては半人前だが、体内の魔力の燃費効率が普通の100倍ほどよい。魔術特性は『物を壊す』ことにのみ特化しており、破壊に関してのみ稀代の魔女、人間ミサイルランチャーと呼ばれている。反面、治療・創造・修復といった魔術の腕前は並以下。多様性、万能性は低いが一点突破的な戦況ならば他の追随を許さない破壊の魔女。スターマイン、スターボゥという彼女の魔術は肘から魔力を撃ち出して拳を通過した時点で魔術式を完成させるというもので、格闘系の魔術師といえる。魔術師としては珍しく、触媒によるバックアップを好まない。
 ごく平均的なサーヴァントと一対一でなら対等に戦うことができる。なおアルクェイド・ブリュンスタッドと戦った場合には3:7で不利だが、アルクェイドは青子にしてほしくないことがあるので敬遠している。
 彼女は魔術回路こそあるものの魔術師としてはごく平均的な性能として生まれた。そのため魔術関連のことはすべて神童と謳われた姉の橙子に任せて、魔術とは無関係に温かな両親に愛されて成長していった。
 1978年に周瀬律架が変身術を使って姉の唯架と弟の律架という一人二役で内偵任務に訪れた際に、家庭教師になった青年の律架に対して恋心を抱く。それについて姉の唯架に相談し、律架の任務最終日に蒼崎邸の縁側で青年の律架に青子なりの愛の告白をした。しかしまさにその時に通りかかった橙子によって律架の変身術が解かれ、青子の初恋は終わった。
 魔法使いの夜の8年前の冬に、エンジンベルトに巻き込まれた猫の親子を助けるために祖父を頼り、祖父はその願いを叶えたが、結局猫を助けないことを選んだ。この10分間の記憶は魔法・青の性質により残っていないが、この時に「影」(おそらくは魔法使いを殺すという赤い影)が生まれた。
 中学を卒業した日(魔法使いの夜の発表前は16歳の誕生日だった)に突如橙子に替わって蒼崎の後継者にされて問答無用で魔術師の世界に引き込まれ、高校入学と同時に祖父から魔術刻印を継承した。なお、怪物と呼ばれる祖父を特別恐れておらず、仮にも魔法を汲み上げた大師父を『偏屈で長生きしてるダメじじい』くらいにしか思っていなかった。
 16歳のときに街の霊脈管理を任され、ちょこちょこと現れる外敵を迎撃していた。それは忙しい毎日だったが、文句を言いつつも楽しんでいた。ある時期までは魔術のみによるスタイルを重視していたが、新たな同居人が転がり込んできてからは格闘技に嵌り、白兵戦を前提とした魔術スタイルに切り替えた。
 魔法使いの夜の当時(1988年)は17歳。蒼崎橙子の4歳年下(魔法使いの夜の発表前は2歳年下の設定だった)の妹。才能は姉の橙子に比べて大きく劣る。この当時の魔術師としての実力は、久遠寺有珠と戦った場合の勝ち目はほぼ皆無という程度。ただし魔力を流動させるだけの単純な魔術式ならばわずか二年の実践で有珠を上回っている。少なくとも学生時代は使い魔を造る技量がなく、髪も瞬間的な術の強化にしか使えなかった。学生時代は魔術協会との繋がりはあるがフリーだった。
 高校二年生の時点では基本的な回路の接続と魔力を加工して弾くこと、つまり魔術回路を銃身として魔力を放つごく単純な魔術師である魔弾くらいしか使えなかった。また精度もかなり悪く、標的まで5mほどの距離から撃っても20cmほど外してしまっていた。右腕にある魔術刻印は普段は塗り薬で隠している。
 魔法使いの夜の当時は私立三咲高等学校の2年A組に在籍し、生徒会長を務めていた。役職は不明ながら、一年生の頃も生徒会役員を務めていた(美濃禎常が2年生で応援団長になり、その時に青子が生徒会長に就任したばかりという事なのでおそらくは1年生から生徒会長だった)。高校時代は教師とは冷徹であるべきであるという持論を持っていた。学力は高い方ではなかった。しかし渠裸大学の学生からレポートの代筆(というか丸写し)のアルバイトを引き受けてもいた。なおこのアルバイトを行うため、冬季特別清掃班の監督を槻司鳶丸に任せていた。
 青子が生徒会長になってから生徒のアルバイト先や親しい友人宅への移動時間およびその優先順位を調べ上げた機密ファイルが作成された。このファイルはもともと青子だけが利用できるものとして作成されたようだが、三咲中央公園における青子と人形との戦闘を三咲高等学校の男子生徒に目撃されたことでその生徒を見つけ出す目的で槻司鳶丸に利用させた。
 万事そつなくこなすが、使いどころを誤ると一転して学校を震わす嵐となり、大抵その場に居合わせた教師が責任を取る破目になる。生徒からも、騒いでいた教室でも青子が現れるだけで一瞬にして威儀を正して静まるほど恐れられている。生徒達の間ではいつも機嫌が悪いというのが通説になっていたが、これは単に彼女が言い訳をしたがらない性格であるためいつも何かに怒っているように見えるだけである。しかし、無害な何かに反感を覚えるということがあるのは事実。ただ、こういう時の怒りは歳相応の可愛らしいもの。
 音楽好きで中学卒業後は上京して国立大学を目指しながら毎日ライヴハウスをはしごするという野望があったが、橙子が抜け駆けをしたせいで潰えた。とはいえ音楽好きは変わらず、私立三咲高等学校の生徒会長に就任してからもたびたび天城浜のスタジアムにライヴツアーを観に行っていた。16歳で久遠寺邸に引っ越した。メイ・リデル・アーシェロットとはあまり仲が良くないが、リデルリドルのファンではある。高校時代の生活費は実家から月額三万円を送ってもらっていた。
 高校二年生の創立記念日は休日であったため、その明け方まで有珠に貰った見張り塔について何らかの作業を行っていた。それから眠りに就いたのだが朝8時ごろに電話で学校に呼び出され、山城和樹教諭に静希草十郎の案内を任された。草十郎に対しては初対面から訳もなく反感を覚えていた。なお、見張り塔は自己流アレンジを施したためか壊れるどころか跡形もなくなっていた。
 三咲中央公園で人形と魔術で戦った際にそれを三咲高等学校の男子生徒に目撃される。このときに結界の感覚を握っていたのは青子だが、どういうわけか結界に侵入されたことを感じなかった。なお、この戦闘で使用した魔術はもともと術式が公園に刻まれていたもので、青子が行ったのはそこに魔力を注ぎ込むことだけだった。
 後の調査でロビン・ロスト・ロンドが後を辿れなかったことで男子生徒が魔術師や魔術で操られていたという可能性は消えている。魔術の隠匿のためその目撃者を始末しなければならず、翌日に改めて有珠からその覚悟があるかと訊ねられて「やるしかないだろうね」と返答する。その後、有珠から収納の小瓶を譲渡された。目撃者を始末するに当たり、騙し討ちは気に入らないとして正面から理由を告げて殺すことにした。その更に翌日、鳶丸に依頼しておいた調査の結果と草十郎だけがその調査に含まれなかったことから目撃者が草十郎であることに行き着く。
 草十郎を呼び出すために使ったのは直接投函したと思しき手紙。これは草十郎が読んだあと、自動的に燃えてなくなった。草十郎を呼び出した待ち合わせ場所はやしろぎブレッド&キッツィーランドのキッツィーミステリーツアー城一階ロビーだが、実際は草十郎がキッツィーミステリーツアー城に入った後で自分が入り、退路を断つつもりだった。しかし城に入る前に隠れているところを草十郎に見つかったため、城の前で攻撃を仕掛けた。
 草十郎を城の二階に追い詰めたが、今にも魔力弾を撃とうという時に橙子の人形に攻撃され、魔術回路を乱されたためにスナップを撃つことができなくなり、草十郎とともに城内を逃げることになる。逃げている間に草十郎と話をし、自分と草十郎の認識の違いを知ったことで別の解決方法があったのではないかと思うようになる。
 そこで草十郎を隠し通路から逃がし、自分一人で人形と対峙する事を選ぶ。これは草十郎を逃がそうとしたこともあるが、障害物のない屋外に出たら勝ち目がないと判断してのことである。しかし入口が封鎖されていたために戻ってきた草十郎に窮地を救われ、人形を倒すことに協力するから代わりに見逃してくれという取引を持ちかけられてこれを承諾。
 共闘の役割は草十郎が人形をひきつけ、青子がその間に地下の柱を破壊して城自体を崩壊させるというもの。しかし草十郎が役割を果たそうとしたところで人形は六足形態になり、地下の青子の方に向かってしまった。そこで青子は建物を崩壊させる術式を起動し、そのうえで人形と真正面から戦ってこれを破壊した。
 囮の役目は果たせなかったものの、脱出の際に完全に破壊されていなかった人形に襲われたときに助けてくれたことを勘案し、草十郎を見逃すことにした。しかしそこに有珠が現れ、青子が殺さないならと草十郎にフォークを放つ。しかし青子がそのフォークをあくまで弾くつもりであったのだが破壊してしまい、有珠と戦うことになる。
 草十郎とともに有珠が使用した月の油の領域から脱出を試みるが、その領域の果て、外界との境界はスナーク化された領域のマナを使ったうえで青子が身動きできなくなるほどの全力を出さなければ破壊できないほど厳重に隔てられていた。そこで二人がともに生還することを諦め、自分の意地を通すために全力で境界を破壊し、草十郎だけを生還させると決めた。しかし『青子が好きだから一緒に逃げよう』という草十郎の説得により、この捨て身の方法を撤回した。その時に月の油の正体を草十郎から教えられたが、それを叩くには50メートルほど遠すぎるため、草十郎に一時的に恐怖心を消す暗示をかけたうえで自分の髪を一房与え、高いところからそれを投げろと指示する。
 大詠唱による直流数紋の魔弾を月の油に放つが、直前に気付かれて巨大な氷塊によって防がれ、交流数紋に切り替える。それでも押し切られそうになった時に魔法を使うよう促す赤い影を感じるが、そもそも魔法の有効な利用法が思いつかなかったこともありその誘惑を跳ね除ける。そして使える魔力量自体は同等なのに競り負けたのは単純に魔力の吸引と砲身の規模、つまり青子という出力装置そのものに差があったと分析し、魔力を吸引する術式と魔力を加工して青子に注入する術式の二つを最大展開して対抗。収斂投射で氷塊ごと撃ち抜いて勝利した。
 指一本動かせないほど疲弊したところで月の油の最後の反撃を受けそうになるが、人形が忍び寄っていたことに気付いた草十郎に救われる。そして『一日だけ見逃す』という約束を撤回して命を狙わないと宣言。その時に鳶丸から伝えられた『草十郎は青子のことが好き』という言葉を意識して『あなたが私に惚れていても期待しないで』と言うが、草十郎が抱いているのは恋愛感情としての『好き』ではなかったため拍子抜けし、草十郎をぶん殴って気絶させた。その後、気絶した草十郎に礼を言い、収納の小瓶を使って閉じ込めた。
 その後草十郎を久遠寺邸に運び、彼が眠っている間に有珠と話し合って、草十郎の扱いについては本人が決めるまで保留にすると合意している。この際にガンドとスクラッチ・ダンプティの呪いを解呪しているが、青子単独では解呪できなかった。青子と有珠が合意した『保留』という草十郎の扱いは、草十郎の生殺与奪権を青子と有珠が握ったうえで、青子が忘却のルーンを習得するまで久遠寺邸で同居・監視下に置くというもの。つまり命を取るかわりに記憶を消して口封じをするということ。
 この同居における草十郎の自由に関する匙加減は有珠に任されている。この同居生活を始めてから草十郎のことを『静希君』ではなく『草十郎』と呼ぶようになった。また同居を始めるに当たり草十郎に魔術師についての簡単なレクチャーをしている。以後、有珠から草十郎を守るという必要に迫られて草十郎と一緒に登下校したり、徹夜で試験勉強をしたりと交流が増えてかなり打ち解ける。しかし、いずれ記憶を消すのだから楽しい記憶だったら困るという彼女なりの思いやりから草十郎を酷使することがよくある。
 12月半ば頃に草十郎に飲ませる錠剤を作るのが面倒だからと冗談半分で緊箍児と同様の効果を持つ白い首輪を草十郎に贈った。
 カーモネーギー事件では草十郎が『ほんものの光』に入会して悪徳商法の片棒を担いでいると思い込み、鳶丸と芳助、金鹿、美濃、青山、山城、その他応援団20人程、さらに周瀬唯架を動員して『ほんものの光』を潰し、被害者の会から謝礼を貰った。その謝礼は有珠が先走って注文した出前の支払いに充てられた。この武勇伝はその日のうちに尾鰭がついて近所に広まっている。
 12月22日に草十郎に有珠と二人でチュラーミニ水族館に行くよう仕向けられたときは素直にそれに従い、楽しんだ。帰りの地下鉄駅で人形に襲撃された際はキッツィーランドの雪辱戦とばかりに戦うつもりだったが、機嫌を損ねた有珠が濃霧の怪物を使って人形を破壊した。その残骸が17世紀以降に作られた新しいもので、内部術式が三咲町の結界と酷似していることから、人形を繰り出して三咲町を襲っている敵が蒼崎橙子であると断定した。
 12月24日を決戦の日と見定め、有珠からプロイキッシャーを一体借り受けて最高の魔力提供を誇る陶川の支点を守りに赴いたがルゥ・ベオウルフに敗北し、その事実だけを報せる電話を久遠寺邸に入れ、合田教会に保護された。この時シックス・スィング・チョコレイトのおかげで失血死は免れたが、まず首を折られて全身を噛まれ、右の腿が無くなるほどの重傷を負った。
 完膚なきまでの敗北で結界も橙子の手に落ちたが、25日の朝に目を覚ますと結界の所有権の書き換えが終わるまでに再戦を期す。その時の草十郎との会話でルゥ=ベオウルフの住処が三咲高校の旧校舎であることを知る。その際の戦術は有珠がルゥ=ベオウルフを引き付け、その間に鏡のバックアップを受けた青子が橙子を奇襲する算段だった。しかし橙子が先に姿を現したため正面から四小節の魔弾を撃ち、それを凌がれたため敗北を悟り、有珠を逃がすため犠牲になることを選んだ。ルゥが先に有珠を襲ったため格闘戦を仕掛けるが、右足を潰され胸に強烈な拳打を受けて重傷を負った。
 旧校舎に駆け付けた草十郎がルゥを打倒したが、直後に草十郎が橙子に殺害され、これまで拒んでいた魔法の行使を決意。草十郎を5分間巻き戻して死を回避させ、同時に草十郎から幼年期の時間を10年分借り受けて自分に上乗せした。これによって10年分の経験を上乗せした27歳の赤い髪の青子になって橙子と戦う。27歳の青子は魔術の発動ではなく魔術回路の起動だけで強い音が聞こえるほどになり、魔弾は発動さえ目視できない速度で20発叩き込み、ルーンが意味を持つ前に言葉の力だけで打ち消し、橙子の工房である旧校舎をトラップごとたやすく破壊するほど。その力で橙子を圧倒し、殺そうとするが、駆け付けた草十郎に止められた。
 そのため橙子を殺さず、祖父に突き出す事もせず、魔術協会に届けを出すこともしないが、かわりに三崎市に入ったらマダガスカルガエルになる呪いをかけて放逐した。この呪いは返そう(解除しよう)にもかけた本人である『27歳の青子』がまだいないため、10年は返しようがない。
 なお草十郎の死の直前の5分間を無かった事にするためにそのためのエネルギーを未来から持ってきたので、この行動によって宇宙の熱的死(滅び)を助長することになった。これについての解決策については全く考えていないが、自分が何とかすると宣言している。また魔法を使った際に根源に触れたのだが、それについては全然分からなかったと発言している。
 1988年の大晦日は両親に呼ばれたことと祖父から草十郎を連れて来いと命じられたことから、草十郎と一緒に二年ぶりの実家に帰った。この時は祖父によって草十郎と自分の記憶が消されるものと考えており、そのためもあって草十郎から過去の山での暮らしについて聞いた。しかし祖父は記憶を消すのは青子の役目だとして草十郎の記憶を消さなかった。その後、忘却のルーンについて記載されている魔導書が久遠寺邸の図書室に隠されているのを見つけたものの、それを再び棚の上に隠したため草十郎の記憶を消すつもりはないと思われる。
 1989年の学園祭ではなぜか酔って上機嫌になり、バニーガールの格好をした。その時に撮られた写真は久万梨金鹿がパスケースに入れて携帯している。
 1989年秋に久遠寺邸で土桔由里彦の誕生会を行った際には、あまりにも酷い死に方をした橙子の死体を自室で発見したため、それが身内の恥だと感じて死体を隠していた。しかしそれを周瀬律架に見つけられたためスイーツハーツの有力候補と看做されて地下室に幽閉されることになった。しかし朝までに『やっぱりっていうな』という血文字を遺して死亡した。
 蒼崎の後継者になってからはトランク一つで西へ東への根無し草人生。遠野志貴と出会ったのは偶然。持ち歩いている大きなトランクには大した物は入っておらず、パスポートとヘッドフォン、伸びきったカセットと一昔前のウォークマンくらいのもの。
 遠野志貴に(橙子からかっぱらって作った)魔眼殺しを与えた。またそのときの『奇怪な眼を持っていても心まで奇怪になることはない』という教えが志貴の人格を形作ったともいえる。そのため彼女は志貴の恩師的存在であり、志貴は『先生』という呼称を彼女にしか使わない。
 幻影の夏の際には遠野秋葉から謝礼をもらっている。オシリスの砂による幻影の夏の再演の際には謝礼をもらうことができず、弱小組織の下請けで路銀を稼ぐことになるが、その依頼とは南米のアリマゴ島での封印指定の探索である。
 TYPE-MOON Fes.では高校生時代の状態で間接的に登場する。久遠寺有珠とともにロスト・ロビン・ロンドの計画を察知し、アーチャーに解決を依頼した。最終的にアルクェイド・ブリュンスタッドによって放り投げられたハッピーロビンのぬいぐるみストラップを魔弾で爆破処分した。
 2014年の数年前に時計塔を訪れた際には封印指定執行部を損壊させている。
 2014年にフラロウスから『私は既に命を断った。私は殺されるだろうから、後処理に来てほしい』という不可解な手紙を受け取り、夏にフラロウスを訪ねてレフ・ウヴァルと会った。以後はフラロウスが誰かに殺されないよう見張っていたが、冬にレフとライノール・グシオンが争ったためフラロウスは死亡してしまう。その後、フラロウスの葬儀の際に橙子と再会し、フラロウスの死の真相を推理したあと二人で食事に向かった。


蒼崎橙子(人名/魔術師)
 8月8日生まれ。身長165cm。体重52kg。(身長・体重は魔法使いの夜当時のもの)
 蒼崎青子の4歳年上(魔法使いの夜の発表前は2歳年上の設定だった)の姉。青子との関係は最悪。蒼崎が生んだ天才。空の境界の当時(1999年ごろ)は二十代後半の卓越した人形師で専攻魔術はルーン。魔術の師はイノライ・バリュエレータ・アトロホルム。
 工房・伽藍の堂のオーナー。礼園女学院のOG。黒桐鮮花の師匠。スピード狂。クールに見えて実は怒りっぽく、我慢をしない人。新しもの好きで興味があるものをいじりまわしてはしゃいだりする。その昔、美少年を囲っていたらしい。本気の恋慕はしたことがない。ただ三咲町にいた頃には一人、わりと本気の候補がいたらしい。愛煙家で、煙草は一日一箱くらい吸う。英国に建っていた頃の久遠寺邸を訪れたことがある。
 魔術師としての階位は冠位。魔術協会では創造科を含む複数の学科を渡り歩いたが、特定の派閥に所属する事はなかった。魔術協会ではルーン魔術の再生(共通ルーン24文字の魔術的再生と原初のルーン数文字の解析)と人体模造の概念の再生を成し遂げた。魔術協会への入学後数年で封印指定を受けたが、それは双貌塔イゼルマの事件(2003年)の数年前に秘儀裁示局・天文台カリオンの大事変に伴って解除されている。本人は『青』の称号が欲しかったが、魔術協会から『赤』(どんな『赤』かはわからない。少なくとも原色の赤ではない)の称号を与えられている。『傷んだ赤色』と呼ばれることを嫌い、そう呼んだ者は学院時代から例外なくブチ殺している。なおweb公開版では『傷んだ赤色』に『スカー・レッド』とルビが振られている。
 魔術師というよりは研究者で、戦いに向いた人間ではない。合理的でむごたらしい仕打ちができるくせに他人への思いやりを持ち、残酷なくせに冷酷ではない。魔術師にしては珍しく電子機器を使う事に躊躇いがない。これは彼女に言わせれば外付けの端末で用が足りるならその処理に使っていた魔術回路を別の用途に回すことができ、今まであった機能を捨てる代わりに新しい能力を獲得するという事。
 魔術系統はルーン、人体工学、建築魔術全般。魔術回路の質はEX、量はB+、編成は正常。魔術回路の数は平均的な20ほどだが、精密さで他を圧倒する美しいもの。生まれ持った魔眼、世界の機微を感じ取る五感、自らの特異性を削ることなく摂理に適合する知性と非の打ち所のない才能の塊。平均的な量でしかなかった魔術回路以外の才能で優れた魔術師となった。魔術師としての能力はトップランク。他の魔術師のように現代社会に寄り添う必要はない、と純粋培養で育てられた『魔法使いの卵』だった。
 橙子の左目は生まれ持った行動を封じる魅了の魔眼で、発動すると瞳が青いカメラの絞りの様になる。この魔眼は後天的に魔眼の中に魔眼を作り、内部を合せ鏡にすることでその効果を無限に高めている。この魔眼の発動は一度目を閉じてから開くだけでよい。視力は非常に良かったが、祖父のもとで修行している間に低下している。
 生まれる前から『100年に一度の逸材である』という祝福を受けるほどの才能にあふれた天才。しかし天才であってもその才能は蒼崎の後継者には不要なものだったため青子に後継者の座を奪われ、愛用していた眼鏡を壊して出奔した。この当時は長髪だったが、ルゥ・ベオウルフとの契約に使ったため三咲町に戻った時はショートヘアにしていた。
 ルーン魔術を専攻していたが、その腕前はさほど強くはなく、空の境界の時点での単純な戦闘力は黒桐鮮花に劣る。彼女の本領は人形造りとちょっとした生体改造である。『魔術師が最強である必要はなく、最強のものを作り出せばよい』という理論に基づき、戦闘は彼女が作り上げた使い魔に任せている。その使い魔はオレンジ色の鞄の幻灯機械によって生み出される影の猫と、匣じみた大きな鞄の黒い怪物。なおその理論はアトラスの錬金術師とまったく同じものである。1988年末に三咲町を訪れた時に着用していたコートは防護のルーンをかけた魔術礼装。
 二小節以上の魔術を習得できず、一工程のルーンのみを使う。蒼崎の魔術刻印は譲られなかったが、自分を殺しに来た多くの魔術師から魔術刻印を引き剥がして奪い、中空に固定することで使用している。この魔術刻印は通常のそれと比べて魔術の起動までの手順が一つ増えるが、その家系の魔術師でなければ使用できない魔術刻印をノーリスクで使用できるという極めて有用なものである。なおその魔術刻印の持ち主が死亡すると起動できなくなるため、持ち主である魔術師は生かされている。
 多くの魔術特許を持ち、1988年当時の月収は1万ポンドを超えていた。箒を使った飛行の推進方法のアンカーアトラクションアセンションを立案している。これには著作権が設定されており、トーコトラベルと通称される。
 人体を通して根源の渦に到達するための研究過程で自分とまったく同じものを作り上げ、『まったく同じならば自分ではなくても問題ない』という考えからそのとき生きている橙子が死ぬとストックされていた橙子にスウィッチする。そうして目覚めた橙子は、目的を達成してから自分をもとにして人形を作り再び眠りに就く。
 起動中の人形から次の人形への移行は一眠りして目覚めるくらいスムーズ。前作の人形が壊れた経緯の引継ぎについては距離に関係しており、近ければ近いほどその経緯を引き継ぐが、遠くなるとその分の記憶のブランクができる。起動した人形はまず自分の人形を作ってから活動を始めるが、小川マンションでコルネリウス・アルバに殺された後はこのルールを破って即座にアルバを殺しに行った。なお、橙子人形は世界各地に保管されている。
 眼鏡をかける→はずす、で性格を意図的にスウィッチする。眼鏡をかけたときは主観的で人情家。眼鏡をかけていないときは客観的で酷薄。どちらが作為的でない蒼崎橙子なのかはもはや本人にもよくわからないらしいが、どちらにしても根はロマンチスト。なお、眼鏡をかけている時の温和な人格の方が本来のものである。
 自分の名前が嫌いなのに必ずオレンジ色の装飾品を一つ身につける習性がある。同人版、新書版では胸は小ぶりだったが、文庫版及び劇場版では『女性らしい胸』になっている。
 本業は人形の製作だが、建築なども手がける。依頼を受けることはせずに直接依頼人に売り込み、全額前金で受け取ってから製作を開始する。ただし、『できればよい』という人なので資材調達などの細かな仕事はしない。製作した人形を売ることは基本的にないようだが、橙子が無一文になって「あー、ビール飲みてぇー」という気分になったら二束三文で売り払ってしまうこともある。
 医療、建築、ビジネス、物知り系の様々な資格を持っているが、『証拠に成り下がった資格はただの紙切れ』という考えから捏造したものらしい。
 愛車はモーリス・マイナー1000、アストンマーティン、ハーレー・ダビッドソン、200ccのバイクなど。観布子市にあった伽藍の堂の地下ガレージには四輪が4台、二輪が2台、レシプロ機が1機置いてあった。
 パチンコが得意で、蒼崎家を出奔する前も社木駅前のパチンコ店の馴染みだった。食事に対するこだわりはない。エンターテイメントのすべてが詰まっているとしてホラーを好む。音楽の趣味はプログレ派を自称しているが、スイーツハーツでの死に様を見れば実は演歌を好むと思われる。兄弟子である文柄詠梨は初恋の相手であったが1988年当時には激しく敵視しており、互いに手の内を知り尽くしている。
 戦闘には利益を求める性格のため、対立した魔術師であっても彼らが有益な素材を提供するならば命までは奪わない。むしろ無理やり命を助けさえするため、ロンドンの橙子の工房には術式提供者用・慰安施設なるものができてしまった。
 遠野志貴の魔眼殺しはもともとこの人のものであり、青子に強奪されて志貴用に作り直された。お気に入りの魔眼殺しを強奪された腹いせに、青子名義で魔術協会から金を引き出して買い物にいそしんでいる。こんなことをしたら居所がばれてしまうが、自己保身より青子への嫌がらせのほうが優先順位が高いらしい。それ以前に昔から青子の持ち物を奪っては破壊するのが趣味だった。
 魔法使いの夜発表以前の設定では、彼女は7歳で自ら蒼崎の後継者となることを選び、魔法使いの後継者として両親と妹とは離れて山奥にある祖父の工房で育てられ、そのため18歳まで学校に行ったことがないとされていた。旧設定では青子とはちょくちょく会っていたが、基本的には世間知らずの天才少女だった。それでも世捨て人のようなところはなく、有り余る魔術の才能、祖父の許で暮らしているという条件でありながら落ち着きのあるいい姉だった。
 魔法使いの夜で改められた設定では蒼崎邸と祖父の工房は隣接しているため、普通に家で育てられ、学校にも通っている。14歳まで2年間を英国のとある学院に留学しており、帰国してからは地元の礼園女学院に進学して3年間を過ごす。
 蒼崎の魔法を受け継ぐため、大魔術の起動に偏った教育、修練を積んでいた。本人としてはそういった世界を動かすものではなく、もっと細やかな世界に残るものを作り上げることが好きなのだが、それは我慢していた。特別な子供である橙子から見ても怪物である祖父を怖れながらも尊敬しており、反面、一般人として気ままに生きている青子には複雑な姉妹愛を持っていた。なお祖父の期待に応えようとするあまり視力が落ち始めていたが、せっかくの魔眼も魔法に比べれば取るに足らぬものであるため視力の低下は秘密にしていた。
 幼時から魔術師の逸材として協会も注目していたが、彼らにとってもやはり魔法使いの跡取りという事実の方が大きかった。齢十歳にして多くの名門魔術師たちが訪れ、これを当然のように受け流した橙子の姿に、「ついに本物が現れた」とますます将来を期待された。だがどれほどの風説が流れても、近い将来に同胞となるであろう他の『魔法使い』たちは一人として彼女の前に現れることはなかった。この意味を薄々感付きながらも、決定的な答えが突きつけられる時まで『周囲が望む天才』であり続けた。
 礼園女学院在学時は明朗活発、成績優秀、難事件をさらっと解決しアメリカンジョークもさらっとこなす寄宿舎の三大スターの一人として楽しく女子高生をやっていた。その頃はウインクでハリケーンが起き、ネクストサークルに立つだけでピッチャーが失禁し、全盛期には寝起きに眼鏡をかけただけで関西にいる磨伸映一郎が死亡することもあった。
 その後、青子が中学校を卒業した日(旧設定では青子が16歳になった日)に突如青子が後継者となることになった。蒼崎の遺産を妹に横取りされたショックで師である祖父を殺し、修行時代に知り合った魔術師たちを頼って魔術協会に鞍替えした。人為的な二重人格者になったのはこの頃である。
 魔術協会では多くの負債を抱える代償を支払って時計塔に所属したが、わずか二年で負債を返済。魔術協会では失われた原初のルーンを復元・分生させている。これはルーン石と呼ばれ、刻まれたルーンを一千万規模にまで膨張させる水晶の膜である。協会では専用の使い魔を持っていた。その後20代でマスタークラスになった。
 魔術協会への入学から数年後、封印指定を受けるとすぐさま工房を引き払って協会から行方をくらました。彼女はまったく同じもの(人体)を作る最高位の人形遣いであるが、それは魔術が全盛を誇った中世において下された『人間を超える人型は造れても、決して人間と同じモノは作れない』という絶対の法則を覆すもの。封印指定の理由はその『まったく同じ人体を作る』という事である。
 荒耶宗蓮とは師を同じくした学徒であり、同郷ゆえに気が合ったという事ではなく、志が似ていたために意見交換をするようになったという関係。コルネリウス・アルバともそれなりに親交はあったらしい。
 1986年に北欧の人狼一族からルゥ・ベオウルフを洞から出す権利を高額で買い取り、それまで長かった髪を使って『魔法の相手をさせる』という条件でベオと契約を結んだ。1987年頃からベオを連れて世界を巡る旅に出た。その旅で巡ったのは北欧の魔眼収集列車、北海の巨大古代種、バミューダの帰らずの海、西欧諸国の神代同盟など。これらをあるいは倒し、あるいは交渉したらしい。1987年頃の旅で魔眼蒐集列車と出会った際には魔眼オークションを台無しにしている。1988年には既に後年と同じように『鞄』を用いている。
 1988年11月の終わりから、青子から物質的なものも精神的なものも、あらゆる権利を奪って踏みにじる事を目的として三咲町に攻撃を仕掛けていた。この襲撃に先立ち、祖父を『城』で郵便ポスト程度の大きさの領域に封じ込めている。襲撃は外部の魔術師を装ったもので、蒼崎の魔術師であるためか、結界の構造の死角を突いたためか、侵入者に対する警報の結界にかかることなく、時間をかけて土地の力を利用する結界の五つの支点を壊していった。また何度か人形を送り込んで青子と有珠と戦わせてもいた。この侵攻に際して、時計塔で得た三年間の成果を協会に売り渡している。
 この侵攻に備えて私立三咲高等学校の第一校舎を仮の工房として改造したのだが、この改造のためにコンテナ三台分の資材をヘリコプターを使って空輸したため軍資金が尽きてしまった。なお工房に一日一個ずつ侵入者用のトラップを仕掛けることを日課にしていた。
 ヘリのチャーターなどで軍資金が尽きたため、社木駅前のパチンコ店でフィーバーした。静希草十郎はこれを見て、夜中に公園で人を焼き殺した(実際は人形を魔術で焼いた)青子だと勘違いして逃げだした。
 12月22日、草十郎が一人で留守番をしていた時に眼鏡をかけた優しい人格で久遠寺邸に青子を訪ね、不在と知ると上り込んで草十郎に紅茶を淹れさせて歓談した。この時は二人の帰路に30体の人形を置き、自分が久遠寺邸にいる間の足止めをしていた。1時間ほど草十郎と話して彼を気に入り、眼鏡が壊れて冷淡な人格になっても直感では草十郎をさっさと殺すべきだと感じていながらも命を助けたうえ、自分の物になれと誘いまでした。しかしそれを断られたため、草十郎も青子の物だと認識し、青子のセーブルのティーカップを持ったまま久遠寺邸を去った。
 12月24日に社木の公園で久遠寺有珠と戦う。この時は予め公園の地表に夥しい数の太陽のルーンを形状記憶ルーンとして刻んで有珠の魔術を封じたが、ロスト・ロビン・ロンドの身代わりと橋の巨人によって打ち負かされた。しかしルゥ・ベオウルフに橋の巨人を打倒させ、有珠に致命傷を与えしめた。狙いは青子だけであるため命までは取らなかったが、傷の復元も住んでおらず歩くこともままならない有珠に魔力を流せば体内で暴発する特製のナナカマドの毒を飲ませた上で無数の野犬が集まった公園に放置した。その後、有珠が久遠寺邸に電話をかけた数分後に久遠寺邸に電話をかけ、草十郎にもうすぐで有珠が野犬に食い殺されると教えた。
 それとほぼ同時に陶川の青子もベオを使って散々に痛めつけ、ついに五つの支点の全てを破壊した。橙子の目的は霊脈の奥にあるものなので、そもそも結界を張り直すつもりはなかった。
 青子との再戦では二小節以上の魔術を使えない橙子には防ぎようがない四小節の大魔術を受けるが、他の魔術師から引き剥がした魔術刻印を使ってそれを凌ぎ切った。その後、ルゥに青子と有珠を襲わせるが駆け付けた草十郎によってルゥが打倒されたため、ルーン魔術で草十郎の肉体を切断して殺害。改めて青子との戦闘を開始し、これに全力を振り向けるために祖父を幽閉していた結界を解除した。魔法を使った青子に対して勝利のルーンで障壁を組むも、魔弾であっさりと打ち破られ、工房である旧校舎に逃げ込んだ。トラップやルーン石を片っ端から使用して逃走するも、青子の魔弾に打ち砕かれて満身創痍の重傷を負った。本来ならば殺されるはずであったが、草十郎が青子を止めたため殺されず、しかも祖父に突き出されも魔術協会への届けも出されないが代わりに三崎市に入ったらマダガスカルガエルになる呪いをかけられて放逐された。この呪いは返そう(解除しよう)にもかけた本人である『27歳の青子』がまだいないため、10年は返しようがなかった。なお、この戦いの後で『魔法の相手をさせる』という条件を違えてしまったという理由で、自分からルゥとの契約を絶った。その後、呪いをかけられた肉体を捨てることで呪いをクリアしている。
 青子との戦いの最中に状況を冷静に分析し、第五魔法の正体を知った。
 戦いの後は草十郎と連絡を取っており、通常の電話回線ではなく魔術線を使った通話をしていた。その時に名乗っていたのは『ガランノドー(伽藍の堂)出張店』。1989年3月にその回線を使って草十郎から青子の恋愛について訊ねられ、青子は初恋の人に手ひどく裏切られたために恋愛を嫌っていると教えた。
 1989年秋の久遠寺邸での誕生会に招待され、訪れている。騒動が始まる前に久万梨金鹿にヒントを与えるが、青子の部屋で黄金のマイクを持ち一升瓶を抱えた至福の表情で死亡する。これを見つけた青子は死に様があまりにも酷く、身内の恥だと感じて橙子の死体を隠していた。
 1995年9月頃は日本中で居心地のいいアジトを探していた。
 1997年に旅先でちょっとした猟奇事件に巻き込まれたときに鮮花と出会い、正体がばれてしまった。
 黒桐鮮花が叔父の家にいた頃には既に面識があった。というのも、鮮花がまだ叔父の家で暮らしていたときにおかしな事件があり、それを解決したのが橙子で巻き込まれつつも協力したのが鮮花。しかしその兄である幹也が工房・伽藍の堂を訪れたときは鮮花の兄であることを知らなかった。
 両儀式にいわば仕事の下請けをさせることがあるが、この際の報酬は一時的にせよ式の殺人衝動を解消できること。しかし実際には式が満足できる報酬を得られていないため、その代わりに義手を強化したり珍しい刃物を与えたりしている。
 黒桐幹也と両儀式の恋路を見守っているのはある意味では暇つぶし。単純に面白がっているのと、式と幹也が迎えているであろう『自分のあり方としての山場』を既に卒業した者として後輩に最低限手を貸しているという状態。そのため殺人考察(後)(1999年2月)で式と幹也が答えを見つけたあと、あっさりと消えている。姿を消した後も、鮮花にはペーパーで課題を出したりその気があるならと弟子を派遣したりする。
 2003年頃に使っていた使い魔はゼンマイと歯車と糸で作った人形だった。これは第四次聖杯戦争で針金で使い魔を作った魔術師(アイリスフィール・フォン・アインツベルン)がいたと聞いたことで作ったものだが、凝り性なため必要最小限のものだけで作る単一機能の使い魔は造っていて楽しくなかった。
 2003年頃の魔術の腕は、その後時計塔で幾らか磨き直したとはいえ魔法使いの夜当時(1988年)と比べればかなり雑なものになっている。これは腕が衰えたのではなく、魔術の根本である執念が薄れたため。ただしルーン文字にルーン文字を創らせるという境地に至っている。
 バリュエレータの分家であるイゼルマ家の食客に近く、宿泊は通常の客人同様に陽の塔であるが、月の塔に工房も用意されている。
 肉体が人形で、その内側に魔物を住まわせているという噂はそれなりに広まっており、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトも知っていた。また既に本当の意味でのオリジナルの橙子は既に存在しないという情報も、より眉唾の噂としてではあるが広まっている。
 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトには「ちょっとした仕事」を受けたことがあると発言しており、これは第四次聖杯戦争中にケイネスの義腕を用立てた事と思われる。なおこの支払いはケイネスからではなく、ウェイバー・ベルベットから受けている。
 バイロン・バリュエレータ・イゼルマの黄金姫と白銀姫のお披露目に参加した。実はそれ以前に黄金姫ディアドラ・バリュエレータ・イゼルマを死亡させてしまったバイロンに依頼され、メイドのカリーナをディアドラの姿に整形する仕事を受けていたのだが、これについてはマイオ・ブリシサン・クライネルスの薬で記憶を消す事も依頼に含まれていたらしく本人は覚えていなかった。カリーナの整形についてはバイロンが用意した素材だけでは満足できる仕上がりにできなかったため、報酬として要求したファヴニールの血を浴びた菩提樹の歯を灰にして使用した。これによりカリーナの出来栄えは素晴らしいものとなり、白銀姫と鏡合わせとなることもあって根源に繋がりかねないほどだった。
 アトラム・ガリアスタの襲撃とスヴィン・グラシュエート及びフラット・エスカルドスの参戦を受け、レジーナに依頼された通りエルメロイ教室の排除に動く。その際にルーン魔術でスヴィンを捕縛し、映写機の猫が打破されたため直接出向いてフラットを倒す。その後、グレイに対しては匣の中身を僅かに見せる事で牽制して霊感をジャックし、昏倒させた。なおこの際にアッドの中身が何であるかを薄々ではあるらしいが察していた。
 ロード・エルメロイU世による一連の事件の推測を聞く席で、マイオが作った記憶阻害薬に混入されていた毒薬が発動させられ、致命的な傷を受ける。それによって以前の反省(空の境界で荒耶宗蓮にやられた事と思われる)から肉体の方に入れていた匣の魔物が発動する。これはカウンターとして縛っているため、手出しをしなければ加害者以外は襲わない。この時に出現した魔物はロード・エルメロイU世の機転により匣を投げ込まれた事で自滅したようだが、それによって橙子の肉体がどうなったかは不明。持っていた煙草については魔物が現れる直前にロード・エルメロイU世に預けられた。
 Fate桜トゥルーエンドで破壊された士郎の肉体になった素体は彼女が過去に作ったもの。魔力の通りが悪い、というのは士郎のほうが彼女よりも魔術回路が多いことが関係していると思われる。
 TYPE-MOON Fes.では会場を木端微塵にするという差出人不明の脅迫状が届いたため、鮮花をFes.に送り出す。この時は工房・伽藍の堂の主、黒桐鮮花の師の姿だったが、青子は高校生の状態だった。
 2014年にフラロウスから『私は既に命を断った。私は殺されるだろうから、後処理に来てほしい』という不可解な手紙を受け取り、秋にフラロウスを訪ねてライノール・グシオンと会った。その際にいずれフラロウスが死ぬことを予測していた。その後、フラロウスの葬儀の際に橙子と再会し、フラロウスの死の真相を推理したあと二人で食事に向かった。なお青子が夏にフラロウスを訪れたのに対し橙子が秋になったのは、おそらく時計塔からの追っ手を振り切って海路でこっそりイギリスに入ったためと思われる。イギリス上陸後はコブラを言い値で購入して乗り回していた。また、この時は長髪のウィッグで変装していた。また、2014年の数年前にフラロウスと会った時には髪は長かったが、2014年にライノールと会った時はまたショートヘアになっていた。


赤岩栄(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号3。
 電話番号00-542-3413。
 住所は観布子本町6-7-12。


アカシック・レコード(概念)
 アカシャの記録。世界の過去、現在、未来が記録されたもの。根源の渦の一部に付加された機能。
 サンスクリット語のアカシャ(現物質・空)から。


赤松克也(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号4。
 電話番号00-367-5757。
 住所は観布子台3-5-6。


昭野(人名:劇場版)
 港啓太の友人。1998年7月21日の夜、工事現場で浅上藤乃によって五体をばらばらに捻じ切られて殺害される。藤乃の5人目の犠牲者。


秋巳大輔(人名)
 あきみ だいすけ。
 三十代前半の男性。黒桐幹也の従兄。末っ子。警視庁捜査一課に所属する刑事。このことから空の境界の舞台が東京都であることがわかる。幹也にはよく警察の捜査状況などを平気で漏らすが、その有能さゆえに免職にはならない。刑事としては優秀だが、警察官としては不向き。縦社会である警察で『結婚相手を決めるのにどーして上の顔色うかがわないといけねえのよ』と言った時点で出世の道は断たれている。
 幹也を気に入っており、歳の離れた気の合う友人のように接する。幹也には事件のことを色々と話し、たまに第三者の意見を聞いている。ささやかな幸福を愛するタイプ。正義感が強いが、その信念に縛られることはない。ちょっとした事件のおりに情報提供者として蒼崎橙子と知り合い、以後叶わぬ恋にかまけている。報われない愛情だって楽しめるオトナな男。
 劇場版で明らかになった蜜柑を剥いては並べていく癖は幹也と同じで、祖父もよくやっていた。


アキラ(用語)
 瀬尾静音が飼っている犬。


悪魔(用語)
 第六架空要素。人間の願いによって生み出され、人間の願いによって呼び出される受動的なモノ。モノの想念が集まってカタチをなした実像幻想。実体化には『人々が創造したカタチ』が必要。真性悪魔ではなく『固体名』になるもののこと。
 結果はどうあれ、人の苦悩を理解し取りのぞこうとするもので、見ようによっては人間の味方。


浅神(家名)
 あさかみ。
 長野県の名家で、超能力者を輩出する一族。浅上藤乃の生家で、藤乃が12歳のとき(1994年ごろか)に破産し、没落。分家に浅上がある。
 住所は長野県諏訪鐘氏不二山通り3-1。


浅上(家名)
 あさがみ。
 浅神の分家。


浅上建設(組織)
 ブロードブリッジを建設したと思われる会社。蒼崎橙子とは多少の付き合いがある。


浅上康蔵(人名)
 あさがみ こうぞう。
 浅上藤乃の義父。浅神の名誉と土地、浅神麻雪欲しさに麻雪と再婚し、二人を引き取った。
 藤乃の死を望み、行方不明になった藤乃の保護あるいは殺害を工房・伽藍の堂に依頼した。


浅上商事(組織:劇場版)
 株式会社浅上商事。
 臙条孝之が昭和56年4月から昭和63年3月までこの営業部に勤務していた。


浅神羽舟(人名)
 あさかみ はねふね。
 浅神麻雪の夫で浅上藤乃の父。
 経済的に成功した両儀とは対照的に閉鎖的で没落寸前にまでなっていた自家に価値を見出せず、異能を後代へ伝えるべきではない、むしろ排除すべきと考えて藤乃の歪曲の能力を封じた。


浅上藤乃(人名)
 浅上建設の令嬢。礼園女学園1年A組。5月20日生まれ。黒桐鮮花のクラスメイト。先天的な超能力者。浅神の血を引き、本家が没落してからは母とともに分家の浅上におさまっている。小学校までは長野県に住んでおり、その頃の苗字は浅神。礼園女学院には高校から編入した。単純な数値比べならば物語中最高の性能を誇る。
 友人である黒桐鮮花とはともに高校から礼園女学院に編入したということがきっかけで仲良くなった。高校からの編入であったため、中学時代の総合体育祭で出会った幹也が鮮花の兄だと知らなかった。
 浅神羽舟と浅神麻雪の娘。麻雪が浅上康蔵と再婚し、浅上家の養女(長女)となる。住所は礼園女学院寄宿舎新碧緑荘108号室。出生地は東京都観布子市久が美原3-3-7。12歳の頃から松幸医院に週に一度定期健診に通っている。
 学歴は長野県諏訪鐘市立佐紀川第二小学校、東京都観布子市立観布子中学校、私立礼園女学院高等部。幼稚園には行っていない。
 穏健で優しく、聡明。言動は思慮深い。服装・容姿は高校生らしい清潔感を感じさせる。節度ある振舞いや生活態度は小中高一貫して教師から高評価を受けており、扱いやすい生徒だったとのこと。病弱なため学校を休むことが少なくないが、協調性が高くクラスメイトとの関係も良好で、トラブルを起こしたことはない。その一方であまり自己主張が強くないことを心配する声もあった。
 学力は高く、成績は常に学年トップクラス。数学や物理などの理系科目を得意としている。苦手科目は特にないが、国語の作文等で『感情表現に乏しい』と評されたことが何度かある。
 『歪曲』の魔眼を持ち、右目は右回転、左目は左回転の回転軸を発生する。この視線を両儀式の直死の眼で視ると、緑と赤の螺旋として捉えられる。歪曲の魔眼は概念や藤乃自身が『これは曲げられない』と認識したものは歪曲することができない。藤乃の曲がらないイメージのものは黒桐幹也。魔術的な知識が全くないため歪曲の魔眼を有効活用できていないが、もしも優秀な先生がいれば大化けする。彼女の能力は超能力であるものの、人為的に手が加えられているために魔術と超能力の間にある。
 6歳(文庫版では4歳)のころにこの能力を抑えるために父親によってインドメタシン等の大量投与がなされ、無痛症になった。感覚が戻ると能力が発現する。無痛症の時はごく普通の倫理観を備えているが、感覚が戻ると能力が発現するためか殺人を嗜好するようになる。
 温和で受身な性格だが、一度たがが外れると自分では止まれない。痛覚がないために、常識を理解していても実感できないでいる。中学生の頃に黒桐幹也に普通に接してもらったことを感謝しており、礼を言うためにわざわざ鮮花に仲介を頼むほど。
 礼園女学園ではめったに外出を許可されないが、定期的な診断のために月に二回の割合で街に出ている。それが事件の原因の一つとなった。
 不良グループにしばしば輪姦されていたが、藤乃が無痛症であることを知らない彼らの一人が面白半分にバットで彼女の背中を強打。結果として背骨にヒビが入り、時折感覚が戻るようになった。偶然にも不良グループのうちの一人が彼女を犯しながらナイフで刺そうとしたときに感覚が戻る。知らず発症していた虫垂炎の痛みを刺されたと勘違いし、その場にいた5人のうち4人を殺害した。その直後に荒耶宗蓮に出会い、背骨のみを治療され、両儀式に対する手駒として利用される。
 事件後半、痛みで思考が麻痺した彼女はしばしば幼年期に戻っている。
 両儀式との戦闘中に式の左腕を歪曲し、最後には千里眼をも発現して歪曲との併用で完成間際だったブロードブリッジを破壊する。ぎりぎりで無痛症に戻ったために式に殺されることはなく、体内の穿孔した虫垂炎だけを殺された。なおブロードブリッジを破壊したあと失明したが、実際には極端に視力が低下しただけで日常生活には順応できている。
 対外的には1998年7月24日のブロードブリッジ崩落事故に巻き込まれて二月ほど入院し、視力も事故の際にほとんど失ったとされている。
 1998年10月、自殺しようとする宮月を歪曲の能力を交えた説得により思いとどまらせている。
 ブロードブリッジ崩落以降、その事故とその直前の連続殺人に関係があるらしいという噂によってちょっとした有名人になっている。


浅上藤乃の主治医(人名)
 本名不明。
 主治医とはいっても医師免許を持たない闇医で、浅神藤乃には薬品の提供をしていただけ。浅神が没落してからは秋田に住んでいる。


浅上麻雪(人名)
 あさがみ まゆき。
 旧姓浅神。浅上藤乃の母。浅神家の没落後、浅上康蔵と再婚。


朝日ロックサービス(組織:劇場版)
 錠前屋。観布子市の街頭モニタにコマーシャルを流している。電話番号は0120-5442-21544。


芦家(人名)
 あしか。
 観布病院の脳外科医。冗談一つ言わない人物。蒼崎橙子の知り合い。


アシッド(用語)
 →LSD。


アストンマーティン(用語:劇場版)
 イギリスの自動車メーカーであり、同社のブランドの名称。正式にはアストンマーチン・ラゴンダである。蒼崎橙子がこのメーカーの乗用車を所有している。
 イギリスは日本と同じく車は左、人は右という交通法であるため本来は右ハンドルなのだが、橙子は別の国で輸出型を購入したため左ハンドルである。蒼崎橙子が所有するもののナンバーは『練馬88 わ 04-17』。


アトラス院(組織)
 アトラス学院、アトラス協会、巨人の穴倉ともいう。
 時計塔、彷徨海と並ぶ魔術協会三大部門の一つである蓄積と計測の院。エジプトのアトラス山脈にある魔術師・錬金術師の協会。中世から主流となった現代錬金術とは異なる、魔術の祖、世界の理を解明する錬金術師の集まり。会長の言語そのものには絶対的命令権があるという。
 三大部門といえば聞こえはいいが、実際は独立した閉鎖的な頭脳集団である。時計塔との交流は希薄になっているが、要請があれば魔術師を含む人材を貸し出すこともある。稀に他協会や聖堂教会からの要請で錬金術師を貸し出すこともある。そのためには過去アトラス院が発行した“契約書”が必要となる。七枚しか発行していないこの契約書を回収することがアトラス院の当面の目的。
 魔術協会の他の部門に比しても徹底した秘密主義のため詳細は不明。紀元前から存在している。アトラス院の唯一の規則は『自己の研究成果は自己にのみ公開する』こと。ほかに絶対というわけではないが『アトラスから出ることは違反』という不文律がある。
 アトラス院に所属するには最低3つの分割思考と高速思考が必要とされる。分割思考は5つで天才といわれ、過去の会長では最高8つという者もいた。まず高速思考と分割思考を体得し、その後に変換式や加速式といった錬金術を修得する。
 アトラスの錬金術師は端的に言えば『技術屋』『兵器鍛造屋』である。かつては未来を予測して誰にでも平等な世界を運営しようとしていたが、はじめに見たものが滅びであり、現在はひたすらに新しいものを研究・開発している。初代の院長が辿り着いてしまった滅びという『終末』を否定するための兵器を造っているが、対抗策を取れば取るほど滅びは凄まじくなるために未来永劫に兵器を作り上げ、廃棄し続けるといわれている。その性格から、魔術師からは武器職人扱いされている。『アトラスの封を解くな。世界を七度滅ぼすぞ』とはプラハの錬金術師の言。世界を救うために作り上げた兵器は、更に惨たらしく星を焼く道具に過ぎなかったわけである。金(ゴールド)を使って兵器を作っているという噂が流れている。
 アトラス院が研究しているのは西洋魔術に傾倒した錬金術(ありがちな物質の変換)とは別物の、『事象の変換』である。万物、物質の流転は共通のテーマだがアトラスの錬金術師はミハイル・ロア・バルダムヨォンを軽視している。同じく錬金術を研究しているプラハ協会とは致命的に仲が悪く、魔術協会の心臓部である時計塔からも煙たがられている。
 ゴドーワード・メイデイこと玄霧皐月も在籍した。


アトラスの名(用語)
 アトラシア。アトラス協会次期会長の称号。
 得る条件はただ1つ、『不可能を可能にする』こと。


阿頼耶識(概念)
 アラヤ識。ヒトの普遍的無意識領域のこと。総てのヒトがこれと繋がっている。
 コレから生じる抑止力を『アラヤの怪物』と呼び、コレは霊長全体への危害が及ぶのを阻止しようとする。たとえ英雄でも霊長全体に有害と判断された場合は抹殺される。間接的に働く場合は特定の人間を強力に後押しする。近代ではジャンヌ・ダルクがアラヤに後押しされたらしい。
 これと契約することで支援を得て人間の規格を外れた力を持つ英雄になることができるが、死後は抑止力として永遠に使役される英霊(守護者)に成ってしまう。


荒耶宗蓮(人名/魔術師)
 あらや そうれん。
 身長183cm。体重90kg。
 外見は四十代後半だが、二百年以上を生きる元台密の僧。魔術師としての能力は穴だらけだが、自己の強さは何者をも凌駕している。苦悩が刻まれた貌と魔術師にあるまじき強靭な肉体が、対峙した者に嘔吐感に似た重圧を与える。左腕(左手という記述もある)に仏舎利を埋め込んでいる。魔術回路は30ほど。長く生きすぎてもはや一つの概念になっている。防御力ならば(おそらくTYPE-MOONのキャラクターのなかで)トップクラス。起源は“静止”。
 魔術師としては平凡だが、結界作りに関しては屈指の冴えを見せる。特殊な才能を持たない彼は、歳月と信念を積み重ねて自己を完成させ、一流の結界師になった。三重の静止の結界を常に『連れて』いる。結界の呼称はそれぞれ『不倶、金剛、蛇蝎、戴天、頂経、王顕』であり、平面と立体に張り巡らされている。その結界の名は『六道境界』。
 かつて時計塔に所属していた。蒼崎橙子とは師を同じくした学徒であり、同郷ゆえに気が合ったという事ではなく、志が似ていたために意見交換をするようになったという関係。
 ヒトの意味を検分するためにヒトの魂を通して根源の渦を目指した。また、何度も運命を繰り返せば変化が起きるかもしれないと思い、小川マンションを一日で生と死のループを繰り返す異界にした。荒耶が求めた根源とは、つまり歴史の終末、人間の価値を記したものである。
 両儀式にぶつけるため、巫条霧絵に二重存在を与え、浅上藤乃の背骨のヒビのみを治療し、白純里緒の起源を覚醒させた。巫条霧絵の治療費を出していたのも荒耶。霧絵は荒耶を父の知り合いだと思っていたが、それは霧絵の医療費を肩代わりし続けるための建前に過ぎない。観布病院に勤務していた頃は多少の社交性があったらしい。勤務セクションは心療内科。
 1996年2月に両儀式に殺されかけた黒桐幹也を助けた。
 何度も自身の身体のスペアを作り、破壊されるたびに交換してきた。最終的には根源に至るハードウェアである両儀式の肉体を奪おうとした。小川マンション(奉納殿六十四層)は本来、そのためのものである。
 最期は小川マンションで両儀式の肉体を奪おうとしたが、式に殺された。
 かつては人を救わんとあちこちの戦場を駆け回っていたが、やがて自分には誰も救えないということに行き当たり、救えないならばせめてその死を明確に記録しようと死の蒐集を始めた。
 ネコカオスとはペンフレンド。AATMではネコカオスにアーネンエルベの店長を任されたが、あまりに料理は下手であったのでキレた両儀式に殺された。


アラヤの怪物(用語)
 阿頼耶識から生じる抑止力。霊長の抑止力。守護者。
 人間という種を存続させるために、その破滅を防ぐ。だが人間は自滅によって滅ぶため、破滅の原因となる場所に呼び出され、その場にいる人間を一人残らず殺すことで人間全体を救う。たとえ英雄でも例外ではない。


アルクェイド・ブリュンスタッド(人名/真祖)
 Arcueid Brunestud。
 12世紀の12月25日生まれ(誕生月日は自称で、12月25日なのは特に意味があってのことではなく、ただの偶然)。血液型不明。身長167cm。体重52s。B88 W55 H85。Eカップ。好きな歌はナーヴ・カッツェの『クレイジードリーム』。
 真祖の姫君。堕ちて魔王となった真祖を狩るために12世紀ごろに生み出された。ほかの真祖と違い、秘密の多い人の手で完全な無から創り出された。長く生き過ぎたために限界以上に吸血衝動が蓄積しているが、血は絶対に吸わない。
 最高の素体であり朱い月を内包するため、堕ちた場合は朱い月の再来になってしまう。故にそれを恐れる真祖たちによって魔王を狩ることのみに運用され、それ以外のことは一切せず(させてもらえず)に、魔王を狩り終えたら記憶を消されて眠りについていた。魔王を狩り終えた後は死徒も狩り出すように命じられた。だが初めての吸血衝動に苦しんでいるところをミハイル・ロア・バルダムヨォンの姦計にかかって知らずに血を飲んでしまい、暴走。細々と生き残っていた真祖たちの大半を消滅させてしまい、固有結界である千年城ブリュンスタッドに自らを封じた。以後、怨敵ロアが転生するたびに城から出てロアを処刑してゆくのみの存在となった。
 元は長髪だったが、アルトルージュとの戦いの折に奪われた。それを取り戻さないかぎり伸びることはない。
 遠野志貴と出会うまでは無意味なことなので言葉を発しなかった(実際は少なくとも幼い頃にゼルレッチと会話している)。また感情を使用しない存在だったが、志貴との出会い(殺害)によってその在り方から大きく外れていく。一度壊された機械が、組み立て直したときに違った機能を持ってしまったようなものである。そのため高貴で白が似合う吸血姫のはずがお気軽お天気吸血姫になる。以後、天真爛漫に街を闊歩するお姫さまと化したが、怖いときはやっぱり怖い。楽観的なようで根は悲観的なので滅多に怒らないのが救いか。
 性格は自由奔放だが器用で、きちんと空気を読める。怖いものは自由にならない『時間』。休日はずっとゴロゴロしている。突発的にわけのわからない行動をするが理屈に弱い。無条件で懐くメレム・ソロモンが苦手。物語はひたすら爆破するアクション物が好き。真祖は死徒狩りをするもの……なのだが、路地裏同盟のシオン・エルトナム・アトラシアや弓塚さつきとは仲がいい。三咲町ではマンションの6階をフロアごと借りてその3号室に住んでいる。普段は親しみのこもった口調だが、千年城ブリュンスタッドにいるときは王族口調になる。
 深層意識に『朱い月』という行動原理があり、ごく稀に表層に現れる。アルクェイドの夢に迷い込んだ志貴が出会ったものや二十七祖との対面で現れたのがそれである。暴走したときのものは単純に彼女自身が暴走しただけなので朱い月とは違う。
 戦闘能力としては出力30%時で平均的なサーヴァント四人分、ネコアルク換算で二匹分。個体面の能力はほぼサーヴァントと同格で、通常時の個体能力はサーヴァント約二体分。蒼崎青子と戦った場合は7:3でアルクェイドに有利だが、青子にやってほしくないことをやられるかもしれないので敬遠している。蒼崎青子の魔弾(TYPE-MOON Fes.でハッピーロビンのぬいぐるみストラップを爆破処分したものよりも威力が高いもの)を見たことがある。オシリスの砂による三咲町の二度目のタタリの際に手合わせするまで蒼崎青子に勝ったことはない。志貴に殺されて破損した状態のアルクェイドはロアの十七番目の転生体でも打倒し得るが、朱い月が現れれば魔術回路をすべて防御に回したところでロアは数秒程しか持たない。
 彼女は星からの無限のバックアップを持つが、同時に星からの絶対命令により相手よりもやや上の出力しか許されない。この『相手』というのは相手の『個体能力』のことである。シンプルイズベストであるためオールラウンダーであり、総じて勝率が高い。
 しかしどうしても苦手な相手は存在する。それは本人の能力はアルクェイドと同格でも武装がとんでもなく多く、用途も多岐にわたる場合などである。例を挙げるならばギルガメッシュ。彼は個体能力ではなく『火力』がサーヴァント五体分以上である。
 ルーンやカバラなどの秘術には抗体耐性ができているためアルクェイドに効果がない。抗体耐性ができていない、つまり経験したことのない魔術は日本の古神道や南米の秘宝くらいのもの。環境破壊系の爆発には弱い。
 月姫、Fate、空の境界、DDDの中で(サーヴァントを除き)最強。なおORTは『単純に実力でいえば』最強とのことなので、様々な特殊能力を含めてのことと思われる。
 長生きだが実質活動時間は1年に満たず、その間に何百という死徒を処罰してきた。魔術協会の人外専門の換金屋がアルクェイドのファンなので純金や貴金属・宝石類を多く持っている。経済観念はしっかりしている。運転免許を持っているかは不明だが、自動車を運転することができる。
 AATMでは出会ったばかりの両儀式を『空の容れ物』だと看破した。
 『狙われたアーネンエルベ』では道に迷ってたまたま出会ったランサーにアーネンエルベまでの道案内を頼み、そのまま店に居座る。そこで粉末状から復活したケータイさんを見てキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグの手によるものだと看破し、ケータイさんと日比乃ひびきに対して『ところで、爺さん元気?』と訊ねている。
 騒動の後、別人のように感情の失せたひびきからケータイさんを渡され、それで何者かと通話する。その通話相手とは800年前、アルクェイドが生まれた頃に会った事があり、『朝も夜もない場所に引きこもっている』『どっちに付く気もない』『天涯孤独を決め込んでいる』『何か大切なものをなくした』『何もかも手に入れた』らしい。また性別は男性であり『最近は破目を外しすぎてバランスを取るのが難しい』『外はつまらないから出たくない』『食料の心配はない』とも言っている。彼がアルクェイドに自分を殺したいか訊ねると、アルクェイドはリスクとリターンがつりあわないから、そこにいる限り見逃してやるが出て来れば最優先で殺すと答えた。これらの事柄と、アルクェイドの『鍵穴洗って待ってなさい』という言葉には現在は南京錠の姿をしている死徒二十七祖の27位、コーバック・アルカトラスとの共通点が見出せる。


アルバ(用語)
 力の単位。10アルバで黒桐鮮花のかかと落とし一発分の破壊力。ネコパンチに換算すると1アルバは3000ネコパンチ。10アルバの破壊力を持つ鮮花のかかと落としはコミケカタログをもぶち抜く。


アンサズ(魔術)
 F。音価はa(ア)。
 ルーン文字の一つ。最大の効用は『知らしめる』ことだが、蒼崎橙子は発火に使用した。


暗示(用語)
 物事の捉え方を逸らすもの。よって本人が嫌がっていることはさせられない。


安藤由子(人名)
 礼園女学院の生徒。巫条ビルからの飛び降り自殺者の一人。
 『自分の未来を殺して永遠に生き続ける』ために宮月に自殺を持ちかけられるが、いつもそれを窘めていた。
 安藤の自殺後、多額の負債を負っていたこと、一家離散、母親が死体で発見されたことが判明する。



  


猪狩満直(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号3。
 電話番号00-542-5918。


伊賀山晶(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号4。
 電話番号00-175-2715。
 住所は新観布子2-(以下不明)。


五十嵐力(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号5。
 電話番号00-138-3498。
 住所は西観布子2-4-4。


いしあたまな石頭(用語)
 両儀式がときおり口にする直感的な表現の一つ。蒼崎橙子曰く、感覚だけで生きている証拠。


石杖カナタ(人名:終末録音)
 映写機が作り出した殺人事件の登場人物。外見年齢は14歳ほど。瀬尾静音が体験した事実を基に脚色を加えて執筆された『終末録音』で言及された人物であり、実在するかは不明。DDDに同名でどんな手段を以てしても殺せないという石杖火鉈がいるが、空の境界とDDDの世界は別個であるため無関係。
 黒桐鮮花らの殺人事件が起きた年の7年前に大量殺人を犯した快楽殺人鬼。死刑判決を下されて刑が執行されたことになっているが、あらゆる手段を以てしても命を絶つことができず、紺野重造が多額の寄付を条件に司法から譲り受けた。その後は夏巳館の0号室に幽閉されていた。
 新種のウイルスに感染して不老不死になっていたという事だが、夏巳館の0号室でウエディングドレスを着て死亡していた。


(人名)
 小川マンションの三階、305号室に住んでいたと記録されているが、架空の人物。


戌神(人名)
 小川マンションの五階、510号室に住んでいた。


犬の銅像がある広場(地名)
 おそらく渋谷駅前のことと思われる。両儀式が住むマンションから徒歩圏内。


猪野朽豊(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号6。
 電話番号00-684-8015。
 住所は音和谷本町1-38-11。


色の階位(用語)
 魔術協会が位階とは別に、特別な存在となった魔術師に与える称号。
 最高位は三原色である赤、青、黄。それに合成色である橙、紫、黒と続き、後になるほどランクが下がる。一色につき一人という決まりはなく、偉大な魔術師や特異な才能を持つ者には色の階位は惜しみなく与えられる。


InndO亭(地名:劇場版)
 観布子市にある飲食店。ステーキとインドカレーの店。



  


ウイジャ盤(用語)
 簡単に言うならば、西洋におけるこっくりさんの道具。語源はフランス語のOuiとドイツ語のja。
 アルファベットと数字、降霊術をはじめるためのHelloと終わらせるためのGoodbye、YesとNoが書かれた文字盤。ブランシェットという道具で文字を指し示すことで霊の言葉を伝えるとされる。


臼井幸太(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の担任教師。


内海泡沫(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号7。
 電話番号00-799-3864。
 住所は北七郷3-23-2。


梅本引越センター(組織:劇場版)
 臙条巴がアルバイトをしていた引越業者。



  


映写機(用語/魔術:終末録音)
 蒼崎橙子が製作し、残して行った映写機。
 見た目はまさしく古いフィルム式の映写機であるが、登場人物の精神を取り込んでその記憶を題材にして物語を作り出す機械。しかし映画である以上90分でその物語は終わりを迎えてしまうため、終末が避けられないのならせめて次の物語を回そうとして、外部から強制的に停止させられない限り物語を作り続けるようになった。この映写機が作り出す物語はその終末に登場人物が知り得る『絶対にかなわない相手』が具象化される。
 なお、この映写機に使われているフィルムは映写される前は何も記録されていないものだが、映写された後はその物語が記録されている。駆動には魔力などではなく、単純な外部電源が用いられている。
 礼園女学院の文化祭に呼ばれて来た両儀式が稼働しているこれとこれに精神を取り込まれた瀬尾静音、黒桐鮮花、浅上藤乃、黄路美沙夜を発見し、停止を試みたができず、フィルムを取り外すという強引な方法で止めた。その後は式が危険だという理由でこれを破壊しようとしたが、自動的に停止するように改造すれば安全だと説得して瀬尾静音が引き取った。
 ただしこの映写機に絡む話をまとめた『終末録音』は、瀬尾静音が体験した事実を基に脚色を加えた作品であるため、厳密な事実であるかは不明。


詠唱(用語・魔術)
 魔術を起動させるための動作。呪文を唱えるだけではなく、身振り手振りといった動作も含まれる。
 詠唱の中でも呪文は特に術者や流派ごとのアレンジの自由度が高く、守るべき法則さえ押さえておけばあとは自分の使いやすいようにアレンジできる。
 一工程(シングルアクション)は指差しや歯鳴らしなどの一動作、または魔力を通すだけの詠唱で、瞬間的に魔術を発動できる。指差しで起動するガンドや視ることで起動する魔眼が含まれる。必要時間は一秒以下。
 一つの事柄を自身の中で固定化する一小節は呪文を用いる詠唱で、どんなに早口で行っても最低一秒はかかる。これを二つ並べると二小節、三つで三小節とどんどん長くなっていき、当然一小節増えるごとに約一秒ずつ時間も延びていく。
 遠坂凛の『Es ist gros, Es ist klein』(身体の軽量化と重力調整)が一小節であり、アイリスフィール・フォン・アインツベルンの『shape ist Leben』(針金使用)が二小節であることから、小節とは文章の長短ではないと思われる。衛宮士郎、アーチャーの詠唱は五小節以上のほとんど瞬間契約に近い長詠唱。
 瞬間契約(テンカウント)瞬間契約は本来ならば何時間もかかる契約を簡易的に成立させるもの。詠唱としては十小節以上を行うことになるため、瞬間契約といっても十秒ほどはかかる。
 魔術を引き出すための最低限の韻を踏んでいれば細部の味付けは術者によって異なり、長く詠唱するほうがより深く自己暗示をかけられるので威力は増大する。
 身体に刻み付けた魔術の性能に差はないが、詠唱でどれだけ自己の中の魔術を引き出すかによって効果に差が出る。
 高速神言はそれ自体が“神言”であるので詠唱の括りにとらわれないが、敢えて適用するなら大規模な魔術を一小節で発動できるうえ、その一小節は一工程と同じかより早い。
 大規模な魔術になると魔術式の起動に儀式や契約が必要となるが、こうなると無数の工程や小節を含むため詠唱としては扱わない。


A嬢(人名:終末録音)
 瀬尾静音が終末録音を執筆するに当たり、時間ギリギリまで手伝ってくれたルームメイト。黒桐鮮花の事と思われる。


エーテル(用語)
 魔術協会において第五架空元素。すべての物質の素。
 四大の要素に溶け合い、形を成す為に必要な媒介とされる。単体ではカタチはなく、しかしこれがなくては魔術が成立しない要素。
 魔術師の属性として扱う場合は『空』である。


エーテル(用語)
 第六架空元素?


エーテル塊(用語)
 水粘土。本来は地水火風のいずれかを成すエーテルが不出来な術者によって四大のいずれにもならず、成りそこないとして実体化したもの。
 どんなに手を加えても、どんなに強い魔力で括っても一日でもとの塊に戻ってしまう材質。とても魔力の通りがいい。
 これにはいかなる使い道もない。ある意味で無を作るようなもの。こう言うと魔法のようだが、エーテル塊はそも第一魔法の――――


英雄(用語)
 偉大な功績をあげた者。
 自らの力のみで英雄になる方法と、世界(阿頼耶識)と契約してその力を借り受けてなる方法がある。前者ならば死後も何者にも囚われることはないが、後者ならば死後、抑止力として行使される英霊になる。前者でも英霊にはなるが、抑止力として行使されることはない。


榎木樹里(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号5。
 電話番号00-401-5970。
 住所は南観布子2-27-6。


榎本(人名)
 小川マンションの五階、507号室に住んでいた。


F嬢(人名:終末録音)
 瀬尾静音が終末録音を執筆するに当たり、校正をしてくれた友人。浅上藤乃の事と思われる。


M先輩(人名:終末録音)
 瀬尾静音が高等部一年生の時にトイレで震えながら執筆していた際に温かい珈琲を差し入れてくれた先輩。黄路美沙夜の事と思われる。


LSD(用語)
 リゼルグ酸ジエチルアミド。非常に強烈な作用を有する半合成の幻覚剤。LSD-25、エル、アシッドなどとも呼ばれる。
 LSDは化学合成されて作られるが、麦角菌やソライロアサガオ、ハワイアン・ベービー・ウッドローズやハワイアン・ウッドローズ等に含まれる麦角アルカロイドからも誘導される。ペーパーアシッド純粋な形態では透明な結晶だが液体で製造することも可能であり、これを様々なものに垂らして使うことができるため、形状は水溶液を染みこませた紙片、錠剤、カプセル、ゼラチン等様々である。
 LSDは人間には無臭、無色、無味。極めて微量で効果を持ち、0.001mgの微量で穏やかな多幸感、抑制の解除、高い感応性が生じ、0.05mgでサイケデリック体験を起こす。作用の強度と深さは0.5mgまで増加するが、これ以上は持続時間が長くなるだけで体験内容に変化は起きない。効用は摂取量だけでなく、摂取経験や、精神状態、周囲の環境により大きく変化する。一般にLSDは感覚や感情、記憶、時間が拡張、変化する体験を引き起こし、効能は摂取量や耐性によって、6〜14時間ほど続く。
 3日の継続使用で速やかに耐性ができ、以前の量ではほとんど効果がなくなる。よって身体依存はないか、あったとしてもごく僅かだとされている。なお人間における致死量は判明していない。
 LSDの使用をやめても、突然LSD影響下で体験された感情や知覚が数秒から数時間蘇ることがある。フラッシュバックと呼ばれるこれは質的にはLSDによるトリップと何ら変わらない。LSD使用者の2割がフラッシュバックを経験し、その内4割がフラッシュバックに恐怖を感じ、3割は多幸感を味わう。
 フラッシュバックは情緒的なストレス状況や自我の働きが変容している時、疲労やマリファナ等による酩酊状態、トリップと似た状況に対峙したときに起きやすい。フラッシュバックの有無や頻度、作用時間は様々であるが、一般的には時間とともに頻度も強さも減少し、数ヶ月も経てば滅多に起きなくなる。
 日本では1970年に麻薬及び向精神薬取締法により麻薬に指定された。


臙条(家名)
 臙条巴が8歳の頃までは静かな住宅地にある公園の隣の野原のさらに隣の平屋建ての家に住んでいた。その家は1998年11月の時点でも取り壊されてはいないが、完全に廃墟と化している。
 小川マンションに引っ越してからは四階の410号室に住んでおり、死後彼らの人形は405号室で死を繰り返していた。


臙条楓(人名)
 臙条孝之の妻で臙条巴の母親。昭和32年4月24日生まれ。
 昭和51年4月に私立礼園女子高等学校普通科を卒業。昭和55年3月に私立礼園女子大学教育学部を卒業。昭和55年4月から昭和56年10月まで株式会社巫条物産広報部に勤務。1998年の時点ではCマーケットで午前と午後のパートタイム労働に就いていた。
 近所や職場に友人はなく、物静かで内気な性格。両親は資産家で、孝之が起こした死亡事故の示談金は楓の両親が支払った。
 名家の出で、実家と縁を切って孝之と結婚した。孝之が死亡事故を起こしてからは収入がなくなったためパートをしていた。
 孝之と巴を殺害し、自殺した。


臙条孝之(人名)
 臙条楓の夫で臙条巴の父親。昭和33年9月13日生まれ。
 昭和52年4月に市立観布子第一高等学校普通科を卒業。昭和56年3月に国立東都大学経済学部を卒業。昭和56年4月から昭和63年3月まで株式会社浅上商事営業部に勤務。以後は転職を重ね、1998年11月の時点では無職。
 平成5年に飲酒運転による死亡事故を起こし、免許取り消しとなる。以後は定職に就かず、転居を繰り返す。これ以外に犯歴はないが、以前の住居では住民とトラブルを起こし、家賃滞納も何度かある。巴が高校に入学してすぐに無免許で自動車事故を起こして一人死亡させる。
 楓に殺害された。


臙条巴(人名)
 えんじょう ともえ。
 臙条孝之と楓の息子。昭和57年7月10日生まれ。荒耶宗蓮が作り上げた異界の住人。小柄で女顔、黙っていれば美少年。攻撃的でこらえ性がなく、喧嘩っ早い。アナログ時計が嫌い。荒耶曰く、起源は『無価値』。
 平成10年3月に観布子市立南部中学校を卒業。同年4月に観布子市立船崎高等学校普通科に入学。同年9月に中退。以後、梅本引越センターでアルバイトをしていた。高校に入学するまでは陸上界では名の通ったスプリンターだった。
 本人は1998年5月頃に殺されており、死を繰り返す人形になっていた。父を殺した母を殺し(ともに人形)、死の螺旋からはずれて、自分が殺人犯だと思い込み荒れていたところで両儀式に出会う。式とおよそ一ヶ月間同居していた。
 女性関係にはドライだが、それは高校生の頃に三ヶ月ほど付き合った際に幻滅したから。式に惚れていたが、それは奉納殿六十四層から逃げ出した彼に荒耶が付け加えた『両儀式に興味を持つ』という刷り込みがもと。好意を持った式と同居していたが、愛しすぎていたがために式に手を出すことはなかった。
 自分が人形だと気付いてから荒耶に立ち向かい、消滅した。


煙龍(用語)
 蒼崎橙子が愛飲する煙草。台湾製の不味いもので、作った会社はすでになく、物好きな職人がダンボール一箱分だけ作ったというもの。工房・伽藍の堂の備品の中で二番目くらいに価値がある。



  


黄路(家名)
 黄路家の子供はみな養子。養子であっても誰よりも黄路の者らしく振舞える心の強さを求め、黄路家は将来有望な子供を養子にしている。


黄路(人名)
 礼園女学院の理事長。旧姓葉山。葉山英雄の兄。黄路家の婿養子であるため、正当な黄路の娘である黄路美沙夜には意見できない。


黄路財閥(用語/組織)
 詳細不明。黄路家が中心となった財閥と思われる。


黄路美沙夜(人名)
 おうじ みさや。
 黄路家の次女。礼園女学院の2年生。前年まで生徒会長を勤めた才女で、非の打ち所のない才女。妖精遣い。意思を持たない使い魔たちを統率する司令塔。錬金術師の特性として分割思考を可能とする。あざとく女の子らしいところが下級生に人気。普段は固いが、その反動かはしゃぐ時はあどけないとさえ言えるくらいかわいらしくはしゃぐ。
 黄路家の正式な養女であるため、シスターや黄路家の婿養子である理事長でさえ彼女に意見することはできない。校則を破る生徒には容赦ないが、規則を守っている生徒にとってはいい先輩。敬虔なクリスチャンで、日曜日の昼ミサには毎回参加している。礼園女学院の英語教師である玄霧皐月を兄だと思い込み、想いを寄せていた。実際に彼女と玄霧が兄妹であるかは不明。
 葉山英雄に1年D組の売春のことを問い詰めた際に暴力を振るわれ、夢中で押しのけた際に葉山が死亡。そのことを玄霧に打ち明けたことで玄霧によって葉山の死亡が行方不明に偽装され、遺体は妖精の材料とされた。自殺した後輩である橘佳織の復讐のために1年D組の生徒全員を自殺させようとした。そのために玄霧皐月に魔術を使えるようにしてもらい(実際は妖精を憑けただけ)、1年D組の生徒と玄霧皐月の記憶を奪った。最終目的は1年D組の全員を自殺させること。1999年1月6日に1年D組の生徒を初等部の旧校舎に集めて火を放つことを計画したが、黒桐鮮花に阻止される。1月11日に玄霧皐月を刺殺した。
 高校在学中は漫画家を目指していたが断念し、『漫画家は諦めるが家を継ぐ前に一つぐらいは作品を残したい』と大学では映研部に所属している。
 劇場版では誰も橘佳織を助けようとしなかった1年D組を橘の記憶ごと消そうと考える。妖精を使って橘に関する記憶を盗み、橘が死んだ旧校舎にD組の生徒たちを集めて殺そうとするが、黒桐鮮花に阻止された。


岡潔美(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号8。
 電話番号00-216-5634。
 住所は観布子2-56-5。


岡小百合(人名:劇場版)
 1995年度の観上高等学園1年E組の生徒。出席番号6。
 電話番号00-542-2554。
 住所は観布子本町3-17-5。


小川マンション(地名)
 茅見浜に建つマンションの中でも高級志向のもの。
 半円形の10階建てのマンションが隣り合っている構造で、東館のロビーだけは蒼崎橙子の設計。建設期間は1996年から1997年、三社のジョイントベンチャーによる施工。駐車場は敷地と地下にそれぞれ40台分、合計80台分のスペースがある。もとは社員寮として建設されたが、途中でオーナーが変わり、一般用に切り替えられた。敷地は下手な小学校のそれよりも広い。一階と二階はリラクゼーション施設だが使用されておらず、住人がいるのは三階から上の階。
 太極図の伽藍。固有結界を持たない荒耶宗蓮が人工的に作り上げた彼の心象世界の具現といえる神殿。結界名、奉納殿六十四層。内部は荒耶の体内に等しく、圧倒的に荒耶が有利であり、この敷地内ならば荒耶は瞬間移動も可能。さらに次元の狭間に繋げることもできる。
 荒耶が死の運命を繰り返させて観察するために作った異界。本来の用途は両儀式をとらえ、その後は世界を含む何者にも知られないようにするための閉じた世界。
 内装は魔術的なものが多用されており、黒桐幹也がそれに反応して吐き気を催した。魔術的な効果以外でもいたるところが歪んでおり、床はところどころ傾斜していて平衡感覚を狂わせ、塗装と照明の使い方で目に負担をかけるなど、作為的に精神異常をきたしやすい構造になっている。
 内部は複雑な構造で心理を惑わせ、本来の住人たちの死体の部屋と人形たちの部屋を入れ替えている。陽に当たる東棟の1〜5号室には住人たちの生活を、陰に当たる西棟の6〜10号室には住人たちの死体を配置してある。
 地下駐車場は外部に開放されておらず、マンションのエレベーターでも降りることはできない。その閉鎖された地下駐車場が工房になっていて、そこに住人たちの脳が置かれていてそれぞれに対応した人形を動かしている。
 荒耶が死亡し、異界が明るみになってからは魔術協会の手で始末された。


(人名)
 1998年8月3日の正午前にアーネンエルベの前で瀬尾静音に絡まれた30代の男性。瀬尾は彼が持っていた大きなボストンバッグが道路工事の現場で通り過ぎるダンプカーの荷台に引っかかり、電柱との間に挟まって死亡するという未来を視たために『そのバッグを持ってるとよくない事になる』と警告したのだが、当然ながら彼は理解せず瀬尾と言い合いになった。その場は黒桐幹也が仲裁に入ったため事故予定現場に向かったが、瀬尾から事情を聞いた幹也がすんでのところで助けたため軽傷で済んだ。
 わりと最低な人。押し売り、詐欺、悪質なキャッチセールスを生業にしている。


音和谷本町(地名:劇場版)
 観布子市の地名。


オリガ博士(人名)
 瓶倉光溜のデビュー作『吸血鬼の涙』の登場人物。蘭学博士。


オレンジの鞄(武装)
 蒼崎橙子の鞄。わりと愛用しているらしい。影の魔物を偽証する幻灯機械。
 鞄として使われることはなく、中は映写機じみた機構で埋まっている。




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