バー蜃気楼(地名)
 湊啓太らのグループが溜まり場にしていた地下のバー。1998年1月に経営難から放棄され、後に不良グループが溜まり場にした。


ハーレー(用語)
 蒼崎橙子のバイク。アメリカ合衆国ウィスコンシン州ミルウォーキーに本部を置くハーレー・ダビッドソンの製品。車体はオレンジ色で、側車が取り付けられている。ナンバーは58-31。


売人(人名)
 ドラッグの密売をしている女性。男装が好き。黒桐幹也は彼女のトラブルを解決したことがある。
 古い二階建てアパートの二階の端の部屋に住んでいるが、その部屋には誰も住んでいないことになっている。


杯門(人名)
 小川マンションの三階、308号室に住んでいた。


バケツリレー殺人事件(用語:終末録音)
 映写機が作り出した同人誌制作の話に登場する、瀬尾静音が執筆した短編小説。
 1999年の礼園女学院の迎賓館が舞台の連続殺人もので、洋館の外はゾンビだらけ、少女Aを少女Bが殺し、少女Bを少女Cが殺し、少女Cを少女Dが殺し……という、まさにバケツリレーのような構造になっている。


(用語・魔術)
 蒼崎橙子が使用する鞄。大きさは人一人を押し込められるくらいで、ほぼ完璧な立方体。
 中には固体としての闇が入っており、荊のような触手を伸ばして対象を捕獲、匣の中に引き込んで何千もの口で咀嚼する。コルネリウス・アルバはこれに咀嚼されて死亡した。
 空の境界の頃は匣の方に魔物を入れていたようだが、2003年頃には魔物自体は橙子の肉体の方に入れており、匣は魔力を通した時にだけあちら側とこちら側を繋ぐ限定機能型の魔術礼装になっていた。そのため、空の境界の頃に使っていたものと双貌塔イゼルマで使っていたものが同一のものかは不明。
 双貌塔イゼルマの事件の頃に使っていたものは、蒼崎橙子の肉体の方から魔物が出現した際にロード・エルメロイU世の機転で魔物の中に放り込まれ、おそらくは失われたと思われる。


発火能力(技能・魔術)
 スポンティニアス・コンバッション。人体発火現象と呼ばれる、原因不明の発火現象。
 黒桐鮮花が得意とする魔術だが、魔術というより超能力に近い。超能力で言うのならパイロキネシス。
 炎で対象を焼くのではなく、対象自体に発火してもらうという攻撃方法。
 人体発火現象には様々な説があるが、鮮花の発火能力は精神高揚により人体に電気を発生させる人体帯電説と、空気中に大量放出された電子を原因とする電磁波説を混ぜ合わせたもの。


花塚坂上(地名:劇場版)
 観布子市あるいはその近くにある地名。礼園女学院の最寄のバス停で、路線の終点と思われる。


パビリオン(地名)
 学人のアパートの近くにあるホテル。値段が高い。


パブ楽園(地名:劇場版)
 観布子市にあるパブ。中国人パブなのか、看板には簡体字で書かれている。


葉山英雄(人名)
 元礼園女学院1年D組の教師。表向きは11月の学生寮の火事の責任を取らされて担任を外され、行方不明になった。だが本当は死亡しており、遺体は黄路美沙夜の妖精の素材になった。
 ヤクザそのもののクズ人間で学園の嫌われ者。高校さえまともに卒業しておらず、教員免許を持っているのかさえ疑わしい。繁華街ではそれなりに有名な遊び人で、多額の借金を負ったために自分の担任クラスの生徒たちに売春をさせていた。学園の理事長である兄に頼み込んで教師として採用されたがまじめに働く気などなく、生徒に手を出すのみならず担任クラスの生徒の(ほぼ)全員を援助交際させて金を稼いでいた。
 1997年2月に礼園女学院の教師に就任し、記録上では1998年12月に住所不定を理由に退職処分にされている。実際には学園一の権力者である黄路美沙夜に問い詰められた際に美沙夜に暴力を振るったが押しのけられた弾みで死亡し、玄霧皐月がそれを行方不明に偽装した。
 学生寮に放火した犯人。


葉山秀雄(人名:劇場版)
 元礼園女学院1年D組の教師。1997年2月に礼園女学院の教師に就任し、1998年11月に失踪。
 ヤクザそのもののクズ人間で学園の嫌われ者。薬物中毒で、校内で薬物中毒の発作を起こしたところを橘佳織に見られたため口封じとして橘にも薬物を投与する。1998年11月に橘が焼身自殺を図ると姿を消した。
 失踪したとされているが実際には学園一の権力者である黄路美沙夜に問い詰められた際に麻薬中毒による心臓発作で死亡し、玄霧皐月がそれを行方不明に偽装した。その後、遺体は黄路美沙夜の妖精の素材になった。


バロール(用語)
 蒼崎橙子が直死の眼の説明の際に出したケルト神話の神。巨人族フォモールの魔神で、光の神ルーの祖父。彼の片目は『その眼で見たものを殺す』という邪眼で、普段は閉じられている。
 最期は『孫に殺される』という予言のとおり、ルーに殺された。



  


飛行(用語)
 文字通り、飛ぶこと。
 夢遊病者ならぬ夢遊飛行者は多いが、常に無意識下でしか症状を表さないためそう問題にはならない。また飛行にしても肉体を伴って飛ぶよりも意識のみが飛ぶことのほうが多い。目が覚めたときには『そんな夢を見た』という認識しか持たない。幼年期はとりわけ浮きやすい。
 巫条ビルから墜落死した八人はいずれも飛行者であり、巫条霧絵によって無意識下での『飛べる』という印象を現実に引き戻されて当然のように飛ぼうとし、当然のように墜落した。
 浮遊や飛空の術式それ自体は極めて単純で、小石を浮遊させるくらいならば見習い魔術師でも可能。しかし対象の質量が増えるごとに魔力消費が桁違いに増えるので、人間並みの質量を浮遊させることは幾つか例外はあるが相当に難しい。意識しての飛行は難しく、ヒト単体ではさらに難しい。蒼崎橙子でさえ箒がなくては飛べず、成功率も三割程度にとどまる。
 女性魔術師が箒に乗るのは魔術基盤:黒魔術の一種で全世界に神秘設定がされており、女性の魔術師が箒を使用すると「地に足がつかなくなる」「大地から追放される」等の魔術特性が発露しやすい。さらに「大地から追放される」効果を高める魔女の軟膏を併用すると引力が六分の一になると言われるが、魔女の軟膏は一種の麻薬であるため、鮮明な意識を保ちながら飛行するのは困難。またこれだけでは単にふわふわ浮くだけで、推進方法は魔術師ごとに異なる。
 推進方法は最大瞬間風速的なジェット飛行法、低燃費でのんびり空を行くエーテルセイル帆船法、目的地に楔を打って魔術アンカーで引っ張ってもらう蒼崎橙子立案のアンカーアトラクションアセンション、通称トーコトラベルがある。女性魔術師の中では新たな推進方法を発表するのがトレンドであるが、トーコトラベルを超える新発明はなされていない。
 ごく短時間の浮遊であれば専用の礼装が存在し、召喚した低級霊でも滑空くらいは可能だが、長距離を確実に飛行するのは現代では至難で、実行するとなると色位レベルの魔術師が自分の土地や魔力確保の条件などをひたすら揃えるくらいは必要となる。なお、トーコトラベルは飛行魔術の中でも反則技である。
 目的のある逃走もこう表現される。


久が美原(地名)
 観布子市の地名。


ピザ煎餅(用語)
 蒼崎姉妹流家庭料理。
 その昔、蒼崎橙子が軽い気持ちでコルネリウス・アルバに作ってあげたことがあり、以来アルバの好物となる。


火蜥蜴の革の手袋(用語)
 黒桐鮮花が使用するもので、蒼崎橙子から譲り受けたもの。火蜥蜴の革で出来たこれは発火させるだけの鮮花の能力を抑制し、増幅する。


ひょうたんなべ(地名:劇場版)
 観布子市にある飲食店。



  


封印指定(用語)
 学問では修得できない魔術、その体質のみが可能にする一代限り、後にも先にも現れないと魔術協会が判断した稀少能力を持つ魔術保有者を貴重品として優遇し、魔術協会の総力をもってその奇跡を永遠に保存するために魔術師のサンプルとして保護する、という令状。秘儀裁示局・天文台カリオンが指定する。
 その実は類稀な才能を持つ魔術師、禁を犯した魔術師を保護の名目のもとに拘束・拿捕し、一生涯幽閉すること。ただし必ずしも封印指定の魔術師を生きて捕らえる必要は無い。なぜならば重要なのは研究成果の結晶たる魔術刻印だからである。時計塔にいれば破格の待遇で何不自由のない生活を保障するというものだが、一つの学部の学生寮街に囲われるため、やはり不自由はある。
 封印指定とは魔術師に与えられる称号でもあり、魔術師にとって最高級の名誉であると同時に厄介事でもある。魔術協会にとって善意で行われるが、選ばれた魔術師からは死刑宣告と同義である。なぜならそれ以上魔術を学べなくなるからであり、大半の者は勅令を退けて逃亡して野に下る。
 逃亡した封印指定の魔術師には二通りあり、完全に消息を断って隠遁し、血族にのみ魔術を伝える隠者と自らの領地に引きこもって全力で魔術を極めようとする賢者に分かれる。前者は才能が埋もれる前に発見・保護せねばならないが危険性はゼロに近く、よほどの才能でなければ追っ手はかからない。後者においてはより才能が研ぎ澄まされ、数年を待たずして魔術協会にとって大きな成果となるだろうが、道徳や正義は存在せず、無関係の人々を犠牲にする。魔術が露呈しない限り後者であっても放置するが、公になった場合には聖堂教会から代行者が派遣され、賢者のみならずその研究成果までも焼却される。よって封印指定の実行者は賢者と代行者を相手にすることになる。
 封印指定の執行者は教会における異端審問員『代行者』と並び称される、魔術協会が誇るいかれた魔術師の役割。執行は大仕事である分、報酬は相当なものである。
 稀代の人形師である蒼崎橙子が封印指定を受けている(なお彼女は魔術が全盛を誇った中世において下された『人間を超える人型は造れても、決して人間と同じモノは作れない』という絶対の法則を覆している)。
 原則的に一度指定されたら解除されることはないが、双貌塔イゼルマの事件(2003年)の数年前に秘儀裁示局・天文台カリオンで起きた大事変により蒼崎橙子を含めた数人の封印指定が解除されている。


フォルテッシモ(魔術:劇場版)
 黒桐鮮花が巨大な妖精を倒したときに使った技。


巫条(家名)
 古い純血種。祈祷、口寄せを専門にする家系だが、本来は呪詛を生業にしていたらしい。巫条の姓も不淨の言代だという。魔術師の家系。
 巫条霧絵が入院してまもなくその両親と弟が事故で死亡し、霧絵が死亡したことで一族が途絶える。


巫条霧絵(人名)
 ふじょう きりえ。
 二重身体者。二十代後半の女性。10年前から病気で観布病院に入院している。なお入院費用は荒耶宗蓮が負担していた。肺の腫瘍が全身に転移していて、まともなのは髪くらい。『明日の朝は生きていますように』と祈りながら眠りに就くほど進行していて、視力もほとんどない。ゆえに病室から出られない。劇場版で明らかにされた死亡時の年齢は27歳。担当医はみな高齢だった。
 病室の窓から外の世界を呪い続け、視力を失った頃に脳内に風景を取り込んだ。それを荒耶宗蓮に見込まれて浮遊する第二の体を与えられる。冥界を見る能力を失明することで開花させてしまった。
 生きたまま空を飛びたいがために黒桐幹也を連れ込もうとした。また二重存在の周りを浮遊している自殺者になった女性たちに気付いて欲しくて『飛べる』と意識させたが、結果は彼女たちが当然のように飛ぼうとして当然のように墜死しただけだった。
 その『飛んでいた』という印象を刷り込むものは暗示の域をこえて洗脳の業にまで達している。が、もとより生きている印象がなかった両儀式には効果がなかった。二重存在である第二の体を式に殺され、その『死』の感触にあこがれてビルからの墜落死を遂げる。
 飛び降り自殺者が7人だったのに霧絵の周囲を浮遊していた者が8人だったのは、巫条ビルの時間の流れが通常とは異なっているために最後の自殺者である霧絵自身が含まれていたからである。
 心は童女なので、世間的に見ると年下趣味になる。


巫条ビル(地名)
 巫条が建てた地上20階建ての高層マンションで高さ70メートル超。全面ガラス張り。玄関はカードチェック式。エレベーターには鏡が備え付けられている。巫条霧絵の二重存在によってこの屋上からの飛び降り自殺が連続した。
 この屋上は『記録だけの時間の経過』が遅く、自殺者の生前の記録が本来の自殺者の死んだ時間に追いついていない。そのため自殺者の幻像が存在する。
 両儀式が浮遊している少女を最初に視たのは七月の初めだが、時間の流れが傾いているためそのときから墜落する八人(霧絵が自殺させた七人に加え、最後に自殺した霧絵自身)が巫条霧絵の二重存在の周囲を浮遊していた。


巫条ビル(地名:劇場版)
 1970年代の高度成長期に観布子市のシンボルタワーとして建設されたビル群。一時はその高さと展望室だけで客を呼んだが、1998年の時点では既に老朽化が進み何年も前から取り壊しが決まっていた。
 この屋上は『記録だけの時間の経過』が遅く、自殺者の生前の記録が本来の自殺者の死んだ時間に追いついていない。そのため自殺者の幻像が存在する。
 両儀式が浮遊している少女を最初に視たのは四月の初めだが、時間の流れが傾いているためそのときから墜落する八人(霧絵が自殺させた七人に加え、最後に自殺した霧絵自身)が巫条霧絵の二重存在の周囲を浮遊していた。


巫条物産(組織:劇場版)
 株式会社巫条物産。
 臙条楓が昭和55年4月から昭和56年10月までこの広報部に勤務していた。


巫条康紀(人名)
 ふじょう やすき。
 劇場版で明らかにされた巫条霧絵の父の名。1998年9月の時点で死亡している。


仏舎利(用語)
 仏陀の骨。あるいはそれに遺灰や棺の灰を含めることもある。持つにふさわしい者が持てば増え、ふさわしくないものが持つと消えるといわれている。
 荒耶が左腕に埋め込んでいた仏舎利には死の線が視えなかったが、これは仏舎利が『生きながら入滅した』覚者の物だったためで、これを殺すには通常の死の概念より何段階も高度な死の線を読み解かねばならない。とはいえ、そんなことをしなくても骨なので焼いてしまえば灰になる。
 ちなみに現在地上にある仏舎利をすべて集めると仏陀が一個小隊くらいできる。


船崎高等学校(組織:劇場版)
 観布子市立船崎高等学校。
 臙条巴が通っていた高校。


プライミッツ・マーダー(死徒・用語)
 死徒二十七祖の1位。星の抑止力であるガイアの怪物。霊長の殺人者。白い獣。アルトルージュの魔犬。ヒトに対する絶対的な殺害権利を持っているために最強の一に数えられる。
 外見は白い魔犬で、アルトルージュ・ブリュンスタッドにのみ従う。死徒ではないが、主であるアルトルージュの真似をして人間の血を吸うようになったので二十七祖に数えられる。


ブラッドチップ(用語)
 起源覚醒者白純里緒の血液で栽培された大麻から作られたクスリ。形状は赤いペーパー(切手)。口腔摂取だが、効果は静脈注射よりも強い。とんでもなく強力で、里緒はこれを服用すると起源が覚醒すると思っていた。だがこれは里緒の妄想でしかなく、実際には単純に麻薬としての成分が強烈なだけ。


古越耕作(人名)
 黒桐家の隣に住んでいた老人。若い頃に家族を亡くして一人きりで暮らしていた。前日のこともよく覚えていないほど痴呆が進んでいたが、優しい人だった。
 子供の頃の黒桐幹也は彼の家によく行っており、幹也にくっついて黒桐鮮花も行っていた。
 ある日病に伏し、そのまま死亡。彼が死んでいるのを見つけたのは、遊びに行った幹也だった。


ブロードブリッジ(地名)
 1999年に完成予定だった全長10kmに及ぶ橋。三日月形の港の両端を繋ぐ形で建設された。ベイブリッジ(同人版、新書版)や観布子大橋(文庫版)と呼ばれていたが、正式名称はブロードブリッジに決定した。
 車道は四車線あり、橋の下には通路がある。内部(道路の下)に水族館や美術館、ショッピングモール、千台単位の駐車場などを内包した、橋なんだかアミューズメントパークなんだかわからない代物。
 1998年7月24日に浅上藤乃によって破壊された。表向きは台風で壊れたことになっており、1999年2月の時点で建設再開の目処は立っていない。



  


ベイブリッジ(地名)
 同人版と新書版におけるブロードブリッジの仮称。


ヘブンズフィール(魔法)
 天の杯。第三魔法。現存する魔法のうちの三番目に位置する黄金の杯。アインツベルンから失われたとされる真の不老不死、魂の物質化のこと。
 過去にいた魂から複製体を作るのではなく、精神体でありながら単体で物質界に干渉できる高次元の存在を作る業。魂そのものを生き物にして生命体として次の段階に向かうもの。



  


(用語/魔術)
 女性魔術師が飛行に使うアイテム。これと魔女の軟膏を併用すると引力が六分の一になると言われる。ただしこれだけでは飛行ではなく浮遊するだけで、推進方法は別途必要になる。


奉納殿六十四層(地名)
 小川マンションの結界名。固有結界を持たない荒耶が人工的に作り上げた彼の心象世界の具現といえる。


保存(用語)
 記憶のシステムの一つ。銘記した情報をとっておく事。



  


マイナー1000(用語)
 蒼崎橙子の愛車。
 ブリティッシュ・モーター・コーポレーションの製品で、ナッフィールド・オーガニゼーションのモーリスブランドのモーリス・マイナーMMを原型とする2/4ドア4座サルーン。他に2ドアオープン及びエステートもあった。マイナーMMのフェイスリフトとエンジンを換装し、948ccを搭載して1956年にマイナー1000となり、以後1971年まで製造された。
 以下に1960年の製品のスペックを列記する。

 エンジン
 種類:ガソリン4サイクル
 冷却方式:水冷
 シリンダー配置:直列
 気筒数:4
 バルブ形式:OHV
 燃料供給装置:キャブレター
 キャブレター数:1
 排気量:1098cc
 最高出力(PS/rpm):49/5100(DIN)
 最大トルク(mKg/rpm):8.3/2500(DIN)
 燃料容量(Ltr):29.5

 駆動方式
 搭載位置:フロント縦置
 駆動方式:FR
 変速機OP:4速MT フロア

 シャシー
 サスペンション(前):独立 ダブルウィッシュボーントーションバー
 サスペンション(後):固定 半楕円リーフ
 ブレーキ(前):ドラム
 ブレーキ(後):ドラム
 ステアリング:ラック&ピニオン
 タイヤ:5.20-14

 ボディ
 構造:モノコック
 ドア数:2
 ボディ形状:セダン
 全長:3760mm
 全幅:1550mm
 全高:1520mm
 ホイールベース:2180mm
 トレッド前後:1280mm/1270mm
 車輌重量:765kg
 乗車定員:4名

 性能
 最高速度:121km/h


魔眼(用語)
 邪視、邪眼とも。
 技術ではなく体質。人間にとって最古の魔術。魔術師が持つ一工程の魔術行使。受動機能である眼球を外界に働きかける能動機能に変えたもの。広義には異能を持つ眼球全般を指すが、狭義の魔眼は炎焼や魅惑といった外部に対する術式投射を行うものであり、未来視や過去視などの感受型のものは除く。
 術者の視界にいる者に問答無用で魔術をかけるものだが、標的にされた対象が魔眼を見返してしまえば効果は飛躍的に増大する。要するに見てはいけないもの、見られるだけで相手の術中に嵌るという魔術特性。その効果と隠匿性から一流の魔術師の証とされる。効果は『魅惑』『暗示』『束縛』『幻惑』『魅了』『強制』『氷結』『屍蝋』『石化』『淨眼』『千里眼』『直死』『契約』『炎焼』『幻覚』『凶運』など様々。
 魔眼は魔術師の肉体に付属した器官でありながらそれ自体が半ば独立した魔術回路、あるいは血筋に関係なく適応できる特殊な魔術刻印と言える。魔眼は単体で魔力を生み出して術式を起動できるので、魔術とは縁のない一般人にも稀に魔眼の使い手が現れる事がある。魔眼は複雑すぎてよほどの魔術師でも十全に使いこなせないことがある。また老齢などで制御が難しくなる事もある。なお魔眼が生み出す魔力は必ずしも魔眼の術式を起動するのに必要充分というわけではないので、特に酷い場合には魔眼が勝手に術式を起動した挙句、魔術師本人の魔術回路からもオドを強引に絞り出す事がある。
 生まれついての魔眼は、親の肉体の特徴を遺伝させる人体改造的な遺伝。自身の目を魔術回路に作り変える技法は魔術刻印に近い。『生まれつき』と『超能力』は明確に違うので、生まれ持った魔眼であっても超能力としての『眼』ではない。魔術師は霊的な手術で認識能力を向上させるが、その場合は『魅惑』『暗示』『束縛』程度の力しか持ちえない。平均的なものは『束縛』。なお魔術師には眼球そのものを猫目石と入れ替える者もいる。
 もう一つは眼球と脳の認識能力が向上することで得られる能力。これは『石化』『直死』など強力な能力で、こういったものは魔術で再現できない生まれついてのもの、つまりヒトという種が阿頼耶識から生み出した“超能力”。こちらは術者が視るだけでいい。またこれら超能力は『〜の眼』と呼ばれる。超能力としての眼には本来見えないものを視る『淨眼』、遠隔視・透視の『千里眼』、吸血鬼が多く持つ『魅了』、モノの死を視る『直死』モノを石に変える『石化』などがある。
 魔眼のランクは色分けができ、通常の魔眼は赤や緑色に光る。強力なものは黄金に輝き、神域の魔眼は宝石の如く虹の如く多彩に偏光するとか。黄金、宝石、虹はノウブルカラー、つまり超能力である。
 『直死』『束縛』『強制』『契約』『炎焼』『幻覚』『凶運』などの他者の運命に介入する強力なものを特例(ノウブルカラー)といい、これの最高位とされるものが『石化の魔眼』である。第五次聖杯戦争におけるライダーのものは最上級の吸血種が持つという『黄金』の上をいく『宝石』。宝石の位階の魔眼は時計塔の君主の何人かが辛うじて保有しているかどうかというほど稀少性が高い。その上に七色が万華鏡の如く混同した『虹』があり、月の王の証であるという。
 強力な吸血鬼の魔眼は眼球を通して他者の脳に自分の意志を叩きつけて完全に思考を掌握するが、死徒の魔眼にそれだけの力はない。『黄金』は強力な吸血種ならば当然のように持っており、『宝石』『虹』を持つ存在も稀少ではあるが現存する。
 ごく簡易なものであれば制作できる造形師がいるが、それも高価であり確実に成功するわけではない。魔眼の複製品は低位の劣化品しか作れないが、宝石の加工は例外で、レーマン家は宝石を用いて魔眼を複製する秘儀を持っている。
 生来の魔眼の中でもとりわけ強力なノウブルカラーの移植は稀少さと移植手術の成功率の低さからバルトメロイやトランベリオでさえ二の足を踏む。通常は摘出するだけでも至難の業とされるが、魔眼蒐集列車においてはノウブルカラーの移植さえ可能である。ただし魔眼蒐集列車でもロダンやレアンドラといったスタッフにも可能なのは移植までであり、摘出は支配人代行のみが行える。
 ノウブルカラーとはその魔術回路の働きが天体運営に近く、先天的で特殊なものであることを表す。なお通常の魔術回路の働きは地殻流動に近い。


魔眼殺し(武装)
 魔眼の力を抑えることのできる魔術品。眼ということもあり大抵は眼鏡として作られる。
 遠野志貴が使っている物は蒼崎橙子の魔眼殺しに蒼崎青子が手を加えて作ったもので、現在はフレームを交換している。
 第五回聖杯戦争におけるライダーことメドゥーサはあまりに強力な『キュベレイ』を抑えるためにひとつの結界(世界)である『自己封印・暗黒神殿』をぶつけている。
 形状は眼鏡だけではなくコンタクトレンズでも可。遠坂凛が試作したライダーのハードコンタクトの素材はブルージュの研磨師に預けてあった癖のあるエメラルドだが、二十四時間で効果がなくなる使い捨て品。


魔術(用語)
 魔力を以って行う秘儀、禁忌の類ではあるが奇跡ではないもののこと。魔を操る術。人為的に神秘・奇跡を再現する行為の総称。常識から乖離した現象だが資金と時間に制約をつけなければ現代の技術で再現可能な神秘を指す。根本は『歪曲』『逆行』。
 もとは魔法で、根源から引いている決められた力。よって、それを知っている人間が増えれば増えるほど力が弱くなる(十のものを一人で使うか二人で使うかの違い)。
 上級の魔術の戦いは概念と概念の戦いであり、どちらが強者かではなくどちらが綻びのない秩序を有しているかの計りあいになる。
 門派ごとに違いはあるが、基本は『術者の体内あるいは外界に満ちた魔力を変換する』機構。魔力を以って『既に世界に定められたルール』を起動、安定させることで自然干渉を起こす術式。各門派が取り仕切る基盤(システム)に従って術者が命令(コマンド)を送り、あらかじめ作られていた機能(プログラム)が実行されるというもので、命令を送るのに必要な電流が魔力。車という『ルール』にガソリンに当たる『魔力』を注ぎ込むことで走らせるようなもの。
 魔術の起動に必要なものはその起動に必要な魔力量とエンジンを回すためのキー(パス、呪文、コード)、そして魔力をエンジンに注ぎ込むための魔術回路の三つ。
 魔術は万能ではなく、等価交換を基本とする。出来る事を起こすのであって出来ない事は起こせないということ。だがその『無』、あり得ない事に挑むことが魔術という学問の本質であり、大魔術、大儀式と呼ばれる大掛かりな魔術は「 」、魔法に至る為の挑戦に他ならない。
 魔術師としての血筋が希薄な魔術師は“すでに形式あるもの”を以って魔力と成す。つまり古くから確立している儀式、供物を使って神秘と接触する。こちらは自身の力では足りないために代価を用意して取引をするという魔術形式で、使用する魔力はマナから借り受けるため術者は儀式を行うだけでいい。
 どちらにしろマナを使う魔術は個人で行う魔術を容易く凌駕する。大自然に干渉するほどの魔術はやはり大自然に満ちるほどの魔力(マナ)でなければ発動できない。
 魔術そのものの性能は決まっていて誰が使用しても変わることはないが、詠唱で(どれだけ深く自己に刻んだ魔術を引き出すかによって)威力が変わる。
 基本的には五大元素魔術で、それに特性を与えることで意味合いを付与していく。単純なものでは五大元素魔術に強化を付与すると、火属性ならば火がより強く燃え、水属性ならばより勢いよく水量を増して流れる。強化は最も単純な例で、もう少し高度な特性になると傍目には属性よりも特性のほうが明白になり、もととなった属性は分かりにくくなる。例えばイリヤスフィール・フォン・アインツベルンが使った視覚の転移は『転移』という特性を付与した魔術だということは分かるがもととなった属性はもはや不明である。
 他者の精神に干渉し、思考の方向性を変える魔術等は物質的な代償は必要としないが、術者の精神をも変えてしまった方向性に引っ張ってしまう。魔術協会では呪術は学問ではないと蔑視されており、中東圏のソレに大きく遅れをとっている。
 完成した魔術を無効化するには式に干渉するか膨大な魔力を以て洗い流すしかない。
 文明が未発達な時代は現代で言う魔術はほぼすべて魔法であり、魔術師のほぼすべてが魔法使いだった。現代では不可能になった神秘が神代においてはさほど難しいものではなかったのは、自転や月との位置関係、星の巡りによる相克が世界にエーテルを満たしていたことと、統一言語と呼ばれる根源の渦を通した言語を使用していたため。
 魔術の採算性のなさは、市販の栄養ドリンクや使い捨てカイロと同等のアイテムを魔術的に作成する場合にはそれらを購入する数十倍のコストがかかるということからも窺える。
 パラメータールールに照らすと、魔法陣や瞬間契約を用いた大魔術がランクAに相当する。


魔術回路(用語)
 マジックサーキット。
 魔術師が体内に持つ擬似神経。魔術を構成する為の二種類の基盤のうち、人間の体内にあるもの。魔術師としての資質。
 幽体と物質を繋げる為の回路。魔力を精製する道具であり、マナを汲み上げて人間に使えるモノにする変換機であり、システムを動かすためのパイプライン。生命力を魔力に変換するための路であり、基盤となる大魔術式につながる路である。通常の魔術回路の働きは地殻流動に近く、ノウブルカラーと呼ばれる魔術回路の働きは天体運営に近い。
 普段は神経として体内に張り巡らされているが、核となるポイントとそのポイント同士を結ぶバイパスとに分けられる。核を結ぶバイパスは脳内のシナプスのようなもので切れたり結ばれたりするが、核は決して変動しない。厳密にはこの核こそが魔術回路と呼べるもの。
 これの運営には生命活動が不可欠であるため、魔術師の体=魔術回路と誤解されがちであるが、稀に術者が生命活動を停止しても自律して回転する魔術回路も存在する。こういった場合は魔術回路を統括する脳を真っ先に破壊するに限る。個人の魔力(オド)を使い切ってもゼロから回復するのは魔術回路が動いているからであり、逆に魔術回路がなければオドは生成されない。
 魔術回路を使用するとヒトである肉体がそれを拒んで苦痛が訪れる。魔術回路の発動によって術者の体温が変化する。衛宮切嗣は研究と鍛錬を重ねてサーマル映像から魔術回路の状態を読み取れるようになっていた。外部からの魔力を弾く働きがある。
 生まれながらに持てる数が決まっており、増えることも減ることもない“内臓”。増やすこと、減らすことは無論できるが内臓に例えている以上、実際の臓器移植と同じことが言える。魔術回路は肉体ではなく魂にあり、魔術回路の移植は精神と体の融合である。
 移植する方法はあるが成功率が低いため行われることは少ない。魔術師同士で魔術回路を移植することで確実な魔力のパスを通すことができる。だがこれは魔術回路を使いながらその回路の数を減らすという不安定なものであり、また使い魔の契約ほど形式化していないため共倒れになる可能性がある。
 減った魔術回路は決して元に戻ることはない。そのため魔術師の家系は自分たちに手を加えて一本でも魔術回路が多い後継ぎを誕生させようとする。それゆえ古い家系の魔術師ほど強力。一般の人間にはほとんどない。
 一度開いてしまえばその後は術者の意思でオンオフの切り替えができるが、そのスイッチになるイメージは最初の“開き”に関係していて、中には性的興奮で開くもの、自傷行為によってのみ開く者もある。


魔術基盤(用語・魔術)
 魔術師の各門派が世界に刻みつけた魔術理論。既に世界に定められたルール。大魔術式。魔術を構成する為の二種類の基盤のうち、世界に刻まれたもの。学問や宗教といった形をとる。
 魔術基盤は地脈にも密接に溶け込んでいるため、その魔術基盤を使う魔術師は地球上のどこでも魔術を行使できる。ただし自身の魔術基盤が刻まれた土地から離れると土地のバックアップが薄くなり、威力は確実に劣化する。
 魔術基盤が個人の口伝や一族の限定継承の場合は上記の土地のバックアップが薄くなることによる弊害はなく、基盤のルールさえ合っていれば地球上のどこであっても基本通りの効果を発揮することができる。
 最も広い基盤を持つ魔術理論が教会による『神の教え』。


魔術協会(用語)
 国籍・ジャンルを問わず、魔術を学ぶ者たちによって作られた(名目上は)自衛団体。往々にして魔術協会の本部であるロンドンの魔術協会(時計塔)のことを指す場合が多い。
 自らを脅かすモノたち(教会、自分たち以外の魔術団体、禁忌に触れる人間を罰する怪異)から身を守るために武力を持ち、魔術の更なる発展(衰退とも言う)のための研究機関を持ち、魔術による犯罪を抑止するための法律を敷く。ただし魔術の研究過程で人間社会の法を犯したとしても処罰せず、それによって魔術の存在が露呈する事態を引き起こす場合にのみ処罰をする。
 また呪術は学問ではないという見地を取っているために、呪術にかけてはイスラム圏のソレに大きく遅れをとっている。大陸の思想魔術とイスラム圏の魔術基盤とは相容れず、互いに不可侵を装っている。
 大きく三大の部門に分かれていて、大英博物館の裏にある『時計塔』と呼ばれるロンドンの魔術協会が本部で、錬金術を研究する『巨人の穴倉』と呼ばれるエジプトのアトラス学院、北欧に根を張る複合協会である『彷徨海』と呼ばれる原協会がある。
 この三大の部門が協力して魔術協会を運営しているというのが建前であるが、実際には時計塔が本部になってから三部門は没交渉気味で、敵対してこそいないが思惑は三者三様である。また日本、中国、中東などにも神秘を扱う組織があるが、思想の違いから表立った交流はない。
 本部はイギリスの首都ロンドンにある『時計塔』。アトラス院と彷徨海は紀元前から存在する。時計塔は他の部門よりも新しく、西暦元年を境に創立されて最新の研究機関として成長を遂げた。
 時計塔の源流は中世ヨーロッパで発足した魔術師の互助会。魔術協会創立者の中には彷徨海やアトラス院を追放されて行き場を失った異端の魔術師が多くいた。神秘が俗世に漏れることを警戒するため秘密主義を貫く。そのため外部への警戒心はもとより、協会内部も猜疑心と策謀の巣と化している。同じ協会に所属する魔術師でも、派閥が違えば相手を殺すことも厭わない。
 策謀渦巻く権力闘争の場で、外部にアピールするための威光は欲されるが、内部で輝きすぎる新参者は疎んじられる。魔術協会を束ねるのは貴族(ロード)たち。
 魔術協会の厄ネタの一位は悪霊ガザミィ、二位が封印指定、三位が封印指定の実行者。
 奇跡は選ばれた聖人のみが学ぶものという聖堂教会とは当然のことながら折り合いが悪く、いままで幾度となく刃を交えてきた。現在は協定が結ばれ、仮初めの平穏を謳っているが、記録に残さないことを前提に現在でも聖堂教会とは殺し合いをしている。聖堂教会にとって最大の敵は吸血種であり、彼らとは時に協力もする。
 教会のように吸血鬼と敵対してはおらず、ある種の協定を結んでいる。
 魔術師だからといって必ずしも所属しなければいけないわけではないが、魔術に関するあらゆるものが揃っているために所属したほうが研究をしやすい。蒼崎橙子のように研究をしてから脱退するものもいる。
 蒼崎青子は時計塔に所属している。
 最高位の術者には色の名を冠した称号(色の位階)を与えており、中でも原色の称号はその時代最高の証である。聖遺物や魔術に関する書物、地脈が歪んだ霊地はほぼすべて魔術協会が制圧している。聖杯戦争の主催。魔術協会には魔術刻印を抜き出して保存しておく技術が存在する。
 秋葉原支部がある。


魔術刻印(用語)
 簡潔に言えば後継者の証。一族の魔術を凝縮した入れ墨みたいなモノ。一族に伝わる魔導書。魔術師の家系が持つ遺産。形になった魔術回路。
 魔力を通すことで形成されるもう一つの魔術回路。術者を補助するために独自に詠唱をする。記されている魔術ならば持ち主が修得していなくても魔力を流すだけ(一工程)で使える。
 ある魔術を極めるとその魔術を“手に取る”ことができるようになる。つまり、扱われる式という領域を超えて自分自身となった魔術をカタチに残せるようになる。それを死ぬ間際に刻印として後継者に譲るのがこれ。つまり固定化(安定化)した神秘を刻印にしたもの。臓器のようなもので、肉親以外には拒否反応が出、分割・写本をしても機能しなくなる。
 魔術回路なのでほんの少し体に刻むだけで人間の肉体から拒否反応が出て凄く痛む。そのため子供の頃から少しずつ移植し、ついでに中身も無理が利くように薬草とか怪しげな骨を砕いたものを飲み続けて耐性を作る。魔術刻印の移植は後継者の第二次性徴が完了するまでに段階的に行われるのが好ましい。魔術協会には魔術刻印を抜き出して保存しておく技術が存在する。
 魔術刻印の移植のためには高度な共感状態になることが必要。そのため、移植する側もされる側も衣服を脱ぐなどして体温を伝えやすくすることで移植の難度を下げることができる。他人に移植した場合には刻印化した魔術は使えなくなるが、魔力の受信装置程度になら作り変えることができる。
 刻印の移植後は違和感があるが、刻印のほうが肉体に擬態していくためしばらくすれば違和感は無くなる。
 成長すれば慣れるが、結局は他人の肉体である。そのためこれを制御するための薬があり、五百年や六百年も続いて血統操作している家系ならばともかく、二百年程度の歴史で族外の血が混じった家系ではこれに頼らざるを得ない。遠坂凛はこの調合を小学生の頃に仕込まれた。なお、味はとんでもなくまずいうえ副作用として体臭が変質する。
 使っていない(魔力を通していない)時は浮かび上がらない。魔術刻印には術者(魔術刻印の後継者)が大怪我などで意識を失ってもその生命を維持しようとする性質がある。


魔術師(用語)
 魔術を用いる者のこと。衛宮士郎曰く、魔術師としての才能は記憶力、適性は再現力。
 魔術を研究することが最優先で、めったに魔術を行使しない。魔術師にとって魔術はあくまでも研究対象であり、そのため研究をしない魔術師のことを魔術使いと呼んで区別することがある。また日常生活で魔術を行使することも少なく、これは日常的に使用するには魔術はコストが高すぎることもあるが何よりも魔術の秘匿のためである。加えて目立つ魔術の使い方をすると魔術協会による粛清の対象となるのである。
 基本的に自己の研究成果は他人に公開せず、死ぬ前に子孫に継承するときだけに開示する。よほどの大家でない限りは一子相伝で、子が複数いた場合は一人を後継者に選んでそのほかの者には魔術師の家系であることすら明かさずにごく普通に育てる。また、他の魔術師の家系に養子に出すこともある。
 基本的には一代ではなれず、血と歴史を積み重ねることで知識と魔力を高めていく。ただし、遺伝的突然変異で魔術師になれる者もいる。代々の魔術の成果である魔術刻印と魔術回路の数は代を重ねるごとに強力になってゆくものであるため、出自によって優劣がおおむね決定されるというのが通説。
 魔術師としての修行は生まれたときから始まり、過酷な鍛錬で耐性をつけていく。修行においては洗脳や肉体改造といった非人道的な手法さえ珍しくはない。そうしないと魔術行使をしたときに死ぬなどの危険があるのである。廃人になってもいいなら限界を軽く超えられる。たとえるなら魔術師はエンジンであり、どんな小さなエンジンでもアクセルを踏み続ければ限界以上のスピードが出るのと同じこと。
 ほとんどの者は根源の渦にたどり着くために研究をしているが、根源には中身が詰まっていないほうが到達できるためにどうしても研究は報われない。蒼崎橙子は人間の肉体を通して、荒耶宗蓮は人間の魂を通して、遠坂永人は無の境地を経て根源の渦にたどり着こうとした。
 女の魔術師にとって髪と髪留めは最後の切り札。また魔術的な力の象徴でもあり、髪を奪われると呪詛の依代として使われることもある。
 研究以外で魔術を行使する(例えば魔術を使用して労働を行い、対価を得る)者は少ないが、薬を作ることを副業にしている者は多い。二世代ほど前ならば鎌倉の文士に混じっていた。金に困った魔術師は魔術協会に魔力の塊である精液を売ることがある。
 宗教においてはどの宗派にも受け入れられないが、無宗教だと吹聴するのは疑惑を呼ぶので目立たないようにしている。が、時折正体を察してしまう霊感や法力の強い宗教者もいる。
 一般人との大きな違いは魔力を生成できること。一般人でも魔力を保持できるが、生成することはできない。なお魔術師にとって己の体内を流れる魔力をイメージするのは大事なことであり、遠坂凛の場合は清流を舞うように泳ぐ魚のイメージ。
 魔術師同士の対立が殺し合いに発展するケースはままあるが、それは純然たる魔術勝負であり、決闘じみた形式で解決される。
 己を神秘と人智の中間に位置する者と信じ、己を脅かすのは神以外には魔術師以外にはいないと疑わない。よって一般的に戦闘においてはひたすら魔術の気配に過敏になり、物理的な攻撃を二次的な脅威として軽視する。『魔術師殺し』衛宮切嗣はそこに付け入り、魔術によらない攻撃で魔術師を殺していた。魔術師は魔術を道具として用いる魔術使いを軽蔑している。
 延命の魔術を用いれば数百、数千年を生きることができる。極論すれば魔術師と死徒は神秘への在り方が同類であり、死徒のほうがより純度が高い。


魔術式(用語/魔術)
 魔術基盤に含まれる、魔術の機能を記したもの。
 魔術の行使とは各門派が取り仕切る基盤(システム)に従って術者が魔術式に命令(コマンド)を送り、あらかじめ作られていた機能(プログラム)が実行されるというもの。そのため、魔術式の数だけ魔術は存在する。


魔女の軟膏(用語/魔術)
 女性魔術師が箒に乗って飛行する際に併用される「大地から追放される」効果を高める薬品。箒とこれを組み合わせることで引力が六分の一になると言われる。ただしこれだけでは単にふわふわ浮くだけで、推進方法は魔術師ごとに異なる。また魔女の軟膏は一種の麻薬であるため、鮮明な意識を保ったまま飛行するのは困難。


マスター・オブ・バベル(用語/俗称)
 統一言語師。
 →玄霧皐月。


松幸医院(地名)
 比較的小さな街の病院。診療内容は外科、内科、消化器系、小児科。
 浅上藤乃が12歳の頃から週に一度、定期健診に通っている。
 住所は東京都観布子市南久が美原1-38-15。


魔法(用語)
 魔術とは違う神秘。魔術師達の最終到達地点。現代の技術ではどうしても再現不可能な神秘、つまり奇跡を指す。その時代で実現不可能な出来事を可能とするのが『魔法』であり、時間と資金をかければ実現できる“結果”は魔術であり魔法とは呼ばれない。発動には根源につながる霊地が必要。
 文明が未熟だった頃は現代における魔術のほとんどが魔法であったが、文明の発展とともに不可能は可能となり、魔法は魔術に価値を落とすにいたった。
 現代における魔法は5つであり魔法使いも5人だが、第一魔法を扱った魔法使いは死亡しているので実際は4人である。人によって5人と4人とに人数が分かれるのは、既に存在しない人間はカウントしないか、死んでいようが消えていようがその痕跡が生きているのなら存命中とカウントするのかの違いである。
 明らかになっている魔法使いは蒼崎青子とキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。残りの二人は姿を眩ましているが、この二人は頻繁に現れてはトラブルを巻き起こして立ち去る迷惑な人物。
 はじめの一つは世界を変え、つぎの二つは多くを認め、受けて三つは未来を示し、繋ぐ四つは姿を隠し、終わりの五つ目はとっくに意義を失っていた、という。また第一魔法と第五魔法がある場所を目指すために必要とされたものであり、第二から第四魔法はその場所に到達したためにできてしまったもの。
 第一魔法が『無の否定』と思われ、第二魔法がキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグの『並行世界の運営』、第三魔法がアインツベルンから失われた『魂の物質化(天の杯)』、第五魔法が蒼崎青子の魔法・青(どんなものかは不明)。他に魔法とされるものは『純粋な空間転移』と『時間旅行』。第一魔法、第二魔法は魔術協会でも一部の人間にしか知らされていない。
 死者の蘇生には『無の否定』『並行世界の運営』『時間旅行』のいずれかが絡む。
 魔法は根源の渦に辿り着いた魔術師に与えられるご褒美のようなもので、術者に魔法を使うだけの肉体性能がなくても根源への路が出来ただけで魔術的にはやりたい放題になる。同じ理論、同じ方法で根源の渦に辿り着いても、一番乗りでなければ魔法には辿り着けない。という事は、逆に言えば魔法使いでなくとも根源に辿り着くことはできる、という事でもある。
 魔術のような汎用性はなく、ただ一つの事しかできないが、誰にも出来ないことを可能とするという時点で魔術世界では万能とされる。
 魔術は人の手による業と星の元に巡る命だが、魔法とは天の外の神の摂理であり、人にも星にも含まれない業である。魔法とは人類の敵そのものであり、故に新たに魔法を宿した者は赤い影に殺されるという。
 科学技術や魔術の進歩によって魔法は単なる技術(あるいは魔術)に堕ちて失われてきた。しかし魔法は減るばかりではなく、魔術師が既存の魔法を継承したり、全く新しい魔法に到達することで数を増やす可能性はある。『みんなを幸せにする』ということは未だ実現されていない魔法の一つで、最後に残るとされている。


魔法・青(用語)
 蒼崎青子が使う第五魔法。30年程度の魔法だが、またとないレアもの。破壊に関するものであること以外不明。


魔法使い(用語・俗称)
 魔術ではない神秘、ありえない事を可能とする人間の俗称。秩序と対峙する域にある者。かつて文明が未熟だった頃は魔術師の大部分が魔法使いだった。しかし文明の発展とともに不可能は可能となり、魔法は魔術として価値を落とすにいたった。
 現代における魔法は5つであり魔法使いも5人だが、第一魔法を扱った魔法使いは死亡しているので実際は4人である。数える人によって5人と4人とに人数が分かれるのは、既に存在しない人間はカウントしないか、死んでいようが消えていようがその痕跡が生きているのなら存命中とカウントするのかの違いである。
 明らかになっている魔法使いは蒼崎青子とキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。残りの二人は姿を眩ましているが、青子とゼルレッチの二人は頻繁に現れてはトラブルを巻き起こして立ち去る迷惑な人物。
 蒼崎青子以外の魔法使いは生き物をやめているらしい。時間を超越していると思われる。かなりの長命を誇るが、不死ではない。


マリファナ(用語)
 ソフトドラッグの一つ。麻のうち有効成分THCを多く含む品種の花、茎、種子、葉などを乾燥し切り刻んで作られる薬。中でも乾燥させたものをマリファナ、大麻樹脂をハシシ、液体大麻をハシシオイルと呼称する。
 マリファナは喫煙や食して用いる。摂取すると感覚の変化(多幸感)が現われる。麻薬とは違い、幻覚やフラッシュバックなどは見られない。
 大麻の葉をリーフ、花穂をバッズ、無受精の雌花の花穂をシンセミアと言う。乾燥大麻は嗜好品としての大麻の最も一般的な加工方法であり、世界で押収された大麻の内79%が乾燥大麻である。バッズのTHC及びカンナビジオール含有率は他の部位に比べて高く、シンセミアにおける含有率は更に高い。市場で流通する乾燥大麻のTHC含有率は大麻の品種改良や栽培技法の確立により年々上昇している。
 乾燥大麻を用いるには煙管状のパイプで喫煙する、紙巻煙草状にして喫煙する、ボング(水パイプ)で煙を水に通して喫煙する、ヴェポライザーで過熱してTHCを多く含む蒸気を吸引するといった方法がある。
 大麻を喫煙した場合は数秒で効果が現れ、2〜3時間程度持続する。経口摂取の場合は1時間程度で効果が現れ、2時間〜一日程度持続する。
 大麻の使用による身体依存はない。定期的な使用による若干の精神依存はあるが、使用を止められなくなるということは稀で、習慣性はコーヒーと同程度。依存症の程度はアルコール、煙草、ヘロインより弱い。禁断症状の内容は食欲減退、不眠、攻撃性亢進、いらいらで、大麻の摂取によりそれらは消える。
 重大な有害作用に関する生物学的影響については殆ど立証されていない。喫煙による肺機能や気管支への影響はありうるが程度は不明で、大麻のみの喫煙者における肺がんの報告は現時点ではないとされる。また大麻の過剰摂取で死亡あるいは廃人になった者はおらず、致死量は無いとされる。LD50の比較では煙草やアルコールよりも毒性は低い。
 ドラッグには気分が高揚するアップ/ハイ系と、逆に落ち着いていくダウン/ストーン系があるが、大麻はセット(使用者の気分)とセッティング(使用する環境)によりどちらにでもなる。


マリファナ(用語)
 白純里緒が荒耶宗蓮から貰った大麻で製造したもの。依存性は無く耐性もつかないが、この毒は体内で分解されず、何十回と使用すれば理性を破壊してしまう。服用後十分前後で効果があらわれ、四時間前後持続する。幻覚性よりも共感覚の方が強い。
 港の貨物倉庫で栽培していた。


魔力(用語)
 魔術師にとってのガソリンのようなもの。魔術を発動させる為の要素。神秘を起こすための燃料。生命力と言い換えてもいい。原初の生命力とも、命そのものともいわれる。風の流れや潮の満ち引きでも微細な魔力の動きがある。魔力の素は生命力で、魔術師は魔術回路を用いて生命力を魔力に変換する。
 世界、自然に満ちる星の息吹たる大魔力、大源(マナ)と魔術師(生物)の体内で作られる小源(オド)がある。両者の質にほとんど差はなく、単純にマナの量がオドの量よりも絶対的に多いというだけである。
 マナは大気に満ちる『その空間』が持つ魔力なので、魔術師であるのなら自由に行使することができるが、その行使量は魔術師のキャパシティ、魔術回路の数に見合ったものである。
 大抵の魔術師はオドを使って魔術を発動するが、歴史が浅い魔術師は古くから確立されている儀式を行い、自然界から汲み上げたマナを使って魔術を行使する。
 基本的に魔術を発動するための燃料だが、魔力そのものが魔術に近い特性を持っている場合に限ってカタチとして残る。
 一般人でも微弱な魔力を持つ者はいるが、魔術回路がなければ魔力の生成はできず、ただ保持するだけにとどまる。よって魔術師は一定以上の魔力を帯びた者のみを魔術師と認める。なお魔術師にとって己の体内を流れる魔力をイメージするのは大事なことであり、遠坂凛の場合は清流を舞うように泳ぐ魚のイメージ。
 魔術師の血液には魔力がよく溶けるため、これを飲むことで魔力の補給をすることも出来る。
 成熟した魔術師一人分の魔力量は25程度。



  


観上高等学園(地名:劇場版)
 学校法人観上学園観上高等学園。
 黒桐幹也や両儀式らが通っていた高校。校訓は『自由』『規律』あと一つは聞き取れない。(協調?)
 私服校。


湊啓太(人名)
 黒桐幹也と学人の後輩。浅上藤乃を輪姦していたグループの一人。いち早く逃げたおかげで殺戮に巻き込まれずにすんだ。が、その後に浅上藤乃につけ狙われて恐慌をきたし、マンションの6階の空き部屋に隠れていた。もともと自分の住居を持っておらず、友人宅を渡り歩いていた。後に学人の依頼を受けた黒桐幹也に保護され、工房・伽藍の堂に匿われた。
 浅上藤乃の騒動のあとも一応は生きているが、ちんこがもげたらしい。


南久が美原(地名)
 観布子市の地名。


南観布子(地名:劇場版)
 観布子市の地名。


南社木市(地名)
 みなみやしろぎし。三咲町の隣町で、ここに蒼崎青子の住んでいた洋館があるらしい。


観布子(地名:劇場版)
 観布子市の地名。


観布子駅(地名:劇場版)
 観布子市にあるJR駅。


観布子大橋(地名)
 みふねおおはし。
 文庫版におけるブロードブリッジの仮称。


観布子北(地名:劇場版)
 観布子市にある信号機の場所。市街地。


観布子坂下(地名:劇場版)
 観布子市の地名。


観布子市(地名)
 みふねし。
 空の境界の舞台となる都市。東京都にある。


観布子消防署(組織:劇場版)
 1999年6月、両儀式が観布子消防署の救急車で病院に搬送された。


観布子台(地名:劇場版)
 観布子市の地名。


観布子第一高等学校(組織:劇場版)
 市立観布子第一高等学校。
 臙条孝之はこの普通科の卒業生。


観布子中学校(地名:劇場版)
 東京都観布子市立観布子中学校。浅上藤乃の母校。
 住所は東京都観布子市観布子2-5-44。


観布子の母(俗称)
 観布子市で辻占いをしている恰幅のいい女性。黒いヴェールで顔を隠し、見せ掛けの水晶玉を置いている。1998年の時点で50代を過ぎており、2010年には70歳に近いとされる。2010年にはほとんど視力を失っている。
 随分と昔から気まぐれで店を出しており、1996年ごろにブームになる。以後はほとんど話題にならなかったが、2010年にも店を出している。誰であれ女の子なら無料で占う。占い師をしているのは、予言の能力など誰かの役に立てるしか使い道がないと思っているから。
 未来を言い当てるのではなく、悲劇を回避させることに長けている。具体的に悲劇を予言し、それを回避する術もまた具体的にアドバイスする。そのためアドバイスに従った場合は悲劇を回避し、アドバイスを守らなかった場合は例外なくその悲劇に直面したという。ということで逆説的に的中率100%ではないかともてはやされたが、本人は不機嫌そうに『未来を当てているわけではない』と言うため、ファンの女の子たちも必要以上に祭り上げることはしなかった。
 彼女の能力は情報処理(未来予測)や行動の積み重ね(未来測定)などとは関係がない、何の情報もなしに相手の未来を当てるいわば純粋な予言者。だが2010年には未来を視る能力を失っており、代わりに過去を視る能力が身についた。
 2010年には両儀家によって辻占いの立ち退きを迫られるが、両儀未那が好意を懐いたため、瓶倉光溜が両儀式を死ぬ気で説得したうえ占い師として盛り立てる破目になる。
 両儀式を一目見ただけで殺人鬼であることや、全身全霊で一人相撲している想い人についてを看破した。1996年1月に真夜中を彷徨う両儀織と出会って占うが、何をしようと死ぬと断言した。しかし『織は消えるが、織の夢は生き続ける』と、織が望む未来を言い当ててもいる。


観布東警察署(地名・組織:劇場版)
 秋巳大輔が勤務する警察署。


観布子本町(地名:劇場版)
 観布子市の地名。


観布病院(地名:劇場版)
 両儀式と巫条霧絵が入院していた病院。救命救急センターが併設されている。


宮口歯科(地名:劇場版)
 観布子市にある歯科医院。


宮月理々栖(人名)
 礼園女学院の生徒。安藤由子の友人。
 『自分の未来を殺して永遠に生き続ける』ために安藤に自殺を持ちかけるが、安藤だけが自殺したことで罪の意識を持ち続け、自殺をしようとする。だが浅上藤乃の歪曲の能力を交えた説得により思いとどまる。


未来視(用語/超能力)
 未来を視る能力。
 基本的に『視る』だけであり、未来からの交信を受けたり、未来を視ることで平行世界にシフトしたりといったものは含まない。また超能力であるため、魔術でいう予見や神託でいう預言とは別物。
 未来予測と未来測定に分類される。とりわけ未来予測が多く、高度なものになると予測内容を映像として脳内に再現するようになる。実際に役に立ちやすいのは未来測定だが、社会にかみ合いやすいのは未来予測。
 未来予測は一般的な人間が処理せずに捨てている膨大な情報を無意識に拾い集め、高度な情報処理の結果として未来を予測しているのであり、決して根拠のない直感などではない。また未来予測によって導き出される未来は確定されたものではなく起こりうる未来であるので、行動如何で変更することができる。原理的には一般の人間がしている演算や想像の延長であるが、その演算量は意識すると人格を毀損するほど膨大であるため、おおよそは無意識下で行われている。場合にもよるが、魔術的には眼球がある種の魔術回路として働く事でこれらの記録や演算をしている。
 何の関係もない人物や場所に関する未来は視ることができず、対象を視認することが必要となる。例えば『AがBに殺される未来』を視る場合にはAとBの双方を視る必要がある。Aのみを見た場合には『誰かに殺される未来』が視え、Bのみを見た場合には『誰かを殺す未来』が視える。
 未来測定の方はより異常で、無数の可能性がある未来からどの未来に行くかを能動的に決めてしまうものである。原理上自分が居合せる場所の未来しか視えないが、一度測定が決定してしまえばその未来は固定されるため、精度は未来予測を大きく上回る。
 瀬尾晶のものは過去視の延長としての未来視。つまり過去を読み取ってそこから未来を予測するというもの。そのためか未来は映像ではなく単語(情報)で理解し、経時劣化も少ない。観測者として視るため、価値観や記憶の混濁もない。ただし自分の意識では発動できない。視える未来は大抵一日先。頻度は平均して月に一度以下。
 瀬尾静音の場合は現在の情報から未来を予測するもの。視える未来は大抵一日後だが、風景としてなら三日後くらいまで視え、風景というよりもイメージがざっと流れる程度のものなら一月後や一年後くらいまで視える。頻度は三日先までの風景なら日に2、3回ほどで、断片的なものは極稀。
 未来が視えるときは前触れがなく、眩暈のあとに風景が切り替わり、未来が客観的に視える。このときは例えばバックミラーに映った風景をバックミラーに映った自分が視ている様な不自然な感覚となる。また未来を視ている時間は、感覚的には10分などまちまちだが概してゆったりと感じるものの、実時間では2秒程度。自分で発動することはできない。
 瓶倉光溜の場合は右目のみで、左目にはその未来を実現するための方法が映し出される。これは未来視の中でも現在の情報から未来を予測する未来予測ではなく自らの意思で未来を確定させる未来測定である。これは未来予測を上回る異能だが、未来に明確なカタチを付与してしまうため死の概念が適用され、直死によって殺し得るものとなる。またこれは数値を埋めて未来を視るものであるため、現場に居合わせることが未来視の条件となる。
 観布子の母の能力は未来予測でも未来測定でもない、神の目とさえ言える稀代の未来視。



  


ムードラ(用語)
 マリファナと他の薬物を同時に使用するドラッグカクテルのこと。



  


(技能)
 見てはいけないもの、見られてはいけないもの。眼球と脳の認識能力が向上することで得られる能力。超能力としての魔眼に似た能力。超能力によって眼球(と脳髄)の視認能力が向上し、本来見えないものが視えるようになる。またその術者に視られただけで術中にはまるもの。
 魔眼は魔術師が霊的な手術で認識能力を向上させるが、その場合は『魅惑』『暗示』『束縛』程度の力しか持ちえない。平均的なものは『束縛』。
 それに似たものだが、より強力な『石化』『直死』『束縛』『強制』『契約』『炎焼』『幻覚』『凶運』などの能力で、こういったものは魔術で再現できない生まれついてのもの、つまり“超能力”。こちらは術者が視るだけでいい。またこれら超能力は『〜の眼』と呼ばれる。
 能力にはいろいろあり、本来見えないものを視る『淨眼』、遠隔視・透視の『千里眼』、吸血鬼が多く持つ『魅了』、モノの死を視る『直死』モノを石に変える『石化』などがある。
 魔眼のランクは色分けができ、通常の魔眼は赤や緑色に光る。強力なものは黄金に輝き、神域の魔眼は宝石の如く虹の如く多彩に偏光するとか。黄金、宝石、虹はノウブルカラー、つまり超能力である。


銘記(用語)
 記憶のシステムの一つ。見た印象を情報として脳に書き込む事。


メカ幹也(用語)
 蒼崎橙子がそのうち造るかもしれないブツ。38の必殺武器を持つ。


メスカリン(用語)
 フェネチルアミン系のサイケデリック麻薬(幻覚剤)。
 硫酸メスカリンとして化学的に合成することも、サボテンの一種であるペヨーテ等の成分として得ることもできる。名称はメスカレロ・アパッチが儀式の際に使用したことに由来する。日本では麻薬及び向精神薬取締法により麻薬に指定されている。
 ヒトにおける効果的な摂取量は200〜400mg で、身体依存はなく、長ければ12時間程度効果が持続する。経口摂取がほとんどで、服用後は異様な精神状態になり、典型的には視覚的幻覚を伴うトリップと呼ばれる状態になる。
 作用は服用前の状態等に左右され、発作的に不機嫌になる、激昂することもある。気分のよい浮遊感や光輝感を得るが、逆にバッドトリップという不安や抑鬱をもたらすこともある。
 アメリカ合衆国では1970年に非合法化され、1971年の向精神薬に関する条約によって国際的に禁止されるようになった。アメリカではネイティブ・アメリカン・チャーチの儀式の際にのみ利用が許可されている。



  


望月(人名)
 小川マンションの四階、404号室に住んでいたと記録されているが、架空の人物。



  


幽霊(用語)
 死後もこの世に姿を残す、卓越した能力者の残留思念。またはその空間の記憶のこと。
 後者は純粋な記録で、魔眼憑きか血縁関係などの近しい者にしか視ることはできない。霊は身体を持たず、霊を傷つけられるのは霊だけ。ただし直死の魔眼はそれを殺しえる。


幽霊(用語)
 昏睡から醒めたばかりの両儀式の肉体を奪おうとした霊。力はかなり弱く、常人には知覚できず、霊能者は自身を殻で守っているために付け入られることもない。だが織が消えてガランドウになった式はその限りではなく、半ば誘惑するようなかたちでその身体に入ろうとした。
 蒼崎橙子が病室に張った霊体の侵入を阻む結界を破るために死体に入って式を殺害しようとしたが、式によって殺された。



  


妖精(用語)
 本来妖精は自然の触角として捉えられる概念で、人に知覚できるものではない。だが人間の想像図を外殻にして生まれてしまう妖精も稀に存在する。自然な妖精は幻想種ではあるが、悪魔などの実像幻想ではなく生物の系統樹に連なる。子鬼や赤帽子がある意味で純粋な妖精。
 本物の妖精は人間にも知覚できるほどの規模になると精霊と呼ばれる。妖精・精霊もその基盤は魔術ではなしえない神秘。
 魔術師が使い魔として作り上げるものもいるが、妖精を使い魔にすると術者が使役されてしまうことが多いので、このケースは滅多にない。いるとしたらそれは一流の術者。
 本物の妖精による子供のすり替えにおいては数年後に子供を親元に戻すが、子供は白痴になっているケースがほとんど。


妖精(用語)
 黄路美沙夜が使役したモノ。森に棲むとされる一般的な妖精のイメージにカタチを作れない下級の霊を憑依させて妖精に偽造したもの。妖精としての外殻を被ったそれらは、元になった妖精の能力の一部を行使できる。素材は葉山英雄の死体。
 手のひらより少し大きな人型をしており、潰すと粘着質ながら肌に張り付かない白い液体になる。普段は霊体であるのか黒桐鮮花は視ることはできなかったが、黄路美沙夜の意思で魔眼憑きでなくとも見られるようにできるようだ。


抑止力(用語)
 現在の世界の延長を目的とする力。集合無意識によって作られた安全装置。
 地球が持つガイア論的なものと霊長が持つアラヤ論的なものがある。
 ガイアの抑止力は人間の世を存続させようとするが、世界が無事ならば人間などどうなってもよいという結論を持つ。ガイアの怪物たるプライミッツ・マーダーがこれにあたる。
 人間全体が生み出すアラヤの抑止力は、星さえも食い潰して人間の世を存続させようとする。こちらはカウンターガーディアンであり、既に発生した事態に対してのみ発動する。世界を滅ぼす要因が発生した瞬間に出現してこの要因を抹消する。
 抑止力自体はカタチのない力の渦で、絶対に勝利できるよう抹消すべき対象を上回るように規模を変えて出現する。大抵は抑止力によって後押しされた『一般人』が滅びの要因を排除し、結果として『英雄』として扱われる。アラヤ側の抑止力によって英雄になった人間は、その死後はアラヤに組み込まれる。
 無意識から生じたものであるために発生しても誰の眼にもとまらず、誰にも意識されることはない。


予見(魔術)
 未来を観測する魔術と思われる。


予言(用語)
 観布子の母の未来視。未来予測でも未来測定でもない、何の情報もなしに相手の未来を当てるもの。


預言(用語)
 未来に関する情報を知る神託と思われる。



  


リーズバイフェ(人名)
 マザー・リーズバイフェ。礼園女学園の院長。
 生粋のクリスチャンで、元気な頃はありあまる信仰心から過激な慈善活動をしていた。院長室にはヴァイオリンを思わせるような盾が飾ってある。


リーダー(人名)
 本名不明。港啓太が属していた不良少年グループのリーダー。
 1998年7月20日、浅上藤乃を犯しているときにバタフライナイフで藤乃を刺そうとしたが、その直前に痛覚が戻った藤乃によって殺害される。


六道境界(用語)
 荒耶宗蓮が常に引き連れている結界のこと。直径4メートルほどの三重の静止の結界で、呼称はそれぞれ『不倶、金剛、蛇蝎、戴天、頂経、王顕』であり、平面と立体に張り巡らされている。


両儀(家名)
 古い純血種の一族。両儀式の実家。ヤクザ。両儀とは『混沌が分かれた陰陽である両儀』と『2つのプログラム(人格)』を意味している。住所は新観布子7-6-3。電話番号00-075-3084。
 高い確率で二重人格者を生み出すが、乖離性同一性障害とは違い、物事の優先順位が逆転した異性の人格が一つずつ存在する。そのために両義の子には同じ発音の二つの名前が用意される。式の場合は女性人格の式と男性人格の織。ただし二重人格者の場合は発狂しやすく、ここ何代かでは式しかまともに育たなかった。
 何代も前に剣の流派を勝手に作っており、家の中に道場がある。跡継ぎはそこで月初めに師範代と真剣で試合をすることが慣わしとなっている。
 両儀の家は堅苦しいが、居心地は悪くない。食事は一人一人に膳が与えられ、皆で一緒に食べることはないらしい。
 軽井沢に別荘があるらしい。
 両儀系列の企業には経理系の人材が枯渇している。
 空の境界の世界の両儀は二重人格者の一族だが、月姫の世界の両儀は退魔の一族。大昔は両儀と七夜の仲は良かった。


両儀要(人名)
 両儀式の兄。Gacktっぽい。
 二重人格者ではなく、そのため両儀の跡取りではない。離れに住んでいる。
 働いていないが、式に大事があった場合には跡継ぎになるのでそれなりに優遇されてはいる。


両儀式(人名)
 2月17日生まれ。身長160cm。体重47kg。
 両儀の家系が作り上げた『根源』に繋がったもの。起源は『虚無』。AATMでセイバーに『ぶっちゃけ神様』と言われているが、本人は否定こそしなかったものの『頭の悪い比喩すんな』と切り捨てた。かなり育ちのいいお嬢様。字がとても巧い。本人の前では口にしないが、黒桐幹也が大好き。それでいてヤンデレ、ツンギレ。冷めた性格で、万事がどうでもいいように振る舞う。不器用で唯我独尊。苗字で呼ばれるのが嫌い。
 凝り性で、面倒臭がりだが一度はじめるととことんやらなければ気が済まない。
 直死の眼の保持者。人を殺せない殺人鬼。殺人の人数に関しては、魔術師はノーカウント。血の匂いに弱く、血を見ているだけで頭がぼうっとする。『両儀式』の中の肯定の人格で、肉体の占有権を持つ。刃物好き。高校時代の黒桐幹也のクラスメイト。男が見ると美女に、女が見ると美男に見える。暑さ寒さに我慢強い。
 大型の敵に飛び付いて倒すという技を得意としている。武器には基本的にナイフを使うが、投擲用の短刀を使うこともある。本来の武装は日本刀で、刀を持つと未来予測などまさに段違いの戦闘能力を発揮する。だがサーヴァントには及ばない。
 剣術の腕前は藤村大河と同じくらい。つまり全日本剣道連盟が定める『日本剣道形』剣道五段相当。ただし得手不得手は別にして刀よりナイフが好き。そのあたりのこだわりがなくなって問答無用で剣士としてのスペックを出すフラットな人格になれば、矛盾螺旋の終盤のようになる。
 刀を持った式はナイフを持った時とは桁違いの戦闘力を誇り、例えるなら矛盾螺旋中盤で式を襲った小川マンションの住人たちがナイフ式、それをばったばったと切り払った式が刀式、という具合。
 料理の腕前は本気を出せば板前顔負けで、人間レベルならばTYPE-MOONキャラの中で最高の腕前を持つ琥珀を上回るが、滅多に本気を出さない。他人が作ったものならば『自分が作ったものではない』ということで大抵の味は許容する。ソフトドリンクの好き嫌いは特にないが、安いもの、飲むのに手間がかかるものは飲まない。ストロベリーアイスは苦手だが(というか冷たい食べ物全般が苦手)、コンビニエンスストアに寄ると必ず購入する。
 もとは式と織の2つの人格があり、生まれながらに一つの身体を他人と共有していたために子供の頃から極度の人間嫌いで、自分すら嫌いだった。織とは会話することはできないが、お互いに何を感じているかはわかる。一方が表に出ている時もう一方は眠っているような状態なので、切り替わったときにそれまで出ていた方の想いを一気に認識する。
 いつも和服(細かなところで手が加えられていて、ハイキックが打てる)を着ていて、黒桐幹也との会話の弾みから寒いときは着物の上に皮製のブルゾンを着ている。だが別にこだわりがあるわけではなく、好きなものを着るだけ。1995年の9月まで洋装を着用したことがなかった。洋服自体は硯木秋隆が用意していたのだが袖を通さず、自ら購入した赤い革のブルゾンを着たのが初めて。
 当たり前だが、式の着物は高級品。種類こそ分からないものの、高級品にしか触れていないので『いい』『わるい』だけは判別がつく。そのため呉服屋で「この生地でお願いします」と言って去った後、秋隆が値段を見て「あちゃー、オレの給料二ヵ月分」みたいなことになる。
 小遣いは月に五万円。それとは別にお金が欲しくなったらそれとなく『買い物したい』オーラを発し、それを察した秋隆が用意する。ちなみに買い物したいオーラとはいつもよりちょっと不機嫌な感じになること。
 彼女の対人感情は動物的で、まず一緒にいていい人間と一緒にいたくない人間とに分かれる。一緒にいていい人間となら嫌いだろうと付き合っているらしく、蒼崎橙子は嫌い、黒桐鮮花は好きというカテゴリらしい。黒桐鮮花のことを面白いやつ、気を遣わなくていいやつと認識しており、女友達として大好き。だが鮮花は式のことが大嫌い。ただし幹也のことを抜きにすれば鮮花も式のことが好き。
 行くなら海より山派。犬は嫌いではないが、犬という分類よりもその性格が重要。『空の境界』を伝奇ではなくポエムと思っている。怖いものは黒桐幹也の無防備さ。物語はミステリ(ただしかなりイロモノ)が好き。土曜日は習い事をしており、日曜日はずっと寝ている。兄の要のことは子供のころはお兄ちゃんと呼んでいたが、現代ではニートと呼んでいる。
 昏睡状態になる前の成績は優秀だった。目覚めた後も高校に通っているが、さぼり癖が出るため先生方の覚えは悪くなる。基本的な性能は高いが、やる気がないので学力は平均点。昏睡前の出席番号は19。昏睡に陥る前、普段は自宅で琴、華、筆、剣、柔、踊、極(これがどんなものかは不明)の習い事一式と、趣味で調理をしていた。実家の二階にある私室は最低でも12畳半の和室(画面に見える限り畳敷き10帖、板張り2帖半)。
 1996年3月5日の深夜に荒耶が仕組んだ交通事故に遭い、以後1998年6月13日まで昏睡状態になり観布病院の446号病室に入院していた。これは黒桐幹也に好意を抱くあまり1996年3月5日には殺しそうになるが、荒耶宗蓮に妨害されたことで自分が消えることを選択したため。その際に織が死亡し、式は二年間死と触れ続けた。その結果、織を失った代償行為として男言葉をしゃべるようになり、直死の眼を得た。
 昏睡から目覚めたときに直死の眼を得ていたことから自分で目を潰そうとし、緑内障の一歩手前まで眼球を圧迫したために一時的に失明。その後しばらくは目のみを包帯で巻いていた。覚醒後に荒耶宗蓮が仕込んだ幽霊に襲われた際に超人的な身体能力を発揮したが、これは幼少から叩き込まれた身体能力と天性の勘(と地獄のリハビリ)による。退院後は蒼崎橙子のアシスタントというか、裏の仕事を請け負っている。
 式が橙子の依頼を受ける場合、一時的にせよ殺人衝動を解消させてくれることが報酬となる。だが大抵は浅上藤乃のように殺す殺さないの関係が終わって白けてしまったり、殺せたと思ったら幽霊だったりで、式が心から満足する報酬は得られていない。よってその代わりとして橙子は義手を強化したり珍しい刃物を与えたりしている。
 昏睡から目覚めたあとは生の実感がなく、人を殺すことで生の実感を得ようと躍起になるが、色々な偶然や善意の妨害で上手くいかなかった。銘記、保存、再生、再認のすべてが正常に機能しているにもかかわらず、昏睡以前の記憶をまるで他人事のように感じている。
 目覚めてからは両儀の屋敷ではなく、アーネンエルベの二駅隣、工房・伽藍の堂の近辺にある四階建てアパートの二階の隅部屋に住んでいる。自分の部屋に鍵をかけるのは眠るときだけで、外出時には泥棒に入られても害がないということで鍵はかけない。というか鍵自体を大家から借りた合鍵もろともに遺失しており、新しく作ってもいない。ちなみにこのアパートのオーナーは式自身。
 部屋の掃除は硯木秋隆がしている。生活費は秋隆が気を利かせて届けている。部屋で着ていたワイシャツが誰のものかは不明。部屋に食べ物のストックはなく、基本的に『ここでなら食べてもいい』と認めた高級な店で外食をしている。昏睡から覚めたあとはもちろん病院食を食べていたが、その頃は食事など気に留められないくらい自己の基盤が揺らいでいた。
 1999年の連続殺人の際には犯人を捜して連夜街を彷徨い、ビルの屋上などで眠っていた。2月11日に白純里緒に捕まって筋弛緩剤などを大量に投与されたが、大量に発汗することで毒素を排出して白純を殺した。
 彼女の直死の眼は遠野志貴のように頭痛を引き起こすことはないが、『点』が視えずに『線』のみで構成される。また、生物以外に死を視ることも困難である。ただし生物の中の患部など、より細かい括りの死を視ることができる。
 概念を切ることが出来ない志貴と違い、彼女は概念を切ることが出来る。これは脳のスペックによるもので、「 」に触れて事象の視覚化に特化した式は『概念』を捉えることに向いているため。だが式とて何でも殺せるわけではなく、本人が『生きている(lifeではなくlive)』と認識するものしか殺せない。例えば壊れた電話を『壊れている=死んでいる』と認識した場合にはその電話を殺すことが出来ない。巫条霧絵の周囲にいた幽霊たちは死んでいるが現世に介入できている時点で『生きている』。そのため、霊体のままのサーヴァントにも死の線は視える。荒耶が埋め込んでいた仏舎利に線が視えなかったのはそれが『生きながら入滅した』覚者の物だったためで、これを殺すには通常の死の概念より何段階も高度な死の線を読み解かねばならない。大雑把な括りだと物質的に朽ちるもの全ての死を理解できる。言葉については『朽ちる』ものではなく『忘れ去られる』ものだと認識しているらしい。
 また彼女は魔眼殺しを使用していないが、それは死を視ない様にコントロールできるわけではなく、単に蒼崎橙子を喜ばせるのが嫌なので橙子が大金を注いで作った魔眼殺しを突き返したからである。そのため彼女は捨て鉢になっている。
 浅上藤乃との戦いで使い物にならなくなった左手を自ら殺し、その後は蒼崎橙子が作った霊体を捉えることができる義手を使用している。
 AATMではあまりに不味い料理にキレて当時店長をしていた荒耶宗蓮たちを殺害。そのため店長を引き継いだのだが、ふざけたメニューを破棄して新たにメニューを作成するなど徹底していた。
 TYPE-MOON Fes.に招待されていたが、参加を拒否した。


両儀織(人名)
 両儀式の中に存在した、失われた男性人格。殺人鬼。血の匂いに弱い。
 肉体の占有権は式にあるため、式が許可しなければ肉体を使えない。式とは価値観が逆転しており、また式に殺され続けたために彼が持つ感情は『殺人』のみ。肯定の式に対する否定の人格。少年のような口調と身振りをする。
 両儀式の破壊衝動を受け持つが、生粋の殺人鬼ではない。むしろ自らの衝動を嫌っていた織は自分から式の裏側に徹していた。だがそれも黒桐幹也の出現によって変わってしまい、荒耶が仕組んだ事故で式の身代わりになって消滅した。
 1995年9月の白純里緒による連続殺人の最中に街を徘徊していたのは織のほうで、1996年3月に事故に遭って彼が失われたため、式はそのときの記憶をなくしている。
 1996年1月に観布子の母と出会い、何をしようと死ぬと断言される。しかし『織は死ぬが、織が見た夢は生き続ける』とも予言されていた。


「両儀式」(人名)
 両儀式の肉体に宿る人格。本来ならば消えてしまうはずだが、両儀家の技術によって人格を形成している。根源につながっているためというよりも根源の渦の一部なので、新たな世界を作ることも可能。
 肯定の式と否定の織の中間。式と織を両儀とするならば、「両儀式」は太極。式と織は互いを知覚できるが、「両儀式」を知覚することは出来ないため、「両儀式」が活動しているときのことを式は記憶していない。
 黒桐幹也が最初に式を見かけたときも「両儀式」であったため、高校の入学式のときに式に声をかけても彼女は幹也を知らなかった。
 平均的な宝具を持つサーヴァントと一対一でなら防衛戦程度の戦闘はできる。認識が人間的ではないので、普段の式が殺し得ないものも殺すことができる。
 月姫、Fate、空の境界、DDDの中で(サーヴァントを除き)アルクェイド・ブリュンスタッドに次いで二番目に強い。なおORTが『単純に実力でいえば』最強とのことなので、様々な特殊能力を含めてのことと思われる。


両儀式の義手(用語)
 両儀式が浅上藤乃との戦いで潰され、自ら殺した左腕の代わりに付けている蒼崎橙子が作った義手。内部にナイフが隠されている。
 モーター駆動で、人体の電気に反応して動く。モーター自体は式と橙子の魔力で動くが、腕一本分自分の電気で動かさないといけないので、式は普通の人に比べ腕一本分だけカロリー消費が多い。なお外見はいかにも人形然としたものだが、魔力が通うと継ぎ目がなくなり、人間と同じ質感になる。
 義手を付け始めた当初は幻肢痛のような痛みに悩まされていた。これは蒼崎橙子曰く、完成度が高い両儀式の肉体が異物に対する拒絶感を感じるため。義手に問題はなく、この痛みを克服するには慣れるしかない。
 劇場版の一回目の巫条霧絵との戦闘ではあっさりと霧絵の妄想に引きずられてしまったが、それは式本人との同調率が低い“まっとうな人間の腕”だったため。その失敗から式っぽさを増したのが橙子が調整していたバージョンU。


両儀式の祖父(人名)
 詳細不明。
 二重人格者で、そのために自らを否定して自己が曖昧になっており、数十年もの間正気を失っていた。晩年の二十年近くは座敷牢に幽閉されており、式が6歳のときに死去。


両儀式の父(人名)
 詳細不明。
 二重人格者ではない。両儀の道場では師範代を務める。無口・強面・厳格だが、人格者。
 複数の会社を多角的に経営し、時には競争相手の企業の相談役にもなり、自宅にフリーランスな構成員を何人も抱え、時には暴力も辞さない昔ながらの名士。つまりヤクザ。美食クラブの会員。


両儀式の母(人名)
 美人。


両儀式のマンション(地名)
 両儀式が住むマンション。式自身がオーナー。
 なお原作ではアパート、劇場版ではマンションと表記されているが、日本においてはどちらも集合住宅の意で用いられるため意味は同じ。原義的にはアパートが集合住宅、マンションが邸宅といった意味。日本ではマンションは高級な集合住宅といったニュアンス。


両儀邸(地名)
 周囲を竹林に囲まれ、屋敷そのものも高い塀で囲まれた広大な武家屋敷。江戸時代に取り残されたような建物だが、門にはインターホンが設置されている。
 あまりに広大なため、歩いているだけではどのくらい広いのか判断することができない。


両儀未那(人名)
 りょうぎ まな。
 両儀式と黒桐幹也の娘。2010年の時点で10歳ほど。瞳は青い。
 2008年に債権者に問い詰められた瓶倉光溜を助け、以後はよく瓶倉の住居に入り浸っている。瓶倉の絵本作品のファンでもある。
 幹也にはこれ以上は倫理的にやばいくらい愛されている。いつか式を倒して幹也を取り戻すのが目標。
 未那と名付けたのは幹也で、『未那』の意味を知っていた式はちょっと渋い顔をしつつもそういうのもアリか、と承諾した。なお幹也としては未那という名に特別な意味を込めたわけではない。


梁関亮也(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号20。
 電話番号00-799-8202。
 住所は北七郷1-21-8。



  


類野典子(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号21。
 電話番号00-075-2281。
 住所は新観布子5-9-7。


ルーン(用語)
 蒼崎橙子やバゼット・フラガ・マクレミッツが使う北欧の魔術系統。固有の意味を持つルーン文字を書くことでその奇跡を実現する。遠隔的にしろ『書く』ことが必要なので戦闘には向かないが、橙子は自身が戦わずに使い魔に任せるので問題はない。
 遠くから文字を重ねるという間接的な魔力の働きは直接魔力を体に張り巡らせている魔術師には通用しないので、魔術師との戦闘の際には文字を直接書き込む必要がある。
 ルーンは文字それぞれにいくつかの固有の意味を持つが、意味の特定は魔術師それぞれである。蒼崎橙子はアンサズを発火に用いたが、アンサズの最大の効用は『知らしめる』こと。他に火系だとサガズとエイワズがポピュラー。
 橙子は魔術協会でコレを専攻する者が少なかったために待遇の面で有利になると考えて学んだ。コルネリウス・アルバは橙子よりも先にコレを専攻していたが、橙子の実力の前に株を奪われてしまった。
 第五次聖杯戦争におけるランサーことクー・フーリンは、白兵戦を好むためにあまり使用しないが原初の十八のルーンを修得している。
 バゼットは秘爪で刻む。


ルーンの守護(魔術)
 蒼崎橙子が両儀式が入院している観布病院446号病室に仕掛けた魔術。
 ルーン石がある限り病院に漂っている雑念・霊体は式の病室に入れないというものだったが、霊体が死体に入ることで回避された。


瑠束康子(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号22。
 電話番号00-950-1534。
 住所は観布子坂下7-5-6。


瑠璃堂(人名)
 1998年度に礼園女学院1年D組に在籍した生徒。嘉島と口論になり、互いにカッターナイフで切りつけあった。



  


礼園女学院(地名)
 黒桐鮮花が通う全寮制の女学園。高等部の住所は東京都八王子市上恩町5487。
 小学校からのエスカレーター制。古くからあるミッションスクールだが、数年前からお嬢様養成学校になっている。浅上藤乃の父はかなりの出資者で、全体の三割を寄付している。修道女を思わせる制服はデザイナーによるものではなく、昔から変わっていないだけ。
 生徒と教職員をあわせた数は800人弱。11月8日は創立記念日で休み。敷地は大学なみの規模があり、初等部から高等部までの校舎や体育館、学生寮などの施設は互いに離れている。高等部の校舎から学生寮までの距離は長いが、上履きのままでも行けるように渡り廊下が設けられている。なお敷地の大半は森であり、学院の中に森があるのではなく森の中に学院があると言ったほうが正しい。
 入学するには本人の成績よりも両親の資産のほうが重要。男性教師は二名のみ。いくら素行が悪くとも、礼園を卒業さえすれば縁談は引く手数多になる。Dクラスは高等部から編入した生徒がほとんどを占めている。
 徹底した管理体制が敷かれており、入学してしまえば余程の特権がない限り両親に会いに行くための外出すら許可されないほど。校則違反によるシスターの呼びつけが三度続くと退学になる。が、義父の寄付金が全体の三割を占める浅上藤乃や、有名なT大学に進学するという前提で入学した進学率稼ぎの黒桐鮮花などは外出などを大目に見てもらっている。
 寄宿舎の起床時間は午前五時。午後六時以降は寄宿舎内の行き来でさえ禁止され、トイレと一階の学習室を利用するときのみ部屋から出ることを許される。寄宿舎では隣の部屋に行く事にすら届け出が必要。
 寄宿舎のロビーに電話があるがそれにダイヤルはなく、シスター達が詰める寮監室にかかってくる電話をそれに繋ぐ方法で通話する。なお電話は生徒に関わりのある親族からのもの以外は切られてしまううえ、一日に一度しか取り次いでもらえない。一応通話のプライバシーは守られるらしい。
 校内においてもクラス別に隔離されている。生徒の生理の間隔までもがそれぞれリストされている。
 朝夕の礼拝儀式と、日曜日にミサが開かれるが、出席義務があるのは礼拝儀式のみ。ミッションスクールだが数年前からお嬢様養成学校になっているためキリスト教に興味を持たない者も多く、また信仰の自由のためにキリスト教を強制されることはない。もとはイギリスにある神学校の姉妹校なのだが、最近は礼園を手本にした女学院が出来たらしい。
 フランスには礼園女学院に縁のある大学がいくつかあり、黒桐鮮花と黄路美沙夜が留学候補の双璧とされていた。なお留学のことは鮮花自身には話されていなかった。
 職員室は朝の職員会議に使われる事務室のようなもので、シスターはあまり寄り付かない。
 1998年11月に一年生と二年生が入居する寮の東館が葉山英雄に放火されてC・D組の宿舎が焼けたが、学院がもみ消したため外部には知られていない。葉山はその責任をとらされて姿を消したことになっている。
 森の中に初等部の木造の旧校舎があり、1999年の冬に取り壊す予定になっていた。
 久遠寺有珠が通っていた。


礼園女子高等学校(組織:劇場版)
 私立礼園女子高等学校。礼園女学院高等部のことか。
 臙条楓はこの普通科の卒業生。


礼園女子大学(組織:劇場版)
 私立礼園女子大学。礼園女学院大学部のことか。
 臙条楓はこの教育学部の卒業生。


礼堂由美(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号23。
 電話番号00-216-4358。
 住所は観布子1-5-3。


レポーター(人名)
 詳細不明。
 劇場版第一章においてニュースを読んでいたレポーター。1995年9月頃はバラエティ番組で芸人と一緒に冬の川に落ちたり、ステージごと爆破されたり、アマゾンに行ったりしながらいつかキャスターの星になるのよ!と頑張っていた。


連尺康算(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号24。
 電話番号00-075-6783。
 住所は新観布子2-45-6。


蓮条院正(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号25。
 電話番号00-799-4681。
 住所は北七郷4-32-6。



  


六反田光(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号27。
 電話番号00-684-5447。
 住所は音和谷本町7-8-14。


魯啓太郎(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号26。
 電話番号00-950-3881。
 住所は観布子坂下3-2-17。


六角宣長(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号28。
 電話番号00-075-0985。
 住所は新観布子2-12-9。


論田厚吉(人名:劇場版)
 黒桐幹也と両儀式の高校時代のクラスメイト。出席番号29。
 電話番号00-367-8740。
 住所は観布子台5-6-3。


ロンドンの魔術協会(用語/地名・組織)
 大英博物館の裏にある時計塔と呼ばれる魔術協会のこと。魔術協会の三大の部門の一角を担い、魔術協会全体の本部である。
 表向きはただの博物館。時計塔とはそのままの意味であるが、工房のほとんどは地下にあり、下に行けば行くほど狂気の度合いを増す。ここに東洋系の者は多くない。魔術協会で最大の基本にして至高の学舎であり、魔術協会の本部。ほかの魔術師たちもここを手本にしている。
 鉱石学科、降霊科(ユリフィス)、霊媒科などが存在する。メレム・ソロモン曰く「ホントにつまらない」。
 蒼崎青子がここに在籍し、蒼崎橙子が在籍するも封印指定を受けて脱退している。



  


歪曲(用語/超能力)
 文字通り物体を曲げる能力。一つの回転方向につき一つのチャンネルが必要。
 歪曲する物体の硬さよりも大きさが問題になり、成人の腕を曲げるには一般的な能力者の場合は七日くらいかかる。


歪曲の魔眼(用語/超能力・魔術)
 浅上藤乃の能力。
 視界に入ったものを歪曲させるもので、右目は右回転、左目は左回転の回転軸を発生する。この視線を両儀式の直死の眼で視ると、緑と赤の螺旋として捉えられる。この能力では物質を破壊することは出来るが、概念を破壊することは出来ない。また藤乃が『これは曲げられない』と認識したものは曲げることが出来ない。魔術的な防壁や結界を曲げることはできないが、それらが乗っている土台は曲げることができる。しかし藤乃にはそういった魔術的な知識がまったくないので、有効活用はできない。
 6歳(文庫版では4歳)のころにこの能力を抑えるために父親によってインドメタシン等の大量投与がなされ、無痛症になった。感覚が戻ると能力が発現する。
 両儀式との戦闘の最後では千里眼をも発現して歪曲との併用で完成間際だったブロードブリッジを破壊した。ただしブロードブリッジの破壊後に失明している。
 藤乃の能力は超能力であるものの、人為的に手が加えられているために魔術と超能力の間にある。


渡辺(人名)
 小川マンションの三階、303号室に住んでいたと記録されているが、架空の人物。




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